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GAME OVER ※




「・・・あ、いけそーかな」
「・・・・・・・・・・・?」

体に響くみたいに聞こえた声に、しずんでいた眠りの底から僕はゆっくり上がってきた。
薄くあけた瞼から覗く、栗色のやわらかそうな髪と、うすい右耳。

かちかちボタンを叩く音はとっても聞きなれてるけど、いつものよりちょっとスピードが遅いかな?
肌寒くて引き寄せた布団も、キュヒョナのじゃない。

「ん? こっちかな? えい、えい」
無意識っぽい呟きはヒョクチェの声。
どうりで抱きついた体が薄くて小さいと思った。

「ねー、まだやってんのー?」
「わ! びっくりした!!」
声をかけたらその体がぎくっと動いた。
驚かせる気はなかったのになー。

「僕、寝ちゃってたよ」
もともとくっついてた距離をさらにぎゅうぎゅう詰めてみる。
だって寒いんだもん。
ヒョクチェはいつもあったかくてきもちい。

「おはよ、ソンミナヒョン。もう、もう終わるよ、ほら」
僕が背中にひっついてるせいで振り返れないから、肩越しに画面を見せてくれた。
うわ、なんかものすごいハデハデな敵。
いわゆるラスボスってヤツなんだろう。

ゲームは、できないからだけじゃなく、きらい。
キュヒョナを僕からうばってしまうから。

ゲーム仲間との集まりからキュヒョナがずっと帰ってこなくて、僕は完全に拗ねた。
構ってくれる子を探してここに来たのに、ヒョクチェまでゲームしてんだもん。
ヒョクチェを抱き枕にしてふて寝をしてたら、意外とぐっすり眠っちゃったみたいだ。

「あ! あぶなッ、くらえ、えい!」
えいえい言いながらキュヒョナよりオーバーアクションでボタンを叩いてる。
その動きでふと僕の唇に当たったヒョクチェの耳が、体温の割にちょっと冷たい。

・・・・・・・・・・・・・・・・湧いちゃった、悪戯ゴコロ。

「ひゃ!あッ」
かぷっと軽く噛み付いてみたら、なんか可愛い声を上げた。
「ヒョクチェ・・・」
息だけで呼ぶと、ふるっと肩が揺れる。

「ひょ、ん、・・・ヤ、ダッ」
「耳冷たいから、あっためたげる」
「だい、じょぶッ・・・ちょ、待って!」
「なんでー? ねぇ、手とまってるけどいいの?」
「・・・・・あ!」
デデレデレー♪
残念そうな音楽が流れて、画面には『GAME OVER』の文字。
ふふ、ごめんね?

「あーあ、終わっちゃったねぇ」
「も、ちょい・・だったの、にぃ・・・」
「コンティニュー、しないの?」
「・・・ヒョンがッ、やめて・・くれたら」
可愛いヒョクチェ。
こんな敏感に反応してくれたら楽しいだろうな。
ドンヘが羨ましい。

「じゃあ、やめなーい」
「ソンミナ、ヒョン・・・」
ちょっと責めるみたいな呼び方も、なんだか煽られる。
もうちょっと、してみてもいいよね?
僕をほったらかしにしたんだもん。

「ゲームより僕と遊んで?」
「ん、わかった・・からッ、あッ・・・」
「・・・っていうか、ヒョクチェで、遊んでいい?」
「・・・お、俺・・で?!」
「うん、だって可愛いから」
「ンッ、あぅ、なに言って・・ッひゃ!!」

やっぱ予想通り。
するっと手を滑らせて胸を撫で回したら、ぴくっと反応が返ってきた。

「イ・・ヤ!! ひょん、やめてぇ!」
「嫌? 僕に触られるの、嫌?」
泣き声を出すから、眉を下げてちょっとのぞきこんでみる。
ヒョクチェは僕よりもっと困った顔をして、黒目がちの目にうっすら涙の膜を張った。

「ヒョンは・・・ヤじゃない、けど・・・」
思わず微笑んじゃうくらい素直。
「じゃあ、いいでしょ?」
素直すぎてむしろヒョンとしてはちょっと心配なくらい。
戸惑いながらもこくんと頷いたりするから。
僕はしないけど、ひどいコトされたらどーすんの。

ドンヘがあれだけ異常に執着するのも分かる気がする。
でも、そんなドンヘのいないこの隙にこんなコトするのが、イケナイけど楽しくなってきちゃった。

「ねえ、いつも・・・こんなカンジなの?」
「い・・・つも?」
「ドンヘとセックスする時」
「ッ・・・そんな・・・の、知らな・・・ッあ!」
僕も弱い方かもしれないけど、ヒョクはもっとみたいだね。
服の上から乳首を軽く弾くと、語尾が跳ね上がる。

でも、欲望に忠実な僕と違って、体と心がアンバランスっぽい。
触られて反応する体に、ヒョクチェの心はいちいちびっくりしてるみたい。
それが逆にやらしくて、もっと反応が見たくなっちゃうの知ってる?

「僕はね、こうされるの・・・好き」
「アッ、ぅ・・・んんッ」
「ヒョクチェはどお? きもちい?」
「・・・わ、かんない・・よぉッ」
キュヒョナの真似して、触れるか触れないかのギリギリで肌の上に指を滑らせる。
いっつも自分がされてるコトを人にするって、なんかヘンなカンジ。
でも、される感覚を知ってるから、良くしてあげられるよ?

「ほら、ここ・・・こうしたり・・・ね?」
「ひゃ!うッ・・」
期待にピンと張り詰めた突起を、あやすみたいにくすぐる。
背骨を駆け上がる震えが、くっついたところから伝わって・・・
ああ、なんだか僕も気持ちがざわざわする。

「なんか、びくびくしてる・・・」
「ん、ん、んッ、ぅ・・・あ!」
白い体がだんだんぴんくに染まってくる。
うーん、困ったな・・・

「ドンヘ、呼ぼっか?」
「・・・えッ?」
そろそろ、ブレーキも用意しとかないとヤバイかも。
イタズラ程度にしようと思ってたのに、ヒョクチェが可愛くて暴走しちゃいそうだもん。
とってももったいないけど、恋人にバトンタッチしてあげなくちゃ。

「電話して?」
でも、もいっこだけ意地悪したいな。
僕は手を休める気ないから、このままドンヘに電話してみて。

「え?え、と・・・ンッあ!、この・・まま?」
にーっこり微笑んで頷いて見せながら、ヒョクチェの携帯を差し出した。





                   ※





『trrrrrrrrrrr・・・・』
スピーカーにした携帯が、この部屋に呼び出し音を響かせる。
ドンヘに出て欲しいけど出て欲しくない。
ヒョクチェのそんな戸惑いは目に見える。

『・・・もしもしひょくううううううう!!』
5コール目で出た声は、飛びつくくらいの勢い。
相変わらず、犬だったらすごいシッポ振ってそうな雰囲気だね。

ヒョクチェの可愛いワンちゃんは、ご主人様の状態にすぐ気がつくかな?

「お、お疲れ・・・ドンヘ」
『ううん、疲れてないよ!! ヒョクが電話くれたから超元気!!』
電話をもらって嬉しそうな声を聞きながら、僕の手は意地悪を始める。

「・・・ッ、え、っと・・・いま・・・どこ?」
胸元をくすぐられて、ヒョクチェはどうしても途切れがちの喋り方になる。
言葉の端っこが甘くなっちゃわないように、気をつけてるせいだよね?

『・・・ヒョク・・・どしたの? なんか苦しい?』
わ、思ったよりも勘が鋭い。
気づいちゃったんならもっとしてもいい?

「や、べつに・・・普通だよ・・・・・、ッ!!・・・ンッ!!」
鳴かせたくてちょっと進んじゃった。
太ももを通って触れたヒョクチェのそこが、布地越しでも跳ねるのが分かった。
ビックリして声が漏れちゃったね。
もう言い逃れできないよ。

『え?! な、なにしてるの?!』
ドンヘの驚く顔が目に浮かぶ。

「なん・・も、してなッ・・・ッん、ふッ」
ここまできても虚勢を張るとこがヒョクチェらしい。
一生懸命唇を噛んで、なんとかしようとしてる。
無駄だけどね?
だってこんなにかちかちになってるもん。

恋人の帰りを待てなくてひとりでしちゃう淫乱ちゃんだと思われちゃったりして。
・・・・んーでも、それも可愛いかも。

『なんもって、そんな声出して・・・?』
「い・・から・・・早く、来てッ」
『・・・もう、着くよ・・・すぐ行く!!』
「はや、くぅ・・ど・・んへ・・」
あーあ、そんな風に呼んだらドンヘたまんなくなっちゃうじゃん。

『あー!! エレベーター行っちゃった!! ・・・待っててヒョク!!』
「ん・・・、うんッ」
ツー、ツー、切れた通話音にヒョクチェの甘い呼吸が重なる。

「ドンヘ来るって。良かったね?」
「ん、ん、ひょ・・ん、ちょっと・・・ゆるめてぇ!!」
ドンヘに聞こえなくなったって僕はバッチリ聞いてるのに、ヒョクチェは大きく喘いだ。
煽るのが楽しくなっちゃって、僕がたくさん擦っちゃったせいか。

「なんで? イっちゃうの? 直接触ってないのに?」
「う・・・だってッ・・ンッ!! やあ!」
「ドンヘが来る前に出しちゃう? それともドンヘにイカせてもらうまで我慢する?」
「・・・・・・・・が、まん・・するッ、から・・待ってぇ!!」
こんなに張り詰めちゃったら、ゆるめたって焦らされてるみたいになるだけだよ?
ふふ、でもそう言うならそうしてあげる。

「これでいい?」
「ふ、あ、あッ、ああッ・・・んッ」
ほら、逆に感覚鋭くなっちゃってるじゃん。
呼吸の度に漏れる声が、どんどん甘くなって僕の耳をくすぐる。

隙をついてイカせちゃいたいなーなんてひそかに考えてたら、
ダンダンダンッ
忙しなくとびらを叩く音に邪魔された。







「ヒョクぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
返事をする間もなく飛び込んできたのは、もちろんドンヘ。
脇目も振らずヒョクチェまっしぐら。
ものすごいイキオイでベッドにダイブして、僕も布団とかも一緒くたにぎゅむーっとした。

「・・・って、うわ!!! ソンミナヒョン?!」
きづくの遅!
がばっと顔を上げてやっと、ヒョクチェの背中にくっついてる僕を認識した。
見えてない時は意外に鋭かったくせに、面白い子。

「うん、僕」
「・・・・・・そっか、ヒョンがイタズラしてたんだ」
そっかって、納得してくれちゃうのってちょっと複雑なんだけど・・・
僕のコトどんな風に見てるの?
実際やっといてなんだけどさ。

「ごめんねドンヘ。イタズラしちゃった」
手を伸ばしてヒョクチェ越しにドンヘの頭を撫でてみる。
「・・・知らせてくれたからもういいよ」
ヒョクチェが苦しそうなくらい強く抱きついてるから、もごもごしたカンジで答えが返ってきた。
僕が電話させたの分かったってコトか。

「だってなんか、ヒョクチェ可愛いんだもん。ほら・・・」
「んぅ!! ・・・は、あッ!!」
「ホントだぁ」
撫で上げられてぴくぴく反応するヒョクチェを、ドンヘはニコニコして鑑賞してる。
こらこら。
君がしてあげないと、この子律儀に耐えてるのに。

「ドンヘにイカせてもらうまで我慢するんだって。今すごい頑張ってたよ?」
「ひょ、ん!!」
ヒョクチェはかわいそうなくらい真っ赤になって僕を振り返る。
残念ながら、もっといじめたくなっちゃうだけなんだけどね?

「だってそう言ったでしょヒョクチェ? ドンヘがいいんでしょ?」
期待に満ちたキラキラの目で見てるドンヘをチラッと見て、
「ち、がう・・・もん・・」
ぷいっと目を逸らす。

とにかくまっすぐなドンヘの表情と、ヒョクチェの置かれてるこの淫らな状況。
アンバランスさは確かに僕も感じるよ。
でも、意地張ったってカラダの熱は引かないでしょ?

「ウソツキ。素直に言っちゃいなよ」
「なん・・て・・・?」
「ドンヘ、イカせてって。お願いしてごらん?」
「言って言ってヒョク!! 俺聞きたい!」
「・・・・ぅ・・・」

誘惑の甘さを鼓膜に直接吹き込んだ。
テンションの上がったドンヘに両頬を包まれて、ヒョクチェは視線さえ逃せなくなる。
困りきって多くなる瞬きの合間に涙が零れた。

「・・・ッ・・・・せ・・・て・・・・」
「んー?聞こえないよヒョクチェ。ほら、もっとちゃんと言って」
いっそ思い切っちゃった方が、あとで気持ちよくなれるんだから。

「イカせ・・て・・・どん、へぇ・・・ッ」
「うん、いくらでもしたげる」
「ふふ、いい子だね」
ふたりとも可愛い。
ちゅっと触れるだけのキスを交わした弟たちの頭を交互に撫でた。

その時。

trrrrrrrrrr!!
「うわ!!」
ベッドに投げ出してた僕の携帯が突然コールして驚く。
でも、・・・・・なんとなく予感はしてる。

画面に表示された名前は、キュヒョナ。
やっぱりね。

「ソンミナヒョン?」
「電話出るけど、気にしないでいいよ。ヒョクチェもう限界でしょ?」
「・・・ぅ・・んッ・・も、だめ・・・ッ」
一瞬手を止めて僕を見たドンヘに笑いかけ、切羽詰まってるヒョクチェのほっぺをつつく。

「もしもし?」
『ソンミナヒョン、どこですか?』
通話ボタンを押すと聞こえるキュヒョナの声。

「ふ、アッ・・・ん、んんーッ」
重なるように僕のすぐそばでヒョクチェが喘ぐ。
『な、なんですか?! ソンミナ、なにして・・・!!』
ビックリしてる、キュヒョナ。
当たり前か。
でも、僕をほっといたキュヒョナが悪いんだからね。

「ヒョクチェの部屋にいるよ」
お構いなしに会話する僕と、
「ひゃうッ・・あ、あ、ンッ・・・きもち、いッ」
「ここ・・好きだよね?」
快楽に溺れてるふたり。
『・・・・・・・・・・』
さすがのキュヒョナも途方にくれてるみたいだ。

「帰ったんなら、迎えに来てよ」
「や・・や、あッ・・・・もぅッ・・イクぅッ」
「いーよ、出して・・ひょく」
昇り詰めようとしてるヒョクチェの髪を梳きながら、キュヒョナには平気なフリの声を届ける。

『え、えっと・・・ヒョクチェヒョンの、部屋ですよね?』
「うん。そうだよ」
珍しく声が上擦ってる。
いつも飄々としてるひとのそういう態度って新鮮。

「あ、あ、あッ!!・・んんーッ!!」
背中をしならせてヒョクチェが吐精する。
僕にドンヘに、それに電波を通してキュヒョナに、聞かれてるのはもう意識の外みたい。
聞いてる方が溶けちゃいそうな悲鳴。
こく、と、電話の向こうで息を飲んだ気配がした。

「キュヒョナ、来ないの?」
『・・・あ、い・・行きます・・・・』
状況が理解できないとキュヒョナでもこうなるんだ。
ふふ、なんだか楽しい。

「じゃあ、待ってるからね」
その表情が見たいから、そう告げて早々に通話を切った。

 
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