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ねこのきもち ※





盗み見たドンヘの横顔に、ステンドグラスからの光が差している。
・・・綺麗。
あ、ちがうちがう!!
お願い事に集中しなきゃ。

跪く俺たちを見下ろしている十字架に向かって、両手を組む。

『俺たちを元の姿に戻してください』
胸のなかで懸命に唱える。

だってそろそろ仕事に支障が出る。
ラジオやバラエティが多い俺はともかく、俳優業のドンヘは困るでしょ。

次の流星群までなんてとても待てないから、せめてもの神頼み。
ついて来たがるシウォンを誤魔化しながら、なんとか教会までやってきた。

「・・・神様お願いします」
俺の隣でドンヘは、口に出してもにょもにょ願いを唱えている。

「俺のは全体的に戻して欲しいんですけど、ヒョクチェのはちょっと残してくれると嬉しいです」
おい・・・、お前なに言ってんの・・・

「俺の前でだけ出るとか、なんかそういう方向でお願いします」
どんだけ都合いい願いだよ・・・

「あのたまに耳が垂れるのとかたまんないんでどーか・・・アレ? ヒョクー?!」
付き合ってらんないよ。
ドンヘがまだ目を閉じてる隙に俺はもう踵をかえした。

「ヒョクー!! 待って俺まだお願いしてるー!!」
「叫ぶな! 早く終わらせろよもー」
こんなんじゃ神様にも呆れられちゃうじゃん。
キュヒョナがなんか計画してたら怖いし、俺的には一刻も早く戻りたいんだからね?

意味のわからない真剣さで祈り続けるドンヘに、俺は大きくため息をついた。







                     *







「おかえりなさい」
「ただいま・・・って・・・お前なにやってんの?」
「ビデオを撮影しています」
「いや、それは見たらわかるけど・・・」

教会から宿舎に帰ると、玄関先からキュヒョナに出会った。
だけど彼は画面越しに俺たちを見ている。
その手に構えられてるのは家庭用のビデオカメラ。

「お急ぎ便で買いました。間に合ってよかったです」
「そっか・・・、聞きたいのは入手経路じゃないんだけど・・・」
「ヒョクー、今日ご飯なに食べるー?」

こっちからは目が合わないキュヒョナ。
俺の背中にくっついてマイペースなドンヘ。
どっちとも話が噛み合ってない気がする。

「ヒョンのお耳が可愛らしかったので、是非データに残そうと思います」
「はあ?!」
「いーねそれ!!」

俺の前後で唐突に意見が合う。
なに言ってんのこいつら。

「どんなシーンがいいですかねぇ」
「そうだなー、なんもしてなくても可愛いけどー」
「おい・・・ちょっと・・・」
「ミルクを飲む姿とか、どうですか?」
「丸くなって眠るトコとかもよくない?」
「・・・あの・・・、聞いてる?」

がしっと両側から捕まえられて、どんどん連れてかれる。
しかも勝手に俺の部屋に上がり込むし。
その上話も聞いてもらえない。

「俺を無視すんなー!!」
「あ、ヒョン。怒るならちゃんとシッポも映させてください」
「そうそう、怒ってるトコもめちゃくちゃかわいーから!!」

ダメだこのふたり・・・
いかに可愛く撮るか、みたいなコトしか見えなくなってる。

ああ、ペットってこーゆーキモチなのかもなー。
これからはチョコの意思もちゃんと思いやろ、俺。

愛犬を思い出して思わず反省する俺をよそに、ふたりはいそいそと準備を始める。
リボンとかボールとか、ちゃんとサイズがあってそうな鈴つきの首輪とか。
キュヒョナ・・・そんなのどこで買ってくんだよ・・・

神様どうか、ホントに早く戻してください。
仕事のためというより俺の名誉のために。

胸の前で手を組んでお祈りをしたら、すかさずキュヒョナのカメラが迫ってきた。

べつにポーズ取ったワケじゃないんだからな、バカ!!




End...
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