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虹色の瞳の人(藍染惣右介)

※緋宮が死ななかった未来。
 何でも許せる方のみお読みください。


 三番隊の一室で、雛森と吉良が正座で対峙していた。その横で、恋次があぐらをかき、穏やかな笑顔で雛森を見ていた。
「……これで君も副隊長だね、雛森君」
副官章を渡しながら吉良が笑った。雛森も照れながら、腕章を受け取った。
「二人から、ちょっと遅れちゃったけど……」
「でも、いいのかい?五番隊にずっと居たいと思っていたよ、僕は」
「うん。いいの。ケジメ付けなきゃだし。幼なじみを、サポートしたいし」
雛森は副官章を胸に抱き、目をつぶった。恋次は呆れたような顔をして、頭の後ろに両手を回した。
「ま、びっくりだよな。藍染副隊長が結婚したなんて。雛森よく引きこもらなかったな」
「引きこもりなんてしません!」
雛森は恋次をたしなめたが、顔は少し寂しそうだった。
「……最初から、ただの憧れだもん。そりゃあ、聞いた時はちょっとショックだったけど。でも、その時に、私が藍染副隊長に頼りすぎてたって自覚できて………離れてもちゃんとやれるって証明したくて……」
モゴモゴ言い訳する雛森を、恋次も吉良も苦笑いして見て、ハイハイ、と流した。
 その後3人は三番隊舎から出て、十番隊に向かった。
 隊首室をノックすると、まだ声変わりも完了していない、若い声が返事をした。
「日番谷隊長〜、副隊長任命終わりました〜」
恋次が扉を開けると、日番谷冬獅郎が机に座って書類を読んでいた。
 日番谷は書類を捲る手を止め、恋次、吉良、雛森の3人を見た。
「おう。ありがとな。阿散井、吉良」
「どう、シロちゃん。似合う〜?」
雛森が進み出て、腕章を得意げに見せた。そこには、十の字が刻まれていた。日番谷は眉を潜めて雛森を見ると、ため息をついた。
「副官章に似合うも似合わないもねえだろ……ガキかよ」
「あ!ひどーい!!自分の副隊長になんて事を言うの!!」
「ならお前も、シロちゃんってのやめろよ。隊長だぞ、俺は」
日番谷は雛森を通り過ぎ、恋次と吉良の横に来た。
「雛森の世話の礼に何か奢ってやるよ」
「世話って!!もう!!!」
「うるせーな。奢らねえぞ」
「あ、ウソ。ウソだよシロちゃん」
「シロちゃんはやめろ」
「日番谷隊長!!!」
「よし行くぞ」

 雛森の提案で(何で雛森が決めているかも謎だが)4人は人気の甘味屋に来た。店は若い女と男で溢れていた。
「乱菊さーん!」
雛森が手を振りながら向かった先には、前掛けをした店員の松本乱菊がいた。
「あら、雛森じゃなーい!久しぶりねえ!」
乱菊は明るい顔で雛森を迎えた。乱菊の前まで行くと、雛森は左腕を乱菊に見せた。
「じゃーん!!見てください!!私副隊長になりました」
「すごーい!!!頑張ったわねえ!!!今日はいっぱい食べて行きなさい!!奢ってあげる」
乱菊はヨシヨシと雛森の頭を撫でた。
「いいわよね?ギン?」
乱菊が店の奥を見ると、あんみつの飾り付けをしている市丸ギンが、へ?と素っ頓狂な声を出した。
「前に出産費用貯めよ言うたの乱菊やん」
「いーじゃない、雛森の分くらい」
「いいよ。俺が全員分出すから」
雛森の横に日番谷か立ち、乱菊を見上げた。乱菊は今気づいたと言うように、日番谷を見下ろし、笑顔になった。
「あんた子どもなのに、本当しっかりしてるわよね〜」
乱菊は雛森にしたように日番谷の頭を撫でようとしたが、日番谷に振払われた。
 その時厨房からギンがお盆を持って現れ、乱菊に声をかけた。
「ちょお、乱菊。サボっとらんと、あっちのお客さん注文待ってんで」
「あらやだ。ごめんなさーい。今行きますねー」
乱菊は奥の客に謝り、雛森達に手を振って行ってしまった。
 4人が席につきメニューを見ていると、ギンが水を持ってきた。
「ごめんなあ。乱菊誰にでもあんなやから、許したってな」
日番谷の前にそっと干し柿を置きながら、ギンが顔の前で手を立てて謝った。日番谷は、何故干し柿……、とつぶやいていた。
「乱菊さんの予定日はいつですか?」
雛森がギンを見上げて聞いた。
「来年の夏。日番谷君みたいにしっかりした子やといいんやけど、僕と乱菊の子どもやから無理やな」
ギンはケラケラと笑い、4人の注文を聞いて奥に消えていった。
「市丸さんと、奥さんの乱菊さん、かなり霊力ありますよね?」
ギンが去ったあと、吉良が日番谷にこそっと聞いた。
「ああ、まあ、そうだな」
「死神にはならないんスね」
恋次も、奥のギンを見ながら残念そうに言った。死神になったら良い才能が開花しそうなのに、と。
「ええ、二人はこうやって過ごしてる方がお似合いだよ」
雛森が頬に手を当て、力強く言ってのけたが、日番谷は、うわっ、という顔をしていた。
「お前の話と、阿散井の話の意図がちげえよ……」
「え!どういう事シロちゃん!」
「日番谷隊長苦労しそうッスね」
「慣れてる」
「ちょっと!阿散井君!シロちゃん!!!」

続く
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