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「はーい、カット!! 一旦休憩挟みまーす!!」

明るいバラエティー番組のカラフルなセット。
スタジオの端っこでドンヘはずっと、座りもしないで俺を見つめていた。
スタッフたちがどう対応していいもんか困ってる。

そりゃそうでしょ。
出演してる俺と同じグループのメンバーなのに、付き人みたいなコトをしてるんだもん。
宿舎を出る時燕尾服はやめて、上着をジャケットにしてくれたからまだいいけど。
さすがにあれは目立ちすぎる。

「お疲れ様でした。どうぞ」
「う、うん・・・ありがと」
今も休憩はいって俺が席から降りたら、すかさず飲み物を持ってきた。
スタジオじゅうの視線を集めてるのが気になって、冷たいポカリは嬉しいのにうまく喉に入らない。

「ああ、乱れてます」
胸ポケットから櫛を取り出して、髪を整えてくれる。

ホンキで一日仕えてくれるつもりみたいだ。
自分の仕事はいいのかって聞いたら、この為に先週は頑張ったらしい。
俺自身が忘れてしまってた誕生日を、そんなに特別に思ってくれるのは嬉しい。
嬉しい・・・けど。

「出来ました。可愛いです」
元々すごく育ちが良かったような錯覚まで起こさせるその空気感。
こんなコトに無駄に演技力を使わないで欲しい。
なんだか心臓が騒いじゃって困るじゃん・・・

「あ・・りがとう・・・」
俺は朝からこうやって戸惑いながらお礼を言ってばかり。
だって、そうとしかできない。

そんな俺をまっすぐ見つめて、ドンヘは口角をすこしだけ上げて笑った。
犬を連想させるようないつもの笑みじゃなく。
上品すぎて困る・・・なんて、さすがに失礼かもしれないけど。
困るもんは困るんだから仕方ない。

髪を撫でられながら、唇を噛んでうつむいた。






                       *






宿舎に帰っても、ドンヘは俺の周りで世話を焼いてる。
またしても燕尾服を着込んで。

「ねえ・・・」
「はい」

なんか調子が狂うのは、この敬語の所為だけじゃない。
一緒にいたらトイレとか廊下の隅とか、とにかく隙を狙ってキスしてくるくせに。
今日はまだ一回もしてないんだ。

ドンヘなのにこんな様子なのが、違和感で仕方なくて。
せめて唇に触れたら、すこしでも安心できる気がする。

「キス・・・してよ」

俺がそう呟いた瞬間、一瞬だけ見開いた目がいつものドンヘっぽかった。
そのままにへーっとしてしまいそうになるのを、引き締めるように強く瞬きをして。

「かしこまりました」
ドンヘは空気をまた作り直して頭を下げた。
垣間見えた素のドンヘにするつもりで、与えられるキスを受ける。

「・・・ん・・」
あ、やっぱり。
キスはいつものドンヘと同じだ。
なんだか愛しくなって夢中で舌を絡める。
普段は自分からはあんまりできないのに。

「・・ふ、あッ・・・ドンヘ・・」
「う・・・う・・」

軽く噛み付いてみたりしながらそうして呼ぶと、彼の肩が微かに震えた。
いつもと逆みたい。
でも何故だか、楽しくなってきちゃった。
一生懸命被ってるそのすましたような雰囲気。
壊してあげる。

「ねえ、ドンヘ」
「は・・い・・・」

すこし熱っぽくなった目。
ヘンなの、ゾクゾクする。

「しよ? 俺のこと気持ちよくしてよ」


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