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虹色の瞳の人(藍染惣右介)

もしも貴女が生きていたら 2

 吉良が三番隊隊舎に戻ると、隊首室からギターの音が聴こえてきた。隊首室の扉をノックも無しに開けると、ウェーブのかかった金髪長髪の男が
隊長机でギターを弾いていた。
「おかえりイヅル」
「またギターですか、鳳橋隊長」
吉良はいささか呆れた目で、自隊の上司を見た。
「真子が惣右介君の結婚祝いをするって言ってきてね。そこで歌のプレゼントしようと思って」
「歌って……隊長が聴くの、ヘヴィメタルじゃないですか」
「いやちゃんと、ウェディングソングにするよ。それより、イヅルも来るよう言われたんだけど、大丈夫だよね?」
「あ、はい。いつですか?」
吉良は鳳橋から日時を聞くと、執務室に帰っていった。
 窓の外から何やら声がすると思って窓を開けると、檜佐木が走っていた。手にはカメラを構えている。
「狛村さん!写真!!写真撮らせてくださいよ!!!」
檜佐木が構える先には、七番隊副隊長狛村佐陣が檜佐木から逃げていた。素顔を出している。
「断る!!儂は見世物ではない!!!」
「お願いします!!!撮らないと六車隊長に怒られるんスよ!!!」
するとそこに、サングラスにアフロヘアの隊長が現れ、狛村は急いでその男の後ろに回ったが、体は隠れていなかった。
「何してんだ狛村」
「精霊艇通信に載せるだとかで、写真を撮られそうになっております……」
息が上がり、肩を上下させながら、狛村は上司に説明した。
「なんだよそれくらい。撮らせてやれよ」
「いや、あの……見世物になるのは…」
「流石愛川隊長!!!ほら、狛村さん、愛川隊長もそう言ってますし!!!」
羅武を挟んで檜佐木と狛村が牽制し合っていると、二人の女性が近づいてきた。
「何やっとんのあんたら」
「通行の邪魔ですよ」
「あ、矢胴丸と伊勢!二人からも言ってくれよ!!狛村副隊長で表紙飾りたいのに写真撮らせてくれなくてよ!!」
「ヌード?」
「違うわ!!!せっかく鉄笠脱いだから、狛村副隊長の特集組めって六車隊長に言われてよお…」
「鉄笠ついでに全部脱がせるんや?」
「だからちげえよ!!!!何で脱がせる方向に無理矢理持っていくんだよ!!!って、気づいたら狛村さんいねえし!!!」
羅武の後ろがすっからかんなのを見て、檜佐木は頭を抱えた。
「矢胴丸副隊長、私達も急ぎましょう」
「そうやね」
七緒に急かされ、リサと七緒はまた歩き出した。七緒の手には、栗屋の酒饅頭が入った紙袋が握られていた。

 リサと七緒が向かっていたのは、雨乾堂だった。
 二人にお使いを頼んだ京楽は、手に湯呑を持ち、池を眺めながら浮竹と談笑していた。
「日番谷君、まだ慣れないみたいだねえ。隊長職」
「まあ、彼ならすぐに立派な隊長になるさ。お前よりしっかりしている」
「反論出来ない事言わないでよ。それにしても、一心君が人間と結婚したいから隊長辞めるって言い出した時は驚いねえ。彼、今現世かね。生活どうしてるんだろ」
「推測だが、現世には浦原喜助がいるんじゃないか」
「あー、なるほどね。それなら義骸も手に入る訳だ」
「彼も、四楓院と駆け落ちだからな。無茶な恋愛する奴ばかりだ」
「でも、浦原君と夜一ちゃんらしいじゃない。身分の差を無理矢理乗り越えちゃうあたりが」
「ようやく藍染が穏やかな結婚をしてくれたな」
「彼らもいろいろあったんじゃないの?奥さんが、ほら……」
「惣右介の奥さんてどんな人なの?」
簾が上がり、リサと七緒が姿を現した。
「ああ、お使いありがと。酒饅頭あったかい?」
「ありましたよ。今分けますね」
七緒が封を解き、一つ一つ皿に乗せた。リサはお茶を淹れ直していた。
 全員に酒饅頭が行き渡ると、リサが先の話をぶり返した。
「で、惣右介の奥さんがなんやって?」
リサは興味津々と言うようにメガネを光らせた。京楽と浮竹は顔を見合わせ、浮竹が説明役になった。
「藍染副隊長の奥さんは神職でね、死神との結婚はなかなか難しかったんだ」
「まあ、でも、その奥さんがなかなか強い人だったらしく、無理矢理惣右介君と結婚したんだっけ?」
京楽が苦笑いしながら浮竹に振ると、浮竹も笑って頷いた。
「あの方ならやりかねん」
「?浮竹隊長は会った事があるんですか?」
七緒が首を傾げて聞いた。
「ああ、随分昔にな。まだ席官の時だった」
「ちょっと、待って、その人いくつなんやて」
リサも七緒も驚いていると、浮竹と京楽もクツクツ笑った。
「僕らよりずっと年上だよ」
「見た目は、若いまま変わらへんけどな」
大阪訛りの声が聞こえて、入り口を見ると、平子真子が顔を出していた。
「平子隊長。お茶飲みますか?今ちょうど皆で休んでいたんですよ」
「おおきに。よばれるわ」
平子が輪に加わると、七緒が茶を汲みに立ち上がった。
「なんや真子も会った事あるんやね」
「昨日な。惣右介が紹介したい言うて、屋敷に連れてかれたわ」
「今、奥さんの方に住んでいるのかい?」
「そうらしいすわ。毎日はよ帰りたいみたいで、俺にも厳しいねん、アイツ。残業絶対しないマンやぞ、今」
「新婚ですもんね」
平子の前にお茶と酒饅頭を置きながら、七緒が笑った。
「そう言えば、平子隊長はなんの用だったんだ?」
思い出したように浮竹が尋ねた。平子も用を忘れていたらしく、そうやそうや、と膝を打った。
「来週、惣右介の結婚祝いやろ思うてますねや。来てもらえませんか。隊長格全員に声かけてますねや」
「なんや、随分部下思いやないの。真子」
リサが驚いたように、平子を見ながら言った。平子は恥ずかしさか、気まずさか、リサを見ずに茶を飲んだ。
「まあ、喜ばしいやん。アイツが他人に興味持つなんて、初めは思わへんかったし」
「ああ、アンタ初め惣右介嫌いやったもんね」
「嫌いいうか、信用できへんな〜思うてたわ。けど、緋宮さん……奥さんに出会ってから、大分雰囲気変わってな。今じゃ信頼足り得る副隊長や」
平子の優しげな笑みを見て、周りも思わず笑顔になった。
「来週だな。ぜひ行かせてもらうよ」
「僕も」
「おおきに。リサも七緒ちゃんもくるやろ?浮竹さん、申し訳ないけど、海燕にも言うといて貰えます?」
「いや、海燕は……」
「?」
「二人目が、もうすぐなんだ」
「ああ、そらあかんな。じゃあ、あのウルサイ三席の二人で」
浮竹は苦笑いで返した。
 要件を伝え終えると、平子は、ごちそーさん、と言って立ち上がった。
「そういえば、猿垣君は今どうしてるんだい?」
立ち上がった平子に、浮竹が聞いた。
「ああ、マユリの下は絶対嫌や言うて死神辞めてから、日雇いみたいな事しとったらしいけど、今度から甘味屋で働くらしいすわ」
「ひよりが甘味屋」
リサが思わずにやけた。
「何か、そこの奥さんが夏に出産やから〜みたいな事言うてたわ」
「じゃあ今度皆で行ってみようか」
浮竹が言うと、七緒や京楽が苦笑いをした。

 平子が五番隊に戻っている途中、伝令神機が鳴った。
「はいはい。平子隊長ですよー、って惣右介かい。なんや。………ええやないからねたまには出歩いても。お前が早く帰りたいだけやんけ。リア充爆発してまえ」
話している途中で平子はニヤリと笑った。
「そうや、惣右介、お前来週空けとけよ」

ーーーーーー終わりーーーーーー
もしも藍染が謀反を考えなかったら、ギンと乱菊はずっと一緒で、海燕と都さんも死ななくて、ヴァイザードのみんなも御艇にいたんだよなー、というのが見てみたかったんです。
浦原さんと夜一さんは、なんだかんだで現世に行きそうだし、一心さんと真咲さんは意地でも出会っていたと思います。
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