I'm Yours※
「わかってる・・・よね、ドンヘ」
「えーなにがー」
どたばた、俺のマンションに駆け込んできたヒョクチェ。
来たまんまのカッコで、俺の目を見ようとしてる。
「あの・・・」
「とりあえずさ」
「う、うん。なに?」
「上着くらい脱いだら?」
「あ、そ・・だよね。うん」
動揺してますって看板を下げてるみたい。
大丈夫だよ。
怒鳴ったりは、しないから。
リクライニングを大きく倒したソファの上で、俺は雑誌を読んでる・・・
ようなフリ。
広げてるだけですべては脳みそを通過してくだけ。
だって考えるのに忙しいもん。
ヒョクチェをどうしたらいいんだろうって。
呼び出そうと思って携帯を見つめてる傍から着信があった。
すこし息切れしたヒョクチェの声。
震えてたかもね、ちょっとだけ。
そうして急いでやってきたくせに、そわそわするばっか。
上着をスタンドにかけるのに、一回落っことしたりしてんの。
「・・・・・・ヒョクチェ」
「は、はい!!」
なにそれ、はい、なんて。
ヒョクチェが無意識に敬語になるのは、なにかを怖がってる証拠。
まだなにもしてないし言ってないんだけど。
そんなに、怖い?
だったらもう、俺以外と話もしなきゃいいのに。
「おいで、こっち」
「・・・・うん」
できるだけ穏やかに笑って、手を差し伸べた。
ヒョクチェは微かに肩で息をして左手を乗せる。
その仕草にはちょっとだけ安堵の匂いがしたけれど。
安心していいのかどうかは、正直俺にもわからない。
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