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「ご主人様、もう時間ですよ。起きてください」
「・・・・・・んー・・」
朝の光が瞼に差すなか、聞きなれた声の聞きなれない言葉遣い。
なに言ってんの、ドンヘ・・・
また変な遊びでも思いついたのかと思って、朝から疲れそう。

「遅刻しますよ。さあ、早く」
なんなんだよ、その敬語。
違和感ありまくりなんだけど、言ってるコトは正しい。
今日は昼からテレビの収録が入ってる。
支度して出るにはもうきっと起きなきゃいけない。

「・・・うー、わかったよぉ・・・」
重たい瞼をなんとか持ち上げる。
爽やかな空気を背負って、にっこりと笑うドンヘと目が合う。

「おはようございます、ご主人様」
「・・・え・・?」
ドンヘが俺を起こしに来てくれるのは珍しいことじゃないんだけど・・・
なにその格好。

キッチリ糊の効いた真っ白なカッターシャツにクロスタイ。
漆黒の燕尾服に、仕立ての良さそうな白い手袋。

・・・・・・カッコいい・・・
じゃなくて!!

「なにやってんのか、聞いていい?」
「執事のドンヘでございます。今日は一日しっかりとお仕えさせていただきます」
「なんで急にそんなコト・・・」
「今日は誕生日でしょう?」
「あ・・・」

言われて気がついた。
だって5日前がふたりともオフだったから、もうドンヘには祝ってもらってるし。
欲しかった限定モノのスニーカーをもらって、その晩もまあ・・・その・・・色々して。
しっかりやってもらったもんだから、当日のコトなんてすっかり忘れてた。

理由はまあなんとなく納得したけどさ、なんでまた執事なんて。
ドラマの衣装でウェイターとかは見たことあるし、職業柄いろんな格好はするワケだけど・・・
こんなにカッチリしたものを着て、上品そうにしているドンヘは初めて見た。
意外なほどよく似合うから、・・・タチが悪い。

「さあ、私が身支度をしてさしあげますね」
「・・・うわぁ!!」
ひょいっとベッドから抱き上げられて焦る。
起き抜けでまだうまく力が入らない。
そのまま洗面所まで運ばれた俺は、リビングに誰もいなかったことを心から安堵した。


 
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