ひとりよりふたり ※
♪~~~
「・・・わ!!」
ぼーっと見ていた携帯が、鳴り始めてびっくりする。
鳴らないかなあって思ってたら、ホントに鳴ったもんだから。
しかも相手はドンヘ。
タイムリーすぎていっそ怖いくらい。
「もしもし」
ちょっとだけドキドキしながら通話ボタンを押した。
『ヒョク・・・』
ため息みたいなドンヘの声が聞こえる。
2週間も聞けなかった。
ドンヘは地方での撮影に入ってから全然帰ってこれなくなったから。
「うん。久しぶり」
声なんて聞いたら会いたくて仕方なくなる。
だから我慢してたけど、限界だ。
それがおんなじタイミングだったみたいで、なんか嬉しい。
『今、おうち? なにしてた?』
「うん。シャワー浴びて、ゲームでもしようかなって思ってたトコ」
『ああ、あれ? まだクリアしてなかったんだ』
「うるさいなー。ラストステージ俺が苦手な敵なんだよー」
何気ない会話でも、ドンヘの声ならなんでもいい。
多分電話の時の方が俺はニコニコして喋ってると思う。
しばらくそうして話していると、だんだんドンヘは沈黙を挟むようになってきた。
なんだろう、眠いのかな。
「ドンヘ? だいじょぶ?」
『・・・・・・ヒョク、ねえ、今なに着てんの?』
心配になって様子を伺ってみると、ドンヘは急にそんなコトを聞く。
「え? ふつーに部屋着・・・シャツと短パンだよ」
『シャツの丈長い? どれくらい?』
「太ももくらいだけど・・・なに? テレビ電話する?」
『うーん。想像したいから、このままでいい』
またよくわからないことを言い出した。
想像なんてしてどーすんの。
余計会いたくなっちゃうだけじゃん。
『俺はねえ、よく着てる黒いTシャツとジャージ』
「・・・そっか」
容易に浮かぶドンヘの姿。
いつも私服では飾り気のないシンプルな服を着てる。
顔立ち的にその方が映えるし、本人も好きみたいだ。
具体的に思い描いたら・・・ほら、切なくなってきたじゃん。
『ヒョク・・・俺のこと、想像してくれる? 会いたい?』
「・・・・・・うん、会いたい」
迷ったけど素直に答えた。
だって次いつまともに会えるか、予定も見えないんだ。
『だったらさ、・・・しよ? 電話で』
「?・・・何を?」
『セックス』
「~~~ッなッ?! 何言ってんの?!」
携帯をおっことしそうになった。
ヘンなこと言い出すのは得意なドンヘだけど、やっぱりいつも俺の予想の上をいく。
『だって、もうヒョクに触りたくて限界なんだよ』
「だ、だからって・・・そんな」
『ひとりでしても、とてもじゃないけどモノ足りない。ヒョクのせいなんだから』
「なんで俺のせいなんだよ!!」
意味のわからない文句を言い出した。
『AVとかさー探しても、ヒョクよりやらしいものが見つからないもん』
「そんなん知るか!!」
当たり前みたいな口調で言い放つドンヘ。
ホントにもう・・・脳みそとろけちゃってるんじゃないの。
『せーよくが爆発しちゃって、浮気するよりいいでしょ?』
「・・・・・・う・・・」
そーゆーコトバを使うなよ。
苦しくて、どうしようもなくなる。
『ね、ヒョク。ふたりでひとりえっち、するだけでいいから』
そんな風に言われると、別にそれくらいいっか・・・なんて思ったりして。
言い方変えただけかもしんないけど・・・
「わ、わかったよ」
聞こえるか聞こえないかの、ちいさな声でつぶやく。
電話の向こうで、ドンヘが微笑む気配がした。
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