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milk candy




side:EunHyuk


黄色と、ピンクと、薄い紫。
それを包むようにあしらわれた瑞々しい緑。
キュヒョナに手渡された花束を抱えて、俺はまだちょっとぼうっとしている。

「最近はホワイトデーにも告白していいらしいです」
「そう・・・なんだ」
「宿舎じゃカッコつかないんで、一応セッティングしました」
「あ、ありがとう・・・」

跪いたまま俺を見上げるキュヒョナの目。
なんなのこの子。
普段はナマイキばっか言って可愛くない弟なくせに。
たまに出してくる育ちの良さそうな王子様オーラ。

・・・・・・困るんだけど。
ドキドキと騒ぐ鼓動がうるさい。

「返事は、聞かせてもらえないんでしょうか?」
「へ、返事?」

長くて細い指先が、俺の膝に置かれる。
まるで、普通にただ恋してる人みたいだよ。
今までこんな風にされたことがないから、どうしていいかわかんない。

「好きなんです。ヒョンは俺のことどう思っていますか?」
「う・・・えっと・・・」

今更すぎて、改めて口には出しづらい。
毎晩のように、なにをしてるのか忘れたの?
体を繋げてる時に譫言みたいしか言ってないから、面と向かって言うなんて逆に恥ずかしい。

「・・・・・・す・・」
「す?」
「・・・・・・・・・き・・」
「好き?」
詰まりまくる喉でなんとか2文字だけ呟いて。
あとはぶんぶんと頷いた。






side:KyuHyun


鎖骨のあたりまで真っ赤になってる。
ベッドの上でスイッチ入ったらすごい大胆なくせに、いつまでも無垢で。
一体どっちなんですか?

「ヒョンは惚れ直させるのがじょうずですね」
ため息まじりに呟いて、ヒョクチェが抱えたままの花たちを掬い上げた。
抱きしめるために。

「そんなこと、してない」
優しく立ち上がらせると、不服そうな表情で俺の胸に納まる。
その顔が照れ隠しなのは知ってますけど。

「膨れないでください。女の子扱いした訳じゃないんです」
「・・・わかってる・・・」
「だったら笑ってくださいよ。ね?」
「・・・ん、・・ちょっと、待ってよ」

照れてまだ目も合わせてくれない。
女の子より可愛いかもしれないですね、反応が。

ああ、早くも決心が揺らいでしまいそうだ。
優しく優しく、宝物みたいに扱ってあげようと思ってたのに。
可愛いと思うといじめたくなってしまうのは、俺にとってはもはや癖に近いんだから。

こっそり自分に言い訳しながら、ポケットのなかのちいさな包みを左手に忍ばせた。






side:EunHyuk


「仕返し・・・されるかと思ってた・・・」
なんか喋んなくちゃと焦ったら、胸のうちをそのまま出してしまった。
だって、なんからしくないことするんだもん。

「仕返しですか。期待しました?」
「してないよ!!」
すぐさま否定しても、キュヒョナが含み笑いしたのがわかる。
俺の髪が息で揺れるから。

「そんなヒョンにはいいものあげましょう」
「してないって・・ば・・・!! ん、うッ」
後ろ髪を掴まれたと思ったら、上向かされていきなりキスされた。
一瞬だけ見えたキュヒョナの瞳が、普段通りの光を湛えていた気がする。

「・・んー?、ぐーッ」
かぶせるように重ねられた唇の隙間から、甘いなにかが転がりこんできた。
な、なに?!
慌てて押し返そうとしても、コロコロと口内で遊ぶだけ。
飴かなんか・・・かな。

ミルクっぽいその味は普通においしいけど、なんだかイヤな予感がする。

ぽすぽす、何度も胸を叩いても一向に離してもらえない。
まさか、ぜんぶなくなるまでするつもり?
舌を噛まれると、緩やかに力が抜けていく。

「・・・身に覚え、ありますか? この感覚」
「・・・ふぁ・・ッ・・あ・・、覚え・・?」
その塊がほとんどかたちをなくす頃、やっと解放された。
小刻みに息を吸う俺に、そんな問いかけが投げられる。

「ヒョン・・・。体に聞いて?」
「え?・・あ・・・、あ・・・・・ッ?!」

意味を噛み砕く前に、言われた通り体が答えた。
ドクドクいいだす心臓が、耳の傍まで来ちゃったようなその錯覚。
確かに、あるよ・・・身に覚えが。

「キャンディー版も、あるらしいですよ。知ってました?」
そんなの知るわけない!!
そう叫ぼうと思ったのに、沸騰しはじめる血が全身を巡り出して。

こくん。
俺はただ、ミルク味の唾液を飲み込んだ。



End....
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