にたものどうし ※
「ねえ、ヒョクはまだ女の子を、抱きたいの?」
静かに問いかけたら、ヒョクは不思議そうな顔をする。
だってなにあれ。
テレビ見てたら、やたら女の子と楽しそうにしちゃってさ。
俺なんかファンにリップサービスはするけど、プライベートでは女の子と話してもない。
第一、仲良くしたいとも思わない。
「もう、無理だよ? 自覚しなよ」
俺に抱かれてあんなにイイって言って泣くんだから。
いまさら戻れるワケないでしょ?
「・・・え?・・」
「ヒョクは抱かれないと満足できないカラダになってるもん」
「そ、そんなコト・・ないよ」
「・・・ふーん・・・」
俺から視線を逸らしたヒョクチェを見据える。
あたまのてっぺんからつま先まで。
余すことなく、俺のものなんだからね?
「だったら、教えてあげよっか?」
「な・・、ど・・んへ・・?」
ヒョクのしていた細身のネクタイを、できる限り丁寧に外した。
俺が何をするのか、わからなくて困惑するように。
「ドンヘがいないと駄目って、ゆって」
「な、んだよ・・・急に・・・」
両手のあいだにピンと張ったネクタイを、にっこり笑って見せてみる。
ふふ、困ってる。
後ずさるヒョクチェを捕まえて、抱きすくめるような仕草で目隠しをした。
「俺は、ヒョクがいないと、駄目だ」
「ちょ・・、や・・だ」
しゅるしゅる、結んでいくかすかなその音は、なんだか甘美。
視界を奪う一瞬前、不安そうに揺れた瞳。
隠してしまうのはもったいないけど、しかたないよね。
その目に懇願されたら、俺はきっと絆されてしまう。
教えてあげなきゃいけないんだから。
ヒョクチェがもう、どんなカラダになってるのか、ね?
*
ギチ・・・
身を捩ったヒョクチェの手首から、革の擦れる音がする。
そんなんじゃ外れないよ。
「いー眺め」
つい口をついた呟き。
目隠しをされて戸惑っていたヒョクチェを、ついでにベルトで縛り上げた。
その両手を鴨居のフックに引っ掛けたから、ヒョクチェは立ったままほとんど動けない。
そりゃそんな呟きも零れるというもの。
「・・・ッ?! あッ!!・・や!」
前触れなく髪に手を差し込んだ。
耳を掠めただけでびくっと震える。
「ヒョク、気にいると思うんだ」
「んんッ・・な、に・・を?」
「こーゆーの」
「ひゃ、あッ!!・・ん、んぅッ」
するっと滑らせた指で、胸の突起を弾く。
びくん、大きく跳ねる体。
「ね? 見えないの、えっちだね?」
「あーッんんーッ」
触れるたびに一度離れてみたりして。
見えなくて予測がつかないヒョクチェは、いちいち新しい快感に反応してる。
いつもより、やっぱり良さそうにしてるね。
ひとつでも感覚を奪ったら、過敏になると思ったんだ。
一枚だけ残した薄手のシャツが肌を滑る、それだけで小さく震えている。
「もともと感じやすいのにヒョクったら・・・すっごい」
「や、やああッ、ふ・・ああんッ」
「男のコなのにここがこんなにきもちいのも、珍しいでしょ?」
「・・・わ、わかんな・・・ッ、そんな、のッ」
両方の乳首を絶え間なく撫で回してみる。
いっそそこらの女のコより感じるんじゃないの?
「よさそ。こんくらいしても、へーきかな?」
「ひ、あッ!! やああッ」
かりっと、ほぼ引っ掻くみたいにしたら悲鳴を上げる。
その声が気にいっちゃって、そんな刺激を何度も繰り返した。
「今日はねぇ」
「んッ・・う、う・・・」
最初から思いついていた言葉を、吹き込む準備をする。
指先をふいにするっと、お腹のほうへ滑り落とす。
ぴくんっと固くなる肩。
そこを触られるかもって、反射的に構えたんでしょ。
「期待した? でも、ここは触らないからね」
「・・・ん・・ッ」
そのまま寸前で止まってまた、胸をくすぐりに戻ったりして。
きっと戸惑ってるだろう、その目も見てみたい。
「ヒョクチェは、こんなのなくてもイケるよね?」
「・・・え・・?」
囁く声に、どうしても含み笑いが混じる。
ヒョクチェは、なにか問いかけるみたいに唇を動かした。
不安でいっぱいって感じなのに、ほら。
その体はやけに熱い。
触れてるだけで俺までおかしくなりそうだよ。
「ここ。ここしか、触んないから」
「あ・・アッ?!・・んんーッ」
唾液をまとわせて中指を滑らせる。
俺をいつも嬉しそうに迎えてくれるその場所。
ちょっと擽っただけで、蠢く。
「もうひくひくしてる。やーらしーの」
「や・・ちが・・ッ」
ねえねえ、なんでこんなにえっちなの?
俺はこんな風に縛ったりすんの初めてなのに、随分喜んじゃってさ。
まさか誰かにされたコトあんの?
俺が知らないヒョクチェの時間というものも、残念ながら存在する。
なくっていいのにそんなの。
「もうさー、ネコかぶんの、やめたら」
怖がってるみたいな唇をペロリと舐めた。
「自覚しなよって言ったじゃん。なんで虚勢張るの? ねえ」
「あ!!・・ひ、あああッ!!」
一瞬だけ抵抗して、俺の指を飲み込むヒョクの器官。
こんなに簡単に、許すんだ。
これが俺だからという保証はない。
そう思うと、どんどん加速する暴力的な気分。
「ヒョク。ちょっと差し込んだだけで引き込んでるの、お前だよ?」
「や、だ・・あああ」
我ながら温度のない声が出る。
ホントのこと、言ってるだけだけどね。
「また嘘ついた。いつわかってくれんのヒョクチェ。ねえってば」
「あーッ!!あ、あ・・曲げちゃ、ダメ・・そこ・・・ッ」
ダメとかイヤとか、そんなの口だけのくせに。
素直に快感を口に出さないヒョクがもどかしい。
じれったさをヒョクのなかにぶつける。
指で鍵をつくったら、ヒョクはびりびり電流が走るように震えた。
「もうイクの? こんなに淫乱だったっけ?」
「ちが・・う・・ちが・・ッ・・、あ、あ・・!!」
たたらを踏むつま先。
そこに力が入るの、前触れでしょ?
もう俺はヒョクよりヒョクの体のコト、わかってる。
「イイなら、イケば?」
「んやッ・・や、・・あああッー!!」
大きく反り返って、ヒョクの体は一瞬宙を浮く。
白く濃い精液が飛び散って、俺の服を汚した。
「すっごいね、ホントにイっちゃった・・・」
「ん、う・・う、ううーッ」
目隠しにしてるネクタイの色が変わってく。
泣いてるヒョクの顔も大好き。
ああ、思い出しただけでたまんない。
挿れちゃいたい。
いいよね?
フックから外してベッドに放り込んだ。
相変わらず軽いな。
こんなんじゃ連れ去られちゃうよ?
「・・・ドンヘ・・・」
体を2つに折って縮こまって、ヒョクは不安そうに俺を呼ぶ。
「なあに?」
「お願い・・・ほどいて、これ・・・」
「えー?」
ふるふる頭を振って見せてくる。
目隠しがイヤなんだ?
「ドンヘの顔、見たい・・よ・・・」
「だーめ。ヒョクだってこーした方がイイんでしょ?」
「そん・・な、コトな・・ッ、わ?!・・やだぁ!!」
革の結び目を引っ張り上げて、ベッドの上に括りつけた。
うん、こっちもいい眺め。
隠せない体のあちこちが、快感を伝えてくる。
なんでそんなに煽ってくれちゃうの?
「も、我慢できない・・・」
「ひゃ、ああッ!!・・・待って、待ってぇ!!」
「く、う・・ッ・・キッツ・・」
「~~~ッ!!」
衝動にまかせてヒョクのなかに押し入る。
途端に絡みつく粘膜。
待って、じゃなくて、待ってた、としか思えないよ。
こんなんだった? 前から。
「指・・より、こっちが・・いいでしょ?」
「あッ、だ・・めッ、・・・おっき・・」
「おっきく、させたのは・・だあれ?」
「ひんッ!!・・ドンヘの・・ば、か!!」
そんなコト言っても欲情させるばっかりなのに。
分かってやってるとしたら、見事な小悪魔っぷりだね。
「ねえ、俺の・・しか、知らないよ・・ね?」
「なに・・言って・・ッ・・の」
「ここ、他に・・誰かも入った?」
「・・な・・ワケ、ない・・ッ、あ、あッ!!」
ホントかなぁ・・・
いつからこんなに教え込まれたみたいに、乱れる子になったの。
全身をしっとり覆う汗に滑りそうになりながら、奥に奥に滑り込む。
「だって・・・エロすぎ・・・」
「んーッ!! 深・・いぃッ・・ひ、あーッ!!」
ギチギチ、手首の結び目を鳴らして身をくねらせる。
つま先がシーツを掻いてる。
またなんだ?
「ヒョク、俺ので・・イって?」
「イヤ・・、ヘンな・・の・・」
「変って、なに?」
「わかんな・・、けど・・・すごくて・・・や、だッ!!」
ぐ、ぐ、ぐ・・・だんだん狭くなってるヒョクのなか。
もしかして、ドライでイクってヤツ?
普通に達するよりすごいって、聞いたことある。
そんなの覚えたんだ?
「我慢しないでよ・・・ヒョクが変になるトコ・・俺も見たい」
「やーッ!! 怖い・・こんな・・ッ、んんぅーッ!!」
「怖くないよ・・・俺の、食いちぎったって構わないから」
「ば、か・・・、ッ?!・・あ、ああーッ!!」
う、わ・・・
一度大きく体を跳ねさせたと思ったら、ホントに息が止まるかと思った。
ぎゅうぎゅう、ありったけの力で握られたみたい。
下手したら痛いほど。
「・・す、ご・・ッ」
「ひ・・あーッ、あああーッ!!」
唇を閉じる暇もないヒョクは、端から唾液を零してる。
目隠しの下から涙も出るし、もうぐしょぐしょ。
「・・けーれんしてる・・・イキっぱなしなの?」
「あ、あ、ひ・・あ、はああああッ」
俺もめちゃめちゃ苦しい。
こんななんだ、ここだけでイクって。
俺が動かす隙もないのに、搾り取られそうだ。
いっそ、誘われるまま出しちゃおうか。
「俺もイっていい?・・ねえ、ヒョク?」
「ダ・・メ・・ッ! 死んじゃ・・うぅぅッ!!」
ふふ、すっごい台詞。
胸がざわざわしてとまんない。
「それも、悪くないね・・。俺も追っかけるけど・・」
「~~ッ!! ・・あ、待ってぇぇぇ!!」
ちょっと抉っただけなのにまた達したみたい。
「う・・もう出るーッ・・」
「やーッ・・もう・・・もう・・ッ」
子供みたいにイヤイヤを繰り返す。
なのに粘膜は貪欲に蠢く。
心臓がもたなくて、俺が先に死ぬかも。
「どん・・へ・・ッ、あ、んッ・・んんーッ!!」
これ以上はないと思ったのに、信じられないくらいの蠕動が俺のものを包む。
別の意識を持ってるみたいだよ、そこだけ。
「ひょく・・好き・・好きだよッ」
目が回りそうな想いを、その体に注ぎ込んだ。
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