隠れ家温泉お宿 ※
「あー、気持ちよかったぁー」
ほっかほかになって、俺は大満足で部屋に帰ってきた。
溜まってた疲れもストレスも吹き飛んだ気がして、自然と笑顔になる。
「・・・うん・・・」
なのにドンヘはなんだか浮かない顔。
首にかけたタオルをひたすらいじってる。
「どした? のぼせたの?」
「うん・・・ある意味・・・」
・・・?
お風呂でも途中からこんなんだった。
そんなにのぼせやすい体質だったっけ?
「冷蔵庫に冷たいの・・・うわ!!」
なんかが入ってた気がして冷蔵庫に向かおうとしたら、浴衣の袖をぐんっと引っ張られた。
世界がくるりとひっくり返って、畳の上に押し倒される。
「も・・・げんかい・・・」
「は?・・ちょ・・っと、ドンヘ・・?!」
がばーっと覆いかぶさられて焦る。
まだ少し湿ったままのドンヘの髪が、俺のほっぺのあたりで揺れる。
「がんばったよ俺。もう、していい?」
「が、頑張ったって・・・」
「お風呂でさわっちゃわないように、すっごく気をつけたの」
「そ・・・そんなの、当たり前だろ?!」
大浴場でそんなコトされたら、困るどころじゃない。
いくら隠れ家っぽくて小さい宿を選んだとはいえ、俺らだけじゃないんだから。
おとなしかったのそのせいか・・・コイツ。
「だってユカタ?・・だっけ? なんかコレ、エロいんだもん」
「お前もおなじの着てんじゃん!」
「ちがうの。ヒョクが着るとエロいの」
「んなワケないだろ!!・・・・あ、ちょ・・っと!!」
ドンヘはなんか必死な目をしながら、俺の帯をするする外していく。
・・・・・・ん? ちょっと待てよ。
「なんで脱がせる時だけ器用なんだよおおお」
「脱がせたいからじゃない?」
「作用しすぎ!! 欲望が!!」
さっきお風呂上がった時だって俺が結ってあげたっていうのに。
今はもうなんか難なく、どうされてんのかもわかんないくらいアッサリとほどかれた。
「ねえ、ヒョク・・・お願い」
その顔をすんな。
飼い主を恋しがってくんくんいってる犬みたいな表情で見下ろされる。
「・・・・・・ご飯、部屋に来るんだから。それまでだよ」
「うん!! とりあえずそれまでに一回おわらせるー!!」
とりあえずってなんだ、何回する気だ。
若干の不安に駆られたりもするんだけど。
オアズケから解放されたドンヘの笑顔はずるいくらいキラキラしてて。
いつもと違う衣擦れの感じ。
それが変な開放感を誘ったって・・・
そういうコトにしといてやるよ。