ボーナストラック2 ※
『ん・・・ふ、あんッ』
甘い甘い声が鼓膜を擽る。
ソンミナ?
なにしてるんですか?
瞼に差している光は間違いなく朝の強さなのに。
その甘さは限りなく濃厚な夜の香り。
違和感を感じて意識を持ち上げた。
『ん、んッ、キュヒョナぁ・・・』
「あ、起きた? おはよう」
鼻にかかる喘ぎ声と、爽やかな朝の挨拶。
それが同時に同じ声で聞こえて、俺は5回ほど連続で瞬きをした。
「・・・・・・おはようございます」
俺の隣で頬杖をついているソンミナの前に、ビデオカメラを発見したので。
まだゆるい動きをする思考回路がやっと納得した。
そういうことですか。
「やっと起きたね、キュヒョナったら」
「はい・・・、ッ」
きゅっと目元で笑ったヒョンは、自然な流れみたいに俺にキスをした。
そのままCMになりそうなくらい爽やかだけど、画面からは淫靡な映像と音声が流れ続ける。
「・・・僕、すごい顔赤いね。熱でもあるみたい」
俺が思わずモニターを見つめてしまっていると、その視線を追いかけてきて。
ソンミナはそんな感想を述べて、細いため息をつく。
「どうだった? まだダメだよね」
「・・・ダメって・・なんですか?」
聞き返すとすこし悲しそうな顔をするヒョン。
「レンズから目をそらしちゃう時あったもん。見え方わかってないし」
「そ、そうですか・・・」
「うん。あ、ほら、ここでうつむいちゃうとかさー」
「あ・・は、はい」
どうやら映り方に不満があるらしい。
・・・・・・どれだけプロ意識ですか。
何事にも真面目に取り組む性格ではあるけれど、まさかこんなトコまで。
もしかしてこれが研修生時代の長さの違いだろうか。
これ以上いやらしく映られたら俺が困るんですけど・・・
「キュヒョナ」
「はい、なんですか?」
「また、しようね?」
にーっこりと可愛らしく笑いかけられる。
でも、ほんのすこし瞳のなかに宿るのは、もしかして悔しさだろうか。
「・・・・・・はい」
なんとなく抗えない気がして、俺は大きく頷いた。
暗視機能とかもっといいやつを買いなおすべきかもしれない、とか考えながら。
End...
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