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少年タイム




「♪~~」
PSPでゲームをしながら、ドンヘが口ずさむ歌をなんとなく聞いている。
ベッドの上、お互いがお互いを背もたれにして。

背中から伝わる体温って、なんだか好き。
なんとなくいい気分で、知ってるメロディーに合わせてハミングした。

「・・・・・・ねえ!!」
と、突然ドンヘが弾かれたように声を上げる。
びっくりして思わずボタンを間違えた。
操ってたプレイヤーが敵の弾に当たって小さくバクハツする。

「な、なんだよ?!」
体勢は変えないまま後ろに問いかける。

「なんで!! 制服着てくんなかったの?!」
「なんの話だよ」
「まあ柔道着ってのもそれはそれで可愛かったけどさあああ」
柔道着?
・・・ああ、あれか。

みんなで何年か前に撮った映画のコト?
そういや歌ってたのはその主題歌だった。
確かに俺は柔道部員って役柄で、ドンヘやヒチョルヒョンみたいに学生服は着てないけど。

「別に俺が嫌がったワケじゃないよ」
脈絡もなく始まるのがドンヘの話。
なんで今更?と思っても無駄だから、とりあえず答えてあげた。

「ってかなんでヒョクがダンス部じゃないの? 一緒のシーンなかったじゃん!!」
「や、それも俺の意思じゃないし」
「学園ものって聞いた時から楽しみにしてたのに・・・寂しかった!!」
「べったり楽屋で一緒にいたじゃん」
「制服デートごっことかできなかったもん!!」
「しなくていーよそんなコト!!」

駄々っ子と化して足をばたばたさせてるのが、あわせた背中から伝わる。
5年も前のコトをそんな風に文句言われたらさすがに困るなぁ。

頭でも撫でたげて機嫌を取ろう。
そう思ってくるっと反転したら、ドンヘは同じタイミングで振り返った。

「・・・ヒョクチェ」
正面から目が合った瞬間、なんだか真剣な様子で手を握られる。

「な、なに・・・?」
急変した空気に戸惑っていると、
「着てください!! 学生服!!」
「・・・はあ?!」
思いっきり一生懸命な顔で、思いっきりアホなことを言い出した。

「だって、ヒョクのファンの子とかも着て欲しかったって言わなかった?」
「ま、まあ、当時は・・・言われたけど」
「ほら!! 俺の言葉はファンの言葉だと思った方がいいよ!!」
「なんでだよ!!」
「俺が一番のヒョクのファンなんだから」
「な、なんだよそれ。ばっかじゃないの」

謎すぎる論理が展開されていく。
にーっこり、ドンヘは憎らしいほど完璧に笑った。

「ファンは大事にしないといけないよね?」
ここが撫でるとこですって書いてあるみたいに頭を差し出してくる。
思わず可愛いとか思っちゃったりするから始末が悪い。

「はいはい」
「ね? 大事にしてね?」
「わかったってば」
赤面しないように気をつけて、いつも以上にテキトーにがしがし髪をかき回した。






                  *





「これとか?」
「いやこっちだろう」
「でもこの色さあ・・・」

インタビューを撮るのに待ってる控え室。
ドンヘは隅っこでシウォンのノートPCを食い入るように覗き込んでいる。
いつになくなんだか真剣なカンジに見えるんだけど。

ここ3日くらいコレが続いてる。

ドンヘがシウォンと仲良いのはそりゃ昔からだし。
俳優としても仲間なワケだから、俺には分かんない話もあるのかも。
だけど、俺を呼んでくれないでずっとあの2人でいるのは・・・あんまないかな。
ドンヘはともかく、シウォンは3人でいるのが好きなのに。
・・・俺抜きで、なんの話してるんだろう・・・

中身がとっくにないミルクのストローを噛みながら、こっそり様子を伺ってみる。
「ヒョクチェヒョン」
と、向いのソファに腰掛けていたキュヒョナが、俺にだけ聞こえるように小さく呼んだ。

「うわの空、ですね」
「べ、べつに?」
微かに笑う生意気マンネにふくれて見せる。
見透かされてるみたいでなんか悔しい。

「気になるくせに」
「・・・なってないよ。別に俺、普通でしょ?」
「ふふ、そうですね。雑誌を逆向きで読むのを普通と呼ぶなら」
「・・・あ!!」
「ベタですけど、実際それやる人って可愛いもんですね」
なんだよその目!!
俺ヒョンだからね?
文句はあるけどコレ以上なんか言ったらヤブヘビっぽい。

「へーきだってば」
いそいそ雑誌をもとに戻して、時間かせぎにめくったりして。

「俺が相手してあげてもいんですけど、早計かと思いまして」
「なにそれ」
「たまにあのふたり、ヒョクチェヒョンをふたりして見るんですよ。気づいてなかったですか?」
「し、知らない」
だって目が合いそうになると逸らしてたもん。

「目的が一緒なだけなんじゃないですかね」
「・・・よくわかんないよ」
どうやら元気がなさそうに見える俺を、キュヒョナなりに慰めてくれてるような気がする。
けど、いかんせんコイツの言葉は回りくどくって。

「だからいい加減、あたらしいの飲んだらどうですか?」
「・・・あ、うん・・・」
キュヒョナはコンっとピンク色のパックをつつく。
口を放してみたら、ストローは見るのも無残な状態になってる。

俺もたいがいアホだね・・・
ふーっと脱力してため息をつくと、俺を見ないままキュヒョナは俺の髪を梳いた。


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