milk candy





side:KyuHyun


「さあ、出かけますよ」
「え?」
鞄を用意してヒョクチェの部屋を訪ねたら、部屋着のままの彼に出会った。
手に持ったゲームから音楽が流れ続けてる。

「ストップボタン押しました?」
「え、あ・・・あー!!」
ボカーンと派手な音がした。

「あー、死んじゃいました?」
「・・・死んだ!! ラストコンティニューだったのにー!!」
「責任取りますよ」
「へ?」
ゲーム機を取り上げて笑って見せた。

「着替えてください。できたら、ジャケット羽織って」
「ジャケット・・・?」
「俺が身支度してあげましょうか?」
「じ、自分でできる!!」
髪を梳いたら、ぷるぷるネコみたいに頭を振った。

「じゃあ、お願いします」
ベッドに腰掛けてヒョクチェを見つめる。
「・・・うん」
じっと据えられた俺の視線を気にしながら、ヒョクチェはちょこまか動いて身支度をした。





side:EunHyuk


変装用の眼鏡越しに、過ぎていく景色を眺める。
知らない街がどんどん後ろに流れていく。
出不精のキュヒョナがタクシー呼んで外出なんて、一体どうしたってゆうの。

「どこ行くの?」
「心配はしないでください」

キュヒョナはそんな風に笑うばかりで、教えてくれない。
なんだよもう。
14日は空けといてくださいって言ったのに、当日になっても俺はなんにも知らない。

まさか、なんか仕返しされたりするのかな・・・
一抹の不安が頭をよぎる。

バレンタインの夜に俺が仕掛けたコト。
結果的には俺が返り討ちに遭っただけだったけど・・・。
俺をからかうための材料として、大事に記憶してるんじゃないかな。
だってキュヒョナだもん。

「ヒョン。降りますよ」
「わ!!・・う、うん」
突然腕を掴まれてびっくりする。
若干引きずられるようにタクシーを降りた。

「・・・・・・え、ホテル・・?」
「はい。郊外にしては洒落てますよ」
「なんで・・・」
「こっちですよ、早く」

さりげなく肩を抱かれて、俺はこじんまりとして趣味のいいエントランスを抜けた。





side:KyuHyun


「わー、お腹いっぱい!! おいしかったー」
「足りました?」
「うん、フレンチって少なそうに見えるけど、意外と満たされるねぇ」
「そうですね」

部屋でとれるようになっている食事にヒョクチェは満足そうだ。
本当に幸せそうに食べる人だなあとよく思う。
子供みたいな笑顔に思わず顔が緩みそうになって、シャンパンを舐めて誤魔化した。

・・・コンコン。
「失礼します」

ちょうど食後の飲み物が欲しいと思ったタイミングでドアがノックされる。
優雅な手つきでコーヒーを淹れてくれたウェイターに、こっそり目配せをした。
彼はちゃんとヒョクチェが見てない時に微かに頷く。
見てたとしても鈍いヒョクチェは気づかないでしょうけど。

「あのケーキに添えられてたのはなに? 初めて食べたんだけど」
「なんでしょう。珍しいフルーツでしたね」
「世の中には知らないものがいっぱいあるんだなぁ」
「ヒョンは海外行っても韓食ばかりだから特にですよ」
「あ、そっか・・・」

・・・コンコン。
食後のなにげない会話を交わしていると、再びドアが叩かれた。
「ちょっと、失礼」
一言断って俺は席を立つ。
「うん・・・」
ヒョクチェが不思議そうに俺を見守っているのがわかる。

あのウェイターから受け取ったものを背中に隠して、ヒョクチェのところに戻る。

「ヒョクチェヒョン」
「・・・な、なに?」
椅子に腰掛けたヒョクチェの前で、俺は跪いた。

「好きです」
「え・・・」
隠していた小さな花束を、捧げるように差し出す。
ヒョクチェは目を真ん丸くして俺とそれとを交互に見た。

「・・・受け取ってくれないんですか?」
「あ、えと・・・あ、ありがと・・・」

固まってばかりいるから急かしてみたら、ぎこちない仕草で花束を抱えた。
彼のイメージでカラフルに仕上げてもらったから、よく似合ってる。
いつもより瞬きの多くなったヒョクチェに、俺はにっこり笑いかけた。


 
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