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教えて。 ※




かち・・・
あ、また歯が当たった。
減点。

「う・・・う・・・」
いいのかな、苦しいのかな・・・リョウクはよくわかんない呼吸をしてる。
アクセントをつけるために軽く舌を啜ってあげると、小さな肩が少し跳ねた。
あ、やっぱりこういうの好きなんだ。
音立てられたり、目で認識させられると弱いタイプだねきっと。

「ふ・・・ッ」
かすかにしか上げない声が可愛くて、ついやりすぎそうになる。
耳の後ろをくすぐったらこないだ力入んなくなっちゃったから、がまんがまん。

「・・あ、ひょ・・ん・・・」
もっとほしいって、目が言ってる。
そうなるように、できるだけ余韻を残して離れたのは僕だけど。

「ダーメ。仕事中でしょ?」
「えー」
カメラの前でもよくやってる、ぷくーっとほっぺをふくらますその顔。
ふふ、可愛いけど、そういうの僕も得意だから効かないよ?
イェソンヒョンあたりにしてあげなよ。

「ほら、もう行かないと。ね?」
「んー、じゃあ・・・点数は?」
「40点」
「そんな低いの?!」
「溺れすぎ。まだまだだよ」
「・・・厳しいなぁ」

しゅんとなったから特別。
手をつないだまま外に出たら、リョウクはちょっと満足そうにはにかんだ。





                   *





「ソンミナヒョン、僕の先生になって」
ふたりでラジオを引き継ぐことが決まって何日か、リョウクは急にそんなことを言い出した。
11階ダイニングで皆で朝食を食べて、他メンバーがそれぞれ部屋に帰ったと思ったら。
正面の席からまっすぐ僕を見つめている。

「いいけど、僕だってそんな本格的にDJやってたわけじゃないよ?」
長期間務めてきたトゥギヒョンとヒョクチェの後任だから、荷が重いのはわかる。
でも、力になってあげれるほど僕だって経験がある訳じゃないよ。

「あ、そうじゃなくて・・・」
でもリョウクは僕の断り文句をさらっと受け流して、可愛らしく微笑む。

「キスとかセックスとかを、教えてほしいの」
そして、小首を傾げるその仕草とおよそ真反対な言葉を口にした。





リョウクは、まるで猫みたい。
うちのメンバーだと猫といえばヒチョルヒョンをあげるひとが多いと思う。
でも、僕は実はリョウクの方がその例えが合ってると思ってる。

気まぐれで思わせぶり、気に入った人には全力で甘えていくけど、飽き性。
小動物みたいな目でじっと見つめたら、大概のことは許されてしまうのを知っている。
振り回されるのはメンバーだったり、TVの共演者だったり、ミュージカルの相棒役だったり。
近くで見ているからその移り変わりもよくわかる。

でも、今は誰なんだろう。
そんなコトを言うってことは、そういう経験が豊富そうな人なのかな。
今リョウクの周りにいる人のなかで、あんまり思い当たらないけど。

いわゆる『小悪魔』的な性格だから、お気に入りの相手に自分を好きにさせる、その過程が一番楽しいらしい。
ちゃんと付き合って、深い関係になっている時間は極端に少ないんだ。
まさか経験がないわけではないと思うけど、体の関係にはあまり興味がないのかと思ってた。





突飛なお願いにビックリしながらも、僕はなぜか頷いていた。
え、いいの? そんなこと・・・
・・・今僕は恋人がいるワケじゃないし、問題は・・・ないけど。

「ありがと、ヒョン」
ふわっと微笑む顔は子供みたいな純粋さで、今交わした会話とのアンバランスに軽く混乱する。
「う、うん」
一抹の不安の奥に、なぜか期待が混ざった胸騒ぎがする。
なんか・・・オッケーしてホントにだいじょぶなのかな・・・
あんまり感じたコトない感情に、もしかしたら僕の目は泳いでいたかもしれない。


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