first love





「・・・・出たよー・・・」
自分の部屋だけどなんだかおっかなびっくり扉を開けた。
トゥギヒョンのベッドはまだ空だ。
俺のベッドには毛布に埋もれたヒョクの頭が見える。

「ヒョク? 寝てんの?」
そろそろ近づくと規則的な呼吸が聞こえた。
ラジオとバラエティの分、俺たちより断続的にヒョクとトゥギヒョンの仕事は多い。
疲れてるんだろうな・・・

傍らに腰掛けて髪を梳いてみた。
「・・・ん・・・」
ころんとこっちに寝返りをうつ。
すごい気持ちよさそうに眠るなぁ・・・
ヒョクのこんなトコも好きだと気づく。
寝る時、食べる時、歌う時、遊んでる時でも・・・幸せそうに笑う。

人に見せられなさそうなデレデレの表情で寝顔を見ていたら、
「ど・・・んへ・・・?」
スローモーションのようにヒョクの瞳がひらいて俺を小さく呼んだ。
「うん、俺。ここで寝ていいよ」
「・・・ありがと・・・どんへ、大好き・・・」
「・・・え・・・?!」
ふにゃっと笑って零した言葉に驚く。
好きって、それって、どういう好きなの?!
でも、ヒョクはあっという間にまた眠りの中。
寝惚けてるだけなのかな・・・それとも無意識に本音が出たの?
・・・・どっち?

心臓が破裂しそう。
でも、疲れて寝入ってるヒョクを起こして問いただすほど子供にはなりたくない。
「・・・やっぱり、身がもたないかも・・・ヒチョルヒョン・・・」
バッタリ、ヒョクの隣に倒れこむ。
ぐるぐる回る思考回路に酔って、いつの間にか瞼を閉じていた。


                   *


――あ、・・・ヤ、だ!
なにがイヤなの? こんなにしといて・・・
――ば、かぁ! ん、あ!
ああ、ヒョク・・・可愛い可愛い。
両手で顔を覆っても、耳まで真っ赤なの知らないの?
――誰、か・・・来ちゃ・・・う
じゃあ静かにしなよ
――う・・・ぁ、んんッ
手をどけさせて、唇をキスで塞ぐ。
俺は誰か来てもいいけどね。
いっそこんなヒョクをみんなに見せたいくらい。
俺のをいっぱい飲み込んで、ぐちゃぐちゃになってるトコ。
――あ、どんへ・・・好き、・・・もっとぉ
いくらでもあげる。
ヒョクの熱で俺を溶かしてくれてもいい・・・



「・・・ドンヘ、ドンヘ」
「・・・ん・・?」
薄く開けた視界にヒョクの顔。
「風邪、ひくよ・・・?」
「ひょ・・く・・・」
もっとくっついててよ・・・
頭の後ろを捕まえた。
「ちょ、ドンヘってば!」
胸に抱え込んだらぽこぽこ叩かれた。

・・・・・・あ、れ?
え?・・・・・・俺、また夢見てた?!
「あ! ご、ごめん!!」
急いで手を離す。
夢と現実が今、完璧ごっちゃになってた・・・

「べ、別にいーけど・・・髪、濡れたままだから・・・」
ヒョクは抱き寄せられたその位置にいてくれた。
むしろ俺の方が腰が引ける。
「髪? ああ、そっか」
いつの間にか眠っていたから。
でも、顔も体も熱くって、風邪なんてひきそうにない。

「毛布も俺が取っちゃって、ゴメンね?」
う、上目遣いやめて・・・
いいから、毛布なんて全部つかっていいから。
だからこれ以上くっつかないで!
体の一部が、知られたらマズイ状況なんだ・・・

「平気平気!全然寒くないから。気にしないで」
「だって、お前の方が寒がりじゃん」
「あ、ちょっと!待って!!」
「・・・・・・・あ・・・」
毛布をかけてくれようとした拍子に、ヒョクの膝がそこに触れてしまった。
固まってしまうヒョク。
変にうろたえてしまったから、寝起きだからという言い訳もできない。

「・・・・・・・ごめ・・・」
「や、謝んの俺の方・・・」
謝られる方が逆につらいよ・・・

「ドンヘ・・・あの・・・」
固まった体勢のままヒョクがおずおずと呼ぶ。
「な、に?」
「こないだも言ってたけど、やっぱ・・・俺を、だ・・抱きたいの?」
本人から改めて聞かれるとすごい恥ずかしいけど、
「うん。もう一生ヒョクにしか欲情できないんじゃないかってくらい」
俺は劣情がバレたことで恐いものがなくなった。

「そ、か」
呟きながら赤面した顔で一度俺をチラッと見て、
「俺は・・・たくさん考えたんだけど・・・イヤじゃないんだ」
意を決したように言う。
「俺が?」
「ってかキスしたり、とかそーゆーの。ドンヘとすんの、イヤじゃない・・・みたい」
どくんどくん。
ヒョクの言葉に鼓動がどんどん早まっていく。

「最初は、誰にでもすんのかと思ってショックだったんだけど・・・」
だからあの翌日は避けてたのか・・・
「う、・・・ごめん」
また一瞬見る。
もしかしてなんかの癖なのかな。
照れてる時の癖だったら嬉しい。
「でも、好きって言ってくれて、俺はどうかなって考えて・・・」

そこで止めないで。
緊張で死にそう。

「友達以上でも、大丈夫かなって・・・思った」

・・・・・・・・ホント?!
思わず俯いてたヒョクの顔を上げさせた。
「それって好きってコトなの?」
若干潤んでる瞳に語りかける。
「う・・・わ、わかんない、けど・・・そんなカンジ」
「なんだよぅ、曖昧だなあ」
といいつつ嬉しい。
甘えてもいいかな、駄目かな。

「さっきドンヘ大好きって言った! もっかいちゃんと言って?」
「え?! いつ?!」
まんまるくなる目が可愛い。
「さっき、俺が風呂から帰って来た時。寝惚けてるかと思ったけど、本音だったんだ!!」
「・・・・・・ぅ・・・」
俺が顔を押さえてるせいで俯けないヒョクは視線だけ逸らす。

「んじゃ、俺が何倍も言うから言って!」
「な、なにを?」
「好きって! ヒョクチェ好き好き、大好き!! ヒョクは?」
「・・・・・・俺、も、・・・す・・き」
真っ赤になって小さく呟くヒョクが愛しすぎて、ぎゅうぎゅう抱きしめた。

「ど、ドンヘ・・・あ、当たってる・・・」
「うん。していい?」
「駄目!」
「なんでー?!」
もう嬉しすぎて突っ走ってしまいたいのに。
「トゥギヒョン、帰ってきてそこで寝てるから・・・」

・・・・・・・マジで?
俺はあっちのベッドに背中を向けてる状態な上、色々とヒョクしか見えてなかったので気づかなかった。
でもまぁいいや、気持ちが繋がったのがなにより幸せだから。
「じゃあ、・・・今度ね?」
すぐそばにあったヒョクの耳にそう吹き込んでみる。
ぴくっと肩を震わせてから、
「・・・・・・・ぅん」
微かな声が答えた。

「あーもぅ!! 好き!めっちゃ好き!!どうしよう?!」
「う、うるさいッ もお寝ろー!!」
だってだって愛しくて苦しいよ。
はしゃぐ俺を真っ赤なほっぺでヒョクがたたく。

「トゥギヒョンいてももういいや!」
「こらーーーー!!」
「お前らうるさーーーーーーーーーーーーーい!!」
「わぁ! ヒョン、起きちゃった?」
「トゥギヒョンごめんなさい! うわ! 痛い痛いー!」
「人の横でどんだけいちゃついてんだ!!」
「トゥギヒョンもヒチョルヒョンとこ行けばいいじゃん」
「駄目ヒョン! ここにいてー!俺襲われるー」
「ヒョクひでぇ!!」

トゥギヒョンまで目を覚ましちゃって。
恋の実った夜は甘い空気はどこへやら、お祭り騒ぎで過ぎていく。
ま、こういう方が俺たちらしいよね。

トゥギヒョンに見張られて、ヒョクの隣で幸せに眠りについた。



 
End...
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