星に願いを ※





『明日も甘いキスをしましょう』
ヒョクとトゥギヒョンのリップ音に合わせて、唇を尖らせた(日課)。
いいタイミングで休憩入ったなー。
時間が合えば必ず視聴してる見えるラジオの画面に、俺は釘付けだったと思う。

だってヒョクったら可愛い。
大きなプリントのニット帽と、ルーズなかたちのデニム。
ネコちゃんのお耳とシッポはうまく隠れている。
しかも普通に全然おしゃれ。
さすが俺のヒョク。

でも、トゥギヒョンが頭に触れるたびに。
スタッフさんが後ろから近づいたりするたびに。
やけに警戒してビクビクしてる。

いっそ公開しちゃえばいいのに。
めちゃくちゃ似合ってんもん。
あ、でもあんな可愛いヒョクを他の人に見せるのは悔しいか。

「ドンヘさん」
呼ばれてしぶしぶ画面から目を離した。
共演女優さんがちょっと呆れたような顔で立ってる。

「次、大事なハグのシーンなんですからね。あんまりデレデレしないでください」
「はいはい」
休憩なんだから好きに過ごさせてよ。

「君のことヒョクだと思えば余裕だよ」
「はあ・・・そうですか・・・」
彼女は脱力気味。

あまりに俺がどこでもヒョクヒョク言うもんだから、それが当たり前になっている。
メンバー同士仲良いなと思ってる人もいれば、恋人同士だとわかってる人もいる。
こそこそするのは性に合わない。
騒がれるんじゃないかって心配されたりもするけど。
堂々としてれば、意外とだいじょぶなもんだよ。

「シーン37、始めます!!」
セットの方で声がする。
頑張らなくちゃ。
ヒョクの姿を画面越しに見たら、ますます会いたくなっちゃったから。
なんとか今夜じゅうに帰れるように、俺は集中力を高めた。






                     *




「・・・ただいまー」
12階に荷物を置いて、ぜんぶ準備を済ませてから。
ヒョクの部屋にそおっと忍び足。

耳を澄ませると、規則正しい寝息が聞こえる。
そりゃもちろん寝てるよね。
時計の針が指してるのは、午前4時。
ドラマの撮影ってどうしてこうも時間がかかっちゃうんだろう。

「お邪魔しマース」
いそいそとヒョクの隣に身を滑り込ませる。
この体温に包まれると、どんな疲れだって吹っ飛んじゃうんだ。

たまにぴくぴく動くヒョクの耳を撫でながら、とろとろと眠りのなかに落ちた。



「わああああああ!!」
またしてもヒョクの叫び。

ヒョクの声なら眠りを邪魔されたって全然いいけど。
一体どうしたの?
自分の耳に、またいちいちびっくりしたの?

「ちょっとドンヘの真似しただけなのに・・・」
途方に暮れたみたいな呟き。
俺の真似ってなんだろう・・・
なんかわかんないけど真似してくれたなんて嬉しい。

「そんなホンキじゃなくても叶っちゃうっけ・・・願い事って・・・」
あん時、なんだかんだお願いしてたんだ・・・ヒョクったら。
ココアの方が大事そうな態度だったのにね。

目を閉じたままふにゃふにゃ考えていると、
「・・・痛ッ」
急に頭の上の方がきゅっと痛んだ。
なんでこんな変なトコ。
指でちょっと強くつままれたような。

「ドンヘ・・・」
瞼を持ち上げるとヒョクがまっすぐ見ていた。
まっすぐ?
ちょっと違う。
すこしだけ上に視線がズレてる。

ヒョクが見てるそのあたりに手をやって、俺は愕然とした。
柔らかな毛に包まれた、人間のじゃない耳の感触。

「・・・流れ星って、スゴイね」
髪の上でぴるぴる耳を震わせて、ヒョクは独り言みたいにそう零した。




End...
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