ボーナストラック2 ※
「キュヒョナ・・・」
「はい」
レンズ越しの恋人が、可愛らしく俺を呼ぶ。
頬がうっすらピンク色に上気している。
さっき飲んだ軽いシェリー酒では、彼は酔わないはずだ。
それなら、ソンミナヒョンをこうさせてるのは俺が構えるカメラだろう。
「好き」
「・・・はい」
そう言う時微かに目を細めるのは癖らしい。
知ってるけど、あまりにまっすぐレンズを見据えられて、多少動揺した。
「キス、して」
「はい」
カメラを勘でこちらに構えて、すこし開いた唇を迎えに行く。
相変わらず柔らかい。
すぐに夢中にならないように、触れた舌に軽く歯を立てた。
「ん・・う、・・ふ・・」
「う、う・・・」
なんで甘いんですか。
アイスクリームを食べたのは30分も前なのに、ヒョンの舌はなぜだかいつも甘い。
そのせいですぐに、脳みそがゆるゆるになる。
「んー、ずれてる・・・よ、カメラ」
「あ、は・・い」
無意識に力が抜けていた手元を直された。
そんな余裕あるんですね。
なんだか悔しくなる。
「ソンミナ・・・」
「ふ・・・あッ・・んッ」
耳の奥に名前を注ぎ込む。
ありったけの柔らかさを声帯で作り上げて。
俺の声が好きだと言ってくれるヒョンは、こうされると弱いのを知ってるから。
「ソンミナの全部、撮らせてくれますか?」
「・・・うん、・・いいよ」
前髪が触れ合う距離で問いかける。
ふわっと微笑んでヒョンは答えた。
その表情が綺麗すぎていっそ、淫靡な空気が吹き飛びそうだ。
「じゃあ・・・して見せてください」
「・・・わかった」
こくんと頷いて、ソンミナはカメラの前で膝立ちになった。
きゅっと下唇を噛んだかと思ったら、指先を自分の下半身へとするする滑らせる。
「自分でするの、好きですか?」
「んーん、あんまり。でも、キュヒョナが見てるから、きっといいと思う」
またそういう殺し文句を・・・
俺の胸をざわざわさせる言葉を、この人はどれだけ持ってるんだろう。
「触って」
「あ・・あ・・・ッ」
一枚だけ身につけた部屋着の、その部分がくしゅくしゅと揺れる。
ファンにプレゼントされて以来気に入ったらしい、ワンピースみたいなその形。
悪戯をしやすいので、俺も相当気に入ってるワケだけど。
「なんだか、反応早いですね」
「んぅッ、・・そ・・みたい・・・」
ベビーピンクの布が持ち上がって跳ねる。
ああ、可愛らしい格好なのにそんないけないことになって。
モニターのなかに広がる世界にくらくらしそうです。
「どうなってますか? 見せてください」
「うん・・・」
下着もずらして、露わになったそこ。
期待に震えてるのがよくわかる。
でも、膝立ちのその体勢だと、柔らかな布がすぐに落ちて邪魔をする。
「裾、あげて、咥えて」
「え?・・・あ、うん」
戸惑うように焦点を揺らして。
だけどそれは一瞬だけで、ソンミナはすぐに頷いた。
ゆっくりめくりあげて、はしっこをぱくっと咥えて見せる。
自然と上目遣いになって、やたら扇情的な光景になった。
「・・・ッ」
心臓が派手に跳ねて、思わず息を飲む。
そんな俺に気づいたのか、ヒョンは布を咥えたままで口角を上げた。
そうして始まる手淫。
器用なソンミナは自分を掻き立てるのも上手だ。
「ん・・・ッ、ふ、・・ッ」
レンズ越しに俺を見つめながら、確実に快感を追いかける。
ピントがずれないようにしてるワケじゃなく、俺はただ単に動けなくなった。
なにかそういう、いやらしい芸術みたいだ。
惹き込まれて、時を忘れる。
「・・・・・・あ、イキそう・・・ですか?」
「んーッ・・・ん、んッ」
やがて表れる前兆。
先端から溢れる透明な蜜が止まらなくなって、丸い肩がぴくぴくし始めて。
問いかけるとヒョンは何度も首を縦に振る。
その動きで溜まってた涙がキラキラ舞った。
「いいですよ。イってください」
「~~ッ!!・・ふ、う・・・ぅんッ!!」
咥えたところをぎりぎり噛み締めて全身を震わせたら。
びゅくんと白い粘液が吐き出される。
同時に俺の脳内には、ぞくぞくするほどの満足感が駆け巡る。
自分が許可したことでこうなっている現実に。
しかもそれを記録している。
ああ、身震いして画面がブレないように気をつけなくちゃ。
「口、放していいですよ」
「ふ・・あ・・ッ、あ、はあ・・はあッ!!」
ヒョンは途端に大きく呼吸をして、ペタンと座り込んだ。
可愛らしいピンクのシャツが、唾液と精液に塗れて汚れる。
そんな光景を余すことなくカメラに納めて。
「ソンミナ、まだまだ・・・足りないですよね?」
とろんとして見上げてくる瞳にズームしながら、すこし汗で濡れた髪を撫でた。
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