ボーナストラック ※




「・・・へ、・・・ドンヘ・・・」
「・・・んー・・・」
「やっぱりこっちにいたか。おい、起きろ」
「・・・うー・・・」

半分以上眠りのなかにある鼓膜が揺れる。
マネージャーが呼びかけてる声と、ドンヘの唸り声。

俺は関係ないのかな・・・
だったらいっか、寝てても。
そんな風に開き直って夢うつつ。

「お前あれどこやった、持ってったやつ」
「・・・むー・・・」
「あ、これか。使うらしいから持ってくぞ」
「・・・あー・・・」

かちゃかちゃ音がして、マネージャーヒョンはしばらくしたら出てったみたい。

「・・・ヒョクー・・・」

ドンヘは相変わらずふにゃふにゃしながら俺に巻きついてくる。
苦しいってば。
足で雁字搦めにされて身動きがとれない。

いつものことだけどちょっと呆れたような気分になりながら、もう一度眠りにつこうとして。
でもなんだか、さっきのヒョンの言葉が気にかかった。

あれってなんだろ・・・
ドンヘが持ってったもの・・・?

え・・・?
まさか・・・

「・・・~~~ッ、痛ったぁ・・・」

がばっと起き上がったら再びうずくまる羽目になった。
腰に広がる重たい痛み。
・・・・ドンヘのヤツ、激しくしすぎだよ・・・

「ううー・・・」
押しのけたはずのドンヘが、お腹に絡みつくのをなんとか避けながら。
俺の目は必死にベッドの周りを探し回る。

ない・・・ないじゃん!!

「ドンヘ!! こら、ちょっと!!」
「いーたーいー・・・」

寝癖でもしゃもしゃになってるドンヘの頭をばしばし叩く。
悠長にしてる場合じゃないんだってば!!

「ビデオは?!」
「んー? そのへんに転がってなあいー?」
「ないよ!! 多分マネヒョンが持ってった!!」
「ありゃー」

ありゃー、じゃない!!
なに呑気な声出してんだよ。

「寝てんなよ!! 取り返して来て!!」
「えー、どーせスタジオ行ったら返すんだからいいじゃん」
「そーじゃなくて! メモリーもし見られたらどーする気?!」
「・・・あー、ヒョクのえっちなトコ見られちゃうねぇ」

やっと目を開けたドンヘは、俺を見上げながらニヤリと笑う。
笑ってる場合か!!

「早く!! 行ってこい」
「んー、まだ眠いー」
「俺のゆうこと聞けないの?!」
「わかったよおお、痛いってばー」

ベッドから這い出してドアを開けるドンヘ。
それでもまだ、なんだかのろのろして見える。

「取り返せなかったら1ヶ月えっちしないからな!!」
「ええ?! そんなああああ」
「イヤなら走ればか!!」
「ヒョクの意地悪ううぅぅ」

そこまで言ってやっとドンヘは走っていった。
誰にも見せないって約束なんだから、焦るのは当たり前でしょ?!

「・・・はあ・・・」

ついに心からのため息が唇から零れた。
意味もなく布団をやたら綺麗に直したりして。
どうにかバクバクいってる心臓を宥めようとしてみる。

「ヒョン」
「うわあああ!!」

せっかく頑張ろうとしたのに、突然声をかけられてびっくりしてまた鼓動が跳ねた。
声のした方を見遣ると、歯ブラシを咥えたキュヒョナがひょっこり顔を出してる。
ドア開けっ放しじゃん、ドンヘ。

「無理だと思いますよ」
「な、なにが?」

キュヒョナはそう言って、珍しく爽やかな笑みを浮かべた。
この子がこういう顔すんのって・・・どんな時だったかな。
若干なんだかドキドキしながら問いかけた。

「我慢できないでしょう」
「だ、だからなにがだよ?」
「ヒョクチェヒョンの方が耐えられませんよ、1ヶ月なんて」
「・・・・・・な・・ッ!!・・んなワケないじゃん!!」

歯ブラシを長い指で弄ぶキュヒョナに、そんなことを言われて。
瞬間湯沸かし器みたいに頭に血がのぼる。

「なんだか知らないですけど、取り返せるといいですね」
「べ、別に!!」

我慢できないとかヘンなコトを言うから、つい返したそんな返事。
いや、ダメだよ!!
なにがなんでも取り返してもらわないと。

「いいんですか? 取り返せなくても」
「ううん、ダメ・・・」
「ですよね。そんな長い間セックスできなかったらヒョンが困りますもんね」
「うん・・・じゃない!! 取り返せなかったら困るんだよ!!」
「なにをですか?」
「え?・・・・あ、・・・えっと・・・」

あんな場面を撮ったビデオだなんて、言えない。
どう言ったものかとしどろもどろになる。

「ヒョン、ねえ、なんですか?」
「そんな・・たいしたもんじゃないんだけど、なんていうか・・・」

どうしよう、キュヒョナ相手にシラを切れるかな。
妙な具合に訪れた危機に、頭が回らない。
しかも起き抜けだもの、どうしようもない。

俺がひとりで赤くなったり青くなったりしていたら。
「こら、ヒョクチェで遊ばないの」

キュヒョナの後ろからピョコンと現れたソンミナヒョン。

「・・・随分な言い方ですね。まあ、合ってますけど」
ちょっとツッコミいれたい台詞を吐きながらも、キュヒョナは愛しそうに恋人を見つめた。

「ビデオなら僕が撮られてあげるから。ほら、帰るよ」
「ホントですか?! じゃあ早速あとで落札しますね」
「あんまり高いの買っちゃダメだよ。あ、じゃあねーヒョクチェー」
「・・・・・・あ、うん・・・」

軽やかに手を振るソンミナヒョンにつられて、俺も右手をパタパタする。
キュヒョナはすっかり上機嫌になって、ヒョンの後をついていく。

うーんと・・・
とりあえずソンミナヒョン、なんでビデオのこと知ってんの?!

一層混乱した思考回路に、朝から目が回る。

俺は腰が痛むというのに、気を紛らわせるために部屋を片付けまくる事態に陥った。
ドンヘが帰ってくるまで、落ち着いてなんていられない。




End...
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