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ねこのきもち ※







因果応報。
日本語にはそういう言葉があるらしいじゃん。
もうこうなったら仕返ししてやるー!!って意気込んだのにさ。

「きゃはははは」
ドンヘは体を揺らして騒ぐ。

「んむー」
「くすぐったいよおおヒョクううう」
ドンヘの頭からピョコンと出ている、髪とお揃い色の耳。
噛み付いてみたら、ドンヘは色気もなくきゃはきゃはと笑い転げた。

ものすごい楽しそうだけど、別に俺はドンヘを笑わせたいんじゃない。
昨日俺は生えてしまったネコの耳をいじられて、なんだかヘンな反応をしてしまったから。
悔しいから一日遅れでイヌの耳が生えたドンヘに、お返しをしてやろうと思ったワケ。

ベッドの上でこんがらがる俺たちを、傾きはじめた太陽が照らしてる。

「なんでへーきなのお前」
「へーきじゃないよ、ちょーくすぐったいいい」
口を押さえても我慢しきれない様子でくすくすいってる。
舐めてみても歯をたててみても、反応はだいたいおんなじ。
仕方なく俺は口を離してドンヘを睨んだ。

「なんかちがう。ずるい」
こんな風にされたら俺は笑ってなんていれないのに。
おんなじような耳とシッポになったくせに、ドンヘはヘンな声とか全然あげない。

「なあにヒョク? 俺のコト喘がせたいの?」
眉尻を下げてドンヘは嬉しそうに俺を見る。
柔らかな毛に覆われたその耳が、ピンと天を向いて立った。

「ち、ちげーよ! バカ!!」
・・・どうやら余計なコトをしたみたい。
にーっこり口角を上げたドンヘが、あっという間に目前に迫る。

「ちがうの? きもちよくなろうよ・・・、ね?」
捕まってキスされて、逃げても舌を絡められて。
もうそれが癖になっちゃったみたいに、無意識に絡め返してしまう。

「ッふ・・あ・・んッ、んぅー」
たまにちくちくと尖った歯が舌に当たる。
昨日まではなかったから、耳と一緒にそうなったのかな。
それがなんだかたまらなくて、ぴくぴく肩が跳ね上がる。

「んー、ひょく・・」
「・・ぁ、・・や・・ッ」
キスのかたちを残したまま、ドンヘは俺のシッポをするりと撫でた。
手のひらがそうしたかと思うと、そのあと長い毛足が絡みつく。

「あ、・・・イイね。コレ・・」
「なに?・・・あ、んッ」
「シッポどーし。ふわふわだけど・・きもちい・・・」
「や、だ・・・こんな・・のッ」

そんな変わったコトしないでよ。
しちゃいけないコトしてる感じ。
そういう風に思うと、俺の体は勝手に騒ぐ。

「せっかくこうなったんだもん・・・、堪能しよーよ」
「・・・せっかく・・って・・・、ッあ!!」
結ばっちゃいそうなシッポの動き。
気を捕らわれていたら、ドンヘの手が足の付け根に滑ってきた。

なんだかもう、色々増えちゃって困るってば。
昨日もそう言ったじゃん。

「にゃんこちゃん、どお? きもちい?」
「ひゃんッ・・あ、あ!!」
ホントの耳の方を舌と息が撫でていく。
喜んで跳ねる体の中心のそれ。
シッポの先とおなじようにくりくりとされる。

「鳴いて」
「・・・え・・?」
「にゃあって、鳴いてよ」
「・・やだよッ・・なんで・・・」
「せっかくだから」
ドンヘは俺を覗き込んで笑う。

「鳴いてくれたら抱いてあげる。でなきゃずっとこうやって遊ぶよ」
「・・脅す・・気?」
できるかぎり強く、睨んだつもり。
力が入んなくなってきてるから、うまくできたかはわかんない。

「ううん。どっちにしたって俺は楽しいもん。ヒョクが選べばいいんだよ?」
選ぶったって・・・。
ホントにそういうつもりなのか、実は意地悪してるのか。
こういう時のドンヘはどっちなのか判断できない。

というより、俺がいつも余裕ない時に聞くんだもん。
・・・やっぱり意地悪してんでしょ。

「どうする? ヒョク・・・」
「あ、・・あッ、んーッ」

だってすごい甘い声で囁くし。
俺がドンヘの声に弱いの、知ってるよね?

胸の底で文句を言いながら、震える体をなんとか治めようとするけれど。
もう充分に手遅れ。
俺のものをいじってるドンヘの手を、濡らしてしまったのがわかる。

「ど、んへ・・・」
「んー?」
「・・・・・・ぁ・・・」
「聞こえないよー」
唇が震えてうまく動かない。

「・・・・・・・にゃ・・ぁ・・・」
せっかくだから。
その意見に同意しただけなんだからな!!

きっと真っ赤になってる俺の顔を、ドンヘはたっぷり10秒くらい見て固まって。

「うわああああん、可愛いいいいいい!!」
「ひゃああ!!・・ちょ、・・・待ってぇ!!」
絡み合ったままのシッポをぶんぶん振るから、俺は目を白黒させる羽目になった。

「ああ!! ゴメンひょくううう」
「うるさい!! もう・・・・・・、好きにしろ!!」
「うん! めちゃくちゃきもちくしてあげる!!」
「・・・・・・ほどほどでいーよ・・・」
「遠慮しなくていーのにー」
「してねーよ!!」

満面の笑みで俺を見つめたドンヘの頭の上。
濃い色の耳が元気よくぱたぱた揺れた。


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