にたものどうし ※
コン、コン。
ちょっと間を開けて扉を叩く。
俺だよ、の合図。
いつもそうだけど、返事を待たずにドアノブを回した。
あっさりと俺を迎えるヒョクチェの部屋。
鍵、かけなかったんだ。
それが俺に確信を持たせる。
ベッドの真ん中で膝を抱えて、ヒョクチェは俺を見てる。
ずんずん近づいて、その頬を両手で挟んだ。
「待った?」
黒目の部分が多いヒョクチェの瞳が、ブレる。
親指の腹で唇をすいっと撫でたら、3回くらいのまばたきの間に涙が生まれた。
「ヒョクチェ。教えてよ」
おでこをくっつけて囁く。
そうしたらやっと、小さく頷いた。
「ソンミナヒョンは今いないから、大丈夫だよ」
「・・・うん」
入ってた力を抜くように、ヒョクチェはゆっくり息を吐いた。
「怒ってたの、いつまで?」
「・・・最初の、3日くらい」
「それからはずっと、会いたかった?」
「・・・うん」
「ひっこみつかなくなっちゃったんだよね?」
「・・・うん」
ぽつりぽつりと零れる、ヒョクチェの言葉と涙。
ホントに弱ってる。
仕事中はぎりぎり普段通りに振舞っていたけど。
馬鹿だね。
ソンミナヒョンに言ったらいい。
『もういいから、ドンヘに会いたい』って。
だけど心配をかけた以上、言い出せない。
どうしよう。
そんな風に悩むヒョクチェが目に浮かぶ。
「痛かった? ごめんね」
うっすらと内出血の痕だけになった手首を撫でる。
瘡蓋はキレイに剥がれたみたいだ。
「痛いのは、別に・・いい」
「いいんだ」
「・・・うん」
血を見た瞬間は青ざめていたのに?
「ドンヘが見えなくて怖かったのに、聞いてくれなかった・・から」
「それで怒ってたの?」
「・・・うん」
ちょっとびっくりした。
理由が予想とちがったから。
「疑ったからじゃないんだ?」
「・・・だって、そんなのお前・・言っても無駄じゃん」
「うん、まあ・・・無駄だけど」
「いちいちそれに怒ってらんないよ」
「そっか・・・」
ちょっととがらせた唇に、導かれてキスをした。
「ごめんね?」
ゼロに近い距離のまま呟くと、切なそうに眉を下げる。
近すぎてぼやける視界の中、愛しくてまた苦しくなった。
「・・・もういいから・・」
ヒョクチェの両腕が俺の首に回る。
「・・・一週間分、埋めてよ」
俺の耳にそう吹き込んで、ヒョクチェは俺ごと後ろに倒れこんだ。
『ドンヘがいないと駄目だ』
言葉にしなくても、熱い体が俺にそう伝えている。
ヒョクチェだって、俺とおんなじ。
そう思っていい?
ねえ・・・
End...
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