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親友の好きな人(番外編)

ミミハギ様

 御艇に入隊した年も、3人は浮竹の実家近くの神社で行われる祭に来ていた。
 去年と同じように楽しんだ帰り道、少し回り道して帰ろうと浮竹が二人を誘った。
 「守り神がいるんだ」
そういうと、浮竹は小さな祠を指さして、食べずに取っておいた餅を供えた。
「浮竹君の所の氏神様?」
千草が興味を持ったように祠を覗き込んだ。中には、1つ目の異形な神の像が祀られていた。京楽は少し距離を置いてみている。
「うん。俺は、小さい頃死にかけてさ、一晩で髪の毛がこの通り白くなったんだ。でも、親がこのミミハギ様に願掛けをしてくれて、一命を取り留めたんだ」
「本当にそんな事あるのかね」
半信半疑な京楽を見て、浮竹はハハッと笑った。
「どうかな。でも、当時の小さな因果が全て重なって俺の命は救われたと思うんだ。親の想いも、ミミハギ様への願掛けも、何か一つでも欠けたら助からなかったと思う。だから、ミミハギ様には帰る度にお参りしてるんだ」
「僕は初めて聞いたよ」
「今までは帰ってすぐ来てたから。今年は、時間が無くてさ。付き合ってくれて、ありがとな」
浮竹は立ち上がり、千草や京楽と共にまた歩き出した。
「さっきの神様、一つ目だったわ。何か意味があるの?」
千草が不思議そうに浮竹に尋ねると、浮竹は笑って説明した。
「暗くて分からなかったと思うけど、ミミハギ様は右手の形をしているんだ」
「なんでまた」
「一説には、霊王の右手を祀っているのだと」
浮竹の説明に、京楽が笑いながら浮竹の背中を叩いた。
「ハハハハッ!なら、浮竹の体には霊王が宿っているっていうのかい?凄いじゃないか。霊王様ー、僕にとびきりの美女をくださいー」
「からかうなよ」
ふざけて浮竹に手を合わせる京楽に向かって、浮竹は困ったように笑った。
「でも、霊王の右手なら、浮竹君を死の淵から救ったのも納得できるわ」
「選ばれたんだなぁ、浮竹はきっと」
「選ばれた?」
浮竹は不思議そうに京楽を見た。
「主席卒業が証拠さ。霊王は浮竹が優秀な死神になって、この世界を救う事を分かっていたんじゃない?」
「おおげさな」
「私は、京楽君の説はありえると思うわ」
千草に言われ、浮竹は照れたように頬を掻いた。
「じゃあ、頑張らなきゃなあ」
「僕は浮竹の影で、ひっそりといいとこ取りさせてもらおうかなー」
「私は、二人のサポートに回るわ」
3人の笑い声が夜道に響く。ミミハギ様の祠はひっそりとしていた。
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