ひとりよりふたり ※
「ん・・・ふ、あッ」
「う、う、・・ヒョクぅ・・・」
舌も足も結ばっちゃいそうだ。
扉を閉めるのも忘れそうなイキオイで、ふたりしてベッドに縺れ込んだ。
「ドンヘ・・・あッ、・・・なんで、ここに・・いんの?」
「・・・いたの。ホントは・・上の部屋にずっと」
「なんだそれ・・・ッ、や!・・噛むなぁッ」
「会いたすぎて、なんか・・・もったいなくって・・・」
「もったいないって・・・な、んだよ・・、あ!!・・んッ」
俺の体のそこらじゅうに、キスの雨を降らせるドンヘ。
たまに歯を立てられる度に震えながら、俺は湧き上がる疑問をぶつけた。
「それにさ・・・」
「ん、・・う、なに?」
「会いたいって、ヒョクに言って欲しくって」
「・・・・・・ば・・か・・」
そんなの言ってるじゃんって答えかけて、気づいて。
思い出してみれば、ドンヘが言ってくれる回数に比べて、俺はあんまり言葉にはしてないかもしれない。
さっきだってドンヘがあんな風に仕掛けなければ、素直には言わなかったと思う。
「・・・あ・・・会いたいよ・・いつだって」
ちょっと反省した。
照れくさいからつい早口になっちゃったけど、思ってることを言ってみる。
「ヒョク・・・、大好き」
ドンヘはやっと真正面から顔を合わせてくれて、花が咲くみたいに笑った。
あーあ、また言ってもらっちゃった。
追いつかないよ、もう・・・
「・・・・・・うん。いいから・・・早く、・・・してよ」
「する!! 電話も可愛かったけど、ちょっと後悔したよ・・・」
「そ・・だよ・・・ばか・・」
会いたすぎてもったいないって気持ちも・・・まあ、わかんなくはないけどさ。
帰ってるなら一刻も早く顔を見たかったのに。
俺が恥ずかしい思いをしただけじゃんか。
「ん、・・ばかだった・・・」
「ッふ、あ!!・・んーッ」
「あー、今日俺・・・余裕ないかも・・・」
余裕なんてどこにでも捨ててきたらいいよ。
返事の代わりに、左胸に噛み付いたドンヘの髪をくしゃくしゃに掻き回す。
「んー、んッ!!・・あ、あ、あ・・・」
「もし、痛くしたらゴメン・・・でも、止まれないんだ」
「い、い・・・よ、止まん・・なく・・・って」
「ヒョク・・・ヒョク・・・」
ドンヘはいつになく焦ったように俺の体に取り組んでる。
確かに段階もなにもないけど、そんなの構わない。
痛いことが嫌いな俺が、たとえばこれで傷がついてもいいなんて。
そんなことを思うって、もうこれは相当末期だよね。
死んじゃいそうなほど心臓が早く動いて、怖くなってドンヘの肩を引っ掻いた。
*
「はあ・・・あ・・ッ・・・」
「あー、あー・・・ふ・・あ・・・ッ」
入ったまんま3回も注ぎ込まれて、俺はもうちょっとで気を失いそうだ。
でも、終わったあとのドンヘの空気が色っぽくて好きで。
意地でも意識を手繰り寄せて瞼をひらく。
「あッ・・、ヒョク・・・苦しい?」
「ん、んッ、・・・へー・・き」
濡れた睫毛にキスしてくれる。
間違いなく苦しいけど、それだけで昇華する。
明日・・・もう今日か・・・、の仕事が、ちょっと心配なのには目を瞑ることにして。
「ゴメンね、無茶しちゃって・・・」
「いい・・ってば・・もう・・・」
逸らせない距離で、ドンヘの真っ黒な瞳に大写しにされる。
そんなに一生懸命見つめないでよ。
恥ずかしくなって、まだちょっと汗ばんでるほっぺをぺしぺし叩いた。
「・・・・・・ヒョク・・・」
「な・・に・・・?」
「俺、シャワー浴びなきゃ」
「・・・えー」
ドンヘはチラっと時計を見遣ると、ちょっと悲しそうに言う。
まだ微睡んでいたいのに。
ふたりでごろごろしてるのが好きなドンヘが珍しい。
「実はね、仕事抜け出してきたんだ。戻んないといけないの」
「・・・へ?」
「4時間後にはまた、撮影始まるから。支度して出ないと」
「・・・4時間後?!」
「ヒョクぅぅぅ、痛いーッ」
撫でてたドンヘの髪を、びっくりして引っ張ってしまった。
だって撮影現場まで、片道3時間近くかかるんじゃなかった?
「なにやってんのお前?!」
「言ったじゃん。限界だったから・・・」
「限界はわかるけど・・・寝れないじゃんか」
「寝るよりヒョクとえっちする方が、俺には栄養になるんだもん」
「~~~~ッ」
小っ恥ずかしいヤツ。
とてもじゃないけど、やっぱり釣り合いの取れる愛情表現はできないな。
「栄養いっぱいもらったから、絶好調で仕事出来ると思うよ」
「・・・そう・・なんだ・・・」
幸せそうに微笑まれても困る。
俺はなんだか脱力してしまった。
「じゃ、ちゃちゃっと浴びてくんね!! ヒョクは寝てていいよ」
「・・・ん・・ぅッ」
ちゅーっと一瞬だけ吸い付くようなキスをして、ドンヘはバタバタ部屋を出ていく。
ホントにすっごい元気だし・・・
「・・・なんだよ、栄養って・・・」
俺の独り言は、思わずため息混じり。
実際はカロリー消費しちゃってんだから、そんなわけないじゃん。
天邪鬼な俺の思考回路はそんなコトを考えるけど、ホントはちょっと胸があったかい。
ちょっとの空き時間に飛んで来てくれたって事実は、どうしたってやっぱり嬉しいから。
「もう・・・しょうがないなぁ」
うー、腰が重たい。
ダルさの塊みたいな体をなんとか起こして、俺はキッチンに向かうことにした。
ホントの栄養も取んないといけないでしょ。
向こうで倒れられでもして、撮影が長引いたら今より寂しいことになる。
ラーメンしか作れないけど、それで勘弁してよ?
微かに水の音が聞こえるバスルームに向かって、目配せをした。
End....
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