隠れ家温泉お宿 ※
「ん、んーッ!!」
後ろからぐぐっと押し込まれて、抑えていた声が漏れる。
唇をどれだけ噛み締めても、我慢なんて出来ない。
「ヒョク・・・あ、すっごい・・・」
俺の腰を捕まえたドンヘが、奥を目指しながら呟く。
その動きで半分身を沈めたお湯がザザーっと波を立てた。
お前もちょっとは黙れ!!
いつ誰が入ってくるかわかんないっていうのに、仕掛けたドンヘは気にする様子もない。
今がふたりっきりだからって、こんなとこでこんなことをしていいわけないのに。
夜になって『もういっかいお風呂いこうよ』って言い出したのはドンヘだった。
なんだかんだ結局温泉が気に入ったんじゃん、とか俺は思っちゃったりして。
来た時にあんな風にごねていたから。
やっと人並みに情緒を楽しむ気になったかと思って、安心したのが間違いだった。
誰か来るまででいいからってごまかされて、いつの間にか連れてこられた。
後戻りなんて出来ないところまで。
「んッ・・・う・・・、あ、あッ?!」
抜けちゃいそうなとこまで引いてから奥まで貫く。
ドンヘが繰り返すその動きが、俺に違和感をもたらした。
「どしたの・・ヒョク、ふるえてる」
「ん、あ!! お湯・・・はいって、きちゃ・・うううッ!!」
やだやだこんなの。
情緒なんてどこ吹く風じゃん。
乳白色の泉質のおかげで、どうなってるか見えないのだけが唯一の救い。
「そっからも温泉吸収すれば・・いいじゃん」
「や、だよ!! あっつ・・い」
おかしなことを言わないで。
どんなに変な感じか知らないくせに。
その熱が罪悪感と綯交ぜになって、頭がどうにかなりそう。
手をついた床を、キリキリと爪が掻く。
「ヒョク・・・いいよぉ、きもちい・・」
「ふ、あッ!! あ・・・ん、んぅーッ」
「いつもよりあったかいの・・・お湯のせい?」
「・・・ん、知らな・・・ッ」
ドンヘの柔らかい声は、白く烟る湯気のなかに溶ける。
どこからどこまでが自分なのか、なんだかよくわかんなくなってきた。
湿度の高いその空気のせい。
「う、う、もお・・出していい? 一緒にイこ?」
「ダメ・・ッ、お湯・・汚しちゃう・・・」
「あ、そっか・・、それはマズイよね」
「当たり・・前・・だろ?! あ、ちょ・・と!!」
さすがにその認識だけはあったらしいけど。
ひょいっと腰を床の上に持ち上げられて俺は焦る。
「これなら・・だいじょぶだよね?」
「ドンヘ・・待って・・・ッ、ん・・あ!!」
腰だけを高くあげるような妙な四つん這いの姿勢。
前にされた時あっという間にイっちゃったから、これはイヤだ。
なのに、ふやけた体は俺のゆうことなんて聞いてくれない。
当然のようにドンヘも。
「やっぱ・・すごいねこれ・・・う、あ」
「やーッ!!・・あ、あ、ふ、あッ」
待ってって言ったのは聞こえてるだろうに、ドンヘは一向に緩める気配はない。
動物みたいに叫んじゃいそうになるんだから、こんな状況でこんなカッコでしないでよ。
俺はせめて歯を食いしばれるように、そばにあったタオルを口に押し込んだ。
「あ、あ・・イクよ、ひょく・・・」
「んんーッ、う・・、う・・」
「・・・ッ!!・・あー、あー・・・」
「ん、うう、ううーッ!!」
俺のなかでドンヘが爆発する。
粘液のはずなのにそれは、まるで弾丸みたいに俺を打ち抜いた。
びくびくと勝手に背中がしなってる。
他人事のようにそんなことを思って目を閉じる。
意識は空間を満たした湯気よりも、いっそう白く濁って俺を包んだ。