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あたしのご主人様。 ※




あたしはあの人がキライ。

イ・ヒョクチェはあたしのものなのに。
あの人が来るとあたしはケージに戻される。

「チョコ。ごめんね、待っててね」
申し訳なさそうな顔をして、ヒョクチェはあたしの毛足を整える。

『イヤよ。まだ構ってよ。せっかく宿舎に来てるのに』
わんわん言ってもヒョクチェは眉を下げるだけ。
いつだってこうだわ。
恋人ってだけでどれだけ偉いのよ。

「チョコー元気かあああ」
やだ!
触んないでよ。
あたしの天敵、イ・ドンヘがヒョクチェの後ろから顔を出した。
がしがし頭を撫でられて、あたしは不機嫌の極み。
レディーに触れるのに、気配りがなさすぎだわ。

『なんで、こんな男がいいのよ、ヒョクチェ』
「おー元気みたいだなー」
『あんたには話してないわ! 早く帰ってよ』
「どーした、まだ眠くないかー?」

言葉が通じないのはわかってるけど、この人への通じなさはイライラする。
パダを選んだのだけは褒めてあげてもいい。
あの子くらい生まれつきおっとりした性格じゃなきゃ、やってられないわ。

「ヒョクー」
「なんだよ」
あたしをしつこく撫でながらドンヘがヒョクチェを呼ぶ。

「チョコ出しといてあげちゃダメなの?」
「えー? いいけどー・・・」
「じゃあ、好きにさせたげよ。まだ眠くなさそうだし」
「わかったよ。よーし、こっちおいでチョコー」

え、え? いいの?
たまには役に立つこと言うじゃないドンヘ。
ヒョクチェに抱えられてケージから出されて、あたしの機嫌は一気に直った。

「でも、そんならしないからな」
「えー?! なんでぇぇぇ?!」
「・・・見られたら恥ずかしい、でしょ」
「ワンちゃんだもん。大ジョブだよぉ」
「大丈夫じゃないよ!!」
「えーだってパダだって目の前でしてもすぐ寝ちゃうじゃん」

よくわかんないけどモメてるわ。
そのまま喧嘩して別れちゃえばいいのに。
ヒョクチェに擦り寄りながら、あたしはそんなコトを考える。

「でも、・・ッ!!・・・ちょ、と・・や!!」
「久しぶりじゃん。イヤなんて言わないでよ」
「・・・そ、だけど・・・んんッ、ダメぇ!!」
「ヒョク、かわいー」

ドンヘの手がシャツのなかに潜りこんだ後、ヒョクチェの体がびくっと跳ねた。
それが伝わってあたしまでびっくりする。

『ヒョクチェ、なにしてんのよ』
わんっと声をかけると、ヒョクチェはあたしを見た。
次の瞬間ふわーっと顔から首のあたりまで真っ赤になる。

「チョコ・・・」
「そーだよ。チョコも見てるんだから、嘘ついちゃダメだよね?」
「ってか・・見せちゃダメ・・なんだって・・ば・・・ッ」
「そんなことないよ、ねー?チョコ?」

ドンヘはにっこりあたしに笑いかける。
そうよ、あたしが見ちゃいけないはずないわ。
今日は随分話がわかるのね。

「んーッああ、あ、あ・・」
「ほら、ここ。ね?もっと抓ってあげようか」
「あッ、両方・・しちゃ・・やだ」
「そっか、両方一緒がいいんだ?」
「ひゃんッ・・あ、強・・い・・ッ」

だぶだぶなヒョクチェのシャツの、胸のあたりが蠢いてる。
後ろから抱きしめるみたいにしてるドンヘが、ヒョクチェの耳元で喋る。
ヒョクチェはそのたびにいちいち体をくねらせた。

「強いくらいがきもちいでしょ?」
「イヤ・・・優しくしてぇ・・ッ!!」
「・・・じゃあ、これはなあに?」
「んぅーッ!!・・ふ、あッ」

ドンヘの手がすすーっと移動して、ヒョクチェの足の付け根を触った。
位置的にはあたしの目の前。

『ねえ、なんか隠してるの?』
小さないきものが隠れてるみたいに見える。
ドンヘの手が撫でるとぴくんぴくんって。

「チョコ見てよ。ヒョクったらやらしーの」
「ばっか!!・・・なに、言って・・ッ」
「まだちょっとしか触ってないのにさあ、こんなになっちゃって」
「ドンヘ・・が、悪い・・・ぜんぶ!!」
「そうだよねー。俺が開発したからえっちになったんだもんねー」
「~~~ッ、もおお!! そーじゃなくって・・・ふ、あ!!」

怒ってる台詞なのに、ヒョクチェの声は最後には甘くなってる。
ケージのなかから聞いたことはあったけど。
こんな風だったのね。

「きょーいく・・に、悪い!!」
「教育って、チョコはもう立派なレディーじゃんか」
『そうよ、だいいちヒョクチェは過保護なのよ』
まさかドンヘに便乗して文句を言う日が来るとは思わなかったわ。
いつもはウザいばっかりなのに、どうしたの。

「んーッ、は、ああッあ、あ」
「ああ、ヒョク。可愛いよ?」
あたしが感心してる間にもドンヘはなんだか作業を進めてる。
うっすらと全身に汗をかいてるヒョクチェ。
いつもの彼と違うけど、可愛いわ。確かに。

「・・・ねえ、入れていい?」
「あ、あ・・で、も・・ッ」
「チョコに直接は見えないように、こうするから。ね?」
「う、う・・・ッ」
「ヒョクだってもう欲しいんでしょ?」
「ああッ!!・・は、あッ・・んんーッ!!」
薄手のタオルケットがかけられたなか。
横たわったヒョクチェに、ゆっくりドンヘが覆いかぶさってく。

「くッ・・ふ・・、んんー!!」
「う、わ・・・、相変わらずスゴい・・ね」
「ドンヘ・・もっと、ゆっくり・・・ひ、あッ!!」
「う、腰が勝手に動いちゃうんだよぉ」

2人が重なっていけばいくほど、ヒョクチェは苦しそう。
眉を寄せて一生懸命こらえてるみたいなその顔。
初めて見るわ、こんなヒョクチェ。

「も・・入った? ぜんぶ・・」
「ん、もう少し・・・」
「まだ?・・・苦し・・ッ」
「頑張ってヒョク・・。俺も頑張る」
「がん・・ばるなぁ!! 手加減・・してぇ!!」

ひゅっと深く息を吸ったと思ったら、ヒョクチェは急に泣き出した。
ぽろぽろ、真っ赤なほっぺを流れてく涙。

『泣いてるわ!! やめなさいよドンヘ!!』
「う、わ!! どした?!」
「チョコぉ! ダメ、降りてー!!」
あたしは慌ててヒョクチェの肩のあたりに乗っかった。

だってだって。
ヒョクチェ泣いてるもの!

あたしたちは流せないからわかんないけど、涙は悪いもの。
いつもヒョクチェが悲しい時とか痛い時に出てたわ。
きっと痛いのよ、もうやめてよドンヘ。

『ヒョクチェを泣かせたら、承知しないんだから!!』
「怒るなよチョコ。俺はヒョクをいじめてるんじゃないよ」
『・・・だって、ツラそうだわ』
零れる雫をペロリと舐めた。
しょっぱい。

「チョコ・・・心配してくれてるの?」
ヒョクチェがとろんとした目をしてあたしを撫でる。
「大丈夫だよ。悲しいとか寂しいとかって涙じゃないから」
ヒョクチェがそう言うならいいけど・・・
優しく毛並みを直されて力が抜ける。

「そーだよ。気持ちよすぎて泣いてるの、ヒョクったら」
「ちが・・ッ、生理的に、だよ!! ばかドンヘ!!」
「うそだぁ。いっつも奥まで突くとイイって言って泣いてるよ」
「・・うう、・・ちがうのに・・・」

普段のやりとりをしてる様子にすこし安心する。
ヒョクチェがツラくないなら、別にいいわ。
まばたきの合間にもう一粒零れたのを舐めて、あたしはヒョクチェから降りる。

そのまま横にお座りしたら、ヒョクチェはちらちらあたしを見た。
なあに? いい子にしてるでしょ?

「ヒョク、チョコのこと気になる?」
「・・そりゃ・・気になるよ」
「じゃあ、早く俺を、満足・・さ、せて?」
「ひんッ・・あーッ!!・・待って!!」

あーあ、せっかくぬぐったのに意味ないわ。
ヒョクチェはまた大粒の涙を流しながら、ドンヘに揺さぶられて声を上げる。
悲鳴に聞こえなくもないんだけど、どっか違うのよね。
だからなんか、この声には心配しない。

「チョコの目に映ってるよ」
「ん・・・なに?」
「やーらしいご主人様の姿」
「言・・わないで・・ぇ!!」

こーゆーのをやらしーって言うのね。
よくわかった気がするわ。
見たことないヒョクチェなのに、目が離せない。

「う、う・・ヒョク、俺出して・・いい?」
「・・ん、ん・・ッ」
「ねえ、どっち?」
「ふあ!んッ・・出せば・・いいじゃんッ」
「ヒョクは? まだイカないの? 一緒がいいよ」
「聞かなくて・・も、わかるでしょ?」

ちゅくちゅく、タオルケットのなかから水っぽい音がしてる。
どうなってるのか気になるけど、ドンヘがいっぱい動くから行けなさそう。
仕方なくあたしはまた、ヒョクチェのほっぺたを舐めた。

「チョコ、いい子だね。わかったんだ・・・」
『あんたに褒められても嬉しくないわ』

ドンヘが優しげな目であたしを見る。
調子に乗らないでよ。
あんたに気を許したワケじゃないんだからね。

「あー、あーッ! ドンヘ!・・ドン・・ヘッ!!」
「ヒョク・・すっごい気持ちいんだって。見ててあげてね?」
『見るわよ、言われなくても。貴重だもの』
「お願・・も、きてぇ!!・・・俺、ダメーッ」
「うん・・・俺も、限界・・イクよ?」
「・・ッ!!・・あ、あ、あああーッ!!」

ヒョクチェの体がドンヘごとおっきく揺れる。
すこしの間息を吸うばっかりになって、その後ヒョクチェは一気に脱力した。
ぱちんと電源が落ちたみたい。

「あ・・あ、ヒョク・・好き、だよ・・・」
「ん・・ん・・・」
口と口をくっつけてからしばらく。
2人はそのまんま、おんなじタイミングで眠りにつく。

『風邪ひくわよ、あんたたち!!』
汗だくなの、なんとかしてからにしなさいよ。
あたしがわんわん言ったって、届かないでくうくう寝息を立てる。

『もう・・・しょうがないわね』
足元から毛布を引っ張ってかけてあげる。

「んーひょくうう」
締りのない顔でヒョクチェに密着するドンヘ。
この人にまでかけたげるのは癪だけどね。
ドンヘが風邪ひくと、ヒョクチェがそわそわするんだもの。

なんとか冷えないようにだけしてあげて、あたしはヒョクチェにくっついて丸まった。


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