平子編
二人のその後 20
それから2週間後、五番隊執務室に真の姿は無くなっていた
主の居なくなった机だけが、かつてこの部屋にもう一人居た事を証明しているが、引き出しにはもう何も入っていない。
窓の外では、訓練場で集団訓練が行われているが、指揮官は真ではなく、真の仕事を引き継いだ近藤が務めていた。訓練は、真がいた頃とスタイルは変われど、士気や内容の密度は変わっていなかった。
雛森は相変わらずキチンと仕事をこなしているが、平子は椅子の背に肘を乗せてボンヤリと外を見ていた。
真が副隊長になって今日でちょうど1週間だ。
就任当日、五番隊に姿を見せた真の髪は、うなじの上までバッサリと切られていた。
それを見た時は、平子も雛森もあまりの変わりように声が出なかった。
「…変…ですかね?」
風通しの良くなったうなじを触りながら、真は恥ずかしそうに二人に尋ねた。
顔が小さく、パーツの整った真に短い髪は似合ってはいたが、真の黒く艶めいた髪が好きだった平子は、自分でも驚くほどショックを受けていた。
「カッコいいですー!似合っていますよ、真さん!」
声の出ない平子に代わって真を褒めたのは雛森で、女の真にカッコいいと言ったのだ。しかも、真もまんざらでも無さそうだ。
いやいや待て待て、お前カッコよくてええんかて………。
「どういう心境なんや、それ。うちに来る前も、髪型変えたよな?」
髪型なんて自由でいいのに、長い黒髪に未練の残る平子は、思わず変な事を聞いてしまった。
真は少し困ったような、照れたような顔をして、髪を耳にかけた。
「…………昔は、周りに何か言われるのが嫌で髪を手入れできなくて、ひっつめていたんですが、五番隊に来る事になって、十一番隊の頃の自分と決別する為に、髪をおろしたんです。もう女を封印するのはやめようって。対局を目指したんだと思います……」
真はまたうなじを触って、短くなった髪を確認した。
「でも、改めて考えたら、ずっと十一番隊に縛られてたのかなって思って……そういうの、全部取り払いたくて。自分の好きな…自分に合うものを探したくて」
そうか、真はようやく過去の呪縛から離れて自由になったんやな。
そう思うと、未練なんて感じた自分が情けなく感じて、平子は申し訳無さそうに頭を掻いた。
「せか。うん。似おうてるよ、短いのも」
平子が笑顔で返すと、真もようやく笑顔になった。
副隊長就任の儀の為にやってきた一角と恋次も、最初に真を見た時は驚いてはいたが、似合うと褒めていた。
副官章を受け取った後は、乱菊やら射場やら夜一やらが来て、皆で真の父親の墓の前で宴会をした。夜一の設計により、かなり広大な墓になっていた。平子にとっては、初めての墓参りだった。
真の義理の父親と言うのもあり、平子は皆が見ていない所で、そっと手を合わせた。
そこから1週間、真とは全く会えていなかった。真は、新しい指導計画を作りたいとかなんとかで、夜も自室で仕事をしており、平子が会いに行くことも無かった。
今まではほぼ毎日顔を合わせていたのに、こうも会わなくなると、何とも喪失感が凄い。しかも、真の噂ばかりは届く。本人はいないのに。
そろそろ会ってもいいだろうか、と考えていると、平子の伝令神機が鳴った。
その少し前、拳西と檜佐木は八番隊に向かっていた。
新しく副隊長になった真のインタビューを通信に載せる為に、檜佐木はマイクと録音機材を、拳西はメモを持っていた。
今まで編集の仕事を全くしなかった拳西だが、総務官の監査が入り、厳重注意を受けてからは手伝うようになった。
二人が執務室の前まで来ると、部屋の中から悲鳴が聞こえてきた。
「キャーーーーーー!!!!!!!」
その声は紛れもない真のもので、拳西と檜佐木はノック無しで急いでドアを開けた。
「やめてください隊長!!!」
二人の視線の先には、机にうつ伏せで上半身を倒す真に、その上に乗っかり真の着物を引っ張るリサがいた。リサに引っ張られたせいで真の着物は崩れ、左肩が見えている。真は体を抱きかかえるように着物を押さえているが、羞恥心からか顔が真っ赤で、涙目になりながら必死に抵抗していた。
誰がどう見ても、リサが真を襲っているようにしか見えない………。
「何やってんだリサお前!!!!!!!!」
拳西が怒鳴ってリサに駆け寄るが、リサは拳西に目もくれず、真を引っ張り続けている。
「やめてほしかったら早くそれかえしゃあ!!!あたしのやよ!!!」
「だからまずその書類終わらせてください!!!明日厳守って総務から言われてるんですから!!!」
「やからそれ読んでからやるって言っとるやん!!!」
「就業時間中にこんなもの読まないでください!!!」
二人のやり取りで、拳西は何が起こっているか理解し、ため息をつきながらリサを真から離した。
「………霧島の言うとおりだ。リサ、仕事中にエロ本読むな」
ようやくリサから解放された真は、慌てて着物を直して拳西にお礼を言った。
「え!?あれ?!」
変な声が聞こえたと思って、3人がドアの方を見ると、焦った顔で伝令神機を耳に当てる檜佐木が居た。
「平子隊長呼んじまった………」
「リィィィィィィィサァァァァァァァァ!!!!!お前真に何すんねん!!!!!」
檜佐木から連絡を受けた平子が、血相を変えて八番隊執務室に入ると、ソファに座ってふんぞり返るリサと、その隣で頭を抱えて俯く真と、向かいのソファに無言で座る拳西と、申し訳無さそうにする檜佐木がいた。
「………すみません平子隊長…。俺の早とちりで……」
檜佐木が平子に事情を説明したが、平子の怒りは収まらなかった。
「そんなん言うてもセクハラには変わりないやんけ!!!!」
「うっさいなあ。真があたしの本奪うもんでやん」
「隊の風紀を乱すものを持ってこないでくださいよ」
「違うよ真。エロ本が風紀を乱すんやない。弱い心が風紀を乱すんやよ」
「そんな良い話みたいに言っても騙されませんからね。というか、1日体験の時は読んで無かったじゃないですか。そこは本当に騙されました」
不満げに言う真を横目で見て、リサは鼻をフンッと鳴らした。
「それはアンタの情報収集不足やね。あたしの店の事皆知っとったよ。男共は」
リサの話に真が愕然とすると、男3人はサッと目をそらした。
「何で教えてくれなかったんですか…!!!」
真が平子に切実に訴えても、平子は目を泳がして言葉を濁すだけで、ハッキリとは言わなかった。
「言えるわけ無いよなあ?真子?あたしの店で、何を買っとったかなんて、なあ…?」
「リサーーーーー!!!!!!!真はそんな目で見んな!!!今は買っとらへんわ!!!」
「へえ………今は…………」
「おい。それより早く終わらしてえから、真子は帰れよ。リサは仕事でもしてろ」
「この状況でよく言えますよね、隊長…………」
「真!聞け!!付き合う前やからな!!」
「………ふぅん…………」
周知の事実になったところで、平子の一方通行感はあまり変わらないのであった。
おわり
ーーーーーおまけーーーー
「ちなみに、真子が巨乳ギャルものから黒髪ロングものにシフトチェンジした時点で、あたしは気づいたよ。真子に好きな女ができたこと」
「!?なっ…何でいうねん!!!!リサ!!!!!お前!!!!!!」
「……………………うわっ」
「うわって何やねん真!!!!うわって!!!!」
「真を初めて見た瞬間にピンッときたわ」
「ややややややめえ、お前、それ以上何も言うな……………」
「ひよりに言ったらむせる程笑っとった」
「何でよりにもよってひよりに言うんや!!!!悪意しか無いやん!!!!!」
「ラブは腹筋が死んだらしい」
「リサお前覚えとけよ!!!!!絶対許さへんからな!!!!!」
「へー……平子隊長そういう趣味だったんスか………」
「お前は黙っとれ修兵!」
「金髪巨乳モノ………」ボソッ
「修兵。お前、分かりやす過ぎるだろ……」
「ちが…あれは、その、頼まれて……」
「誰にだよ」
「……射場さん………」
「射場は自分で買いにくるよ」
「あー!知りたくなかった!!!先生のそんなの!!」
「真、俺の時と反応違うやん………」
「斑目と買いにくる」
「もうまともに二人の事見れない!!!最悪だ」
「真、男はなあ、そういう生き物なんや。エロに興味のない男はおらんのやよ」
「女のお前が1番興味あるけどな」
それから2週間後、五番隊執務室に真の姿は無くなっていた
主の居なくなった机だけが、かつてこの部屋にもう一人居た事を証明しているが、引き出しにはもう何も入っていない。
窓の外では、訓練場で集団訓練が行われているが、指揮官は真ではなく、真の仕事を引き継いだ近藤が務めていた。訓練は、真がいた頃とスタイルは変われど、士気や内容の密度は変わっていなかった。
雛森は相変わらずキチンと仕事をこなしているが、平子は椅子の背に肘を乗せてボンヤリと外を見ていた。
真が副隊長になって今日でちょうど1週間だ。
就任当日、五番隊に姿を見せた真の髪は、うなじの上までバッサリと切られていた。
それを見た時は、平子も雛森もあまりの変わりように声が出なかった。
「…変…ですかね?」
風通しの良くなったうなじを触りながら、真は恥ずかしそうに二人に尋ねた。
顔が小さく、パーツの整った真に短い髪は似合ってはいたが、真の黒く艶めいた髪が好きだった平子は、自分でも驚くほどショックを受けていた。
「カッコいいですー!似合っていますよ、真さん!」
声の出ない平子に代わって真を褒めたのは雛森で、女の真にカッコいいと言ったのだ。しかも、真もまんざらでも無さそうだ。
いやいや待て待て、お前カッコよくてええんかて………。
「どういう心境なんや、それ。うちに来る前も、髪型変えたよな?」
髪型なんて自由でいいのに、長い黒髪に未練の残る平子は、思わず変な事を聞いてしまった。
真は少し困ったような、照れたような顔をして、髪を耳にかけた。
「…………昔は、周りに何か言われるのが嫌で髪を手入れできなくて、ひっつめていたんですが、五番隊に来る事になって、十一番隊の頃の自分と決別する為に、髪をおろしたんです。もう女を封印するのはやめようって。対局を目指したんだと思います……」
真はまたうなじを触って、短くなった髪を確認した。
「でも、改めて考えたら、ずっと十一番隊に縛られてたのかなって思って……そういうの、全部取り払いたくて。自分の好きな…自分に合うものを探したくて」
そうか、真はようやく過去の呪縛から離れて自由になったんやな。
そう思うと、未練なんて感じた自分が情けなく感じて、平子は申し訳無さそうに頭を掻いた。
「せか。うん。似おうてるよ、短いのも」
平子が笑顔で返すと、真もようやく笑顔になった。
副隊長就任の儀の為にやってきた一角と恋次も、最初に真を見た時は驚いてはいたが、似合うと褒めていた。
副官章を受け取った後は、乱菊やら射場やら夜一やらが来て、皆で真の父親の墓の前で宴会をした。夜一の設計により、かなり広大な墓になっていた。平子にとっては、初めての墓参りだった。
真の義理の父親と言うのもあり、平子は皆が見ていない所で、そっと手を合わせた。
そこから1週間、真とは全く会えていなかった。真は、新しい指導計画を作りたいとかなんとかで、夜も自室で仕事をしており、平子が会いに行くことも無かった。
今まではほぼ毎日顔を合わせていたのに、こうも会わなくなると、何とも喪失感が凄い。しかも、真の噂ばかりは届く。本人はいないのに。
そろそろ会ってもいいだろうか、と考えていると、平子の伝令神機が鳴った。
その少し前、拳西と檜佐木は八番隊に向かっていた。
新しく副隊長になった真のインタビューを通信に載せる為に、檜佐木はマイクと録音機材を、拳西はメモを持っていた。
今まで編集の仕事を全くしなかった拳西だが、総務官の監査が入り、厳重注意を受けてからは手伝うようになった。
二人が執務室の前まで来ると、部屋の中から悲鳴が聞こえてきた。
「キャーーーーーー!!!!!!!」
その声は紛れもない真のもので、拳西と檜佐木はノック無しで急いでドアを開けた。
「やめてください隊長!!!」
二人の視線の先には、机にうつ伏せで上半身を倒す真に、その上に乗っかり真の着物を引っ張るリサがいた。リサに引っ張られたせいで真の着物は崩れ、左肩が見えている。真は体を抱きかかえるように着物を押さえているが、羞恥心からか顔が真っ赤で、涙目になりながら必死に抵抗していた。
誰がどう見ても、リサが真を襲っているようにしか見えない………。
「何やってんだリサお前!!!!!!!!」
拳西が怒鳴ってリサに駆け寄るが、リサは拳西に目もくれず、真を引っ張り続けている。
「やめてほしかったら早くそれかえしゃあ!!!あたしのやよ!!!」
「だからまずその書類終わらせてください!!!明日厳守って総務から言われてるんですから!!!」
「やからそれ読んでからやるって言っとるやん!!!」
「就業時間中にこんなもの読まないでください!!!」
二人のやり取りで、拳西は何が起こっているか理解し、ため息をつきながらリサを真から離した。
「………霧島の言うとおりだ。リサ、仕事中にエロ本読むな」
ようやくリサから解放された真は、慌てて着物を直して拳西にお礼を言った。
「え!?あれ?!」
変な声が聞こえたと思って、3人がドアの方を見ると、焦った顔で伝令神機を耳に当てる檜佐木が居た。
「平子隊長呼んじまった………」
「リィィィィィィィサァァァァァァァァ!!!!!お前真に何すんねん!!!!!」
檜佐木から連絡を受けた平子が、血相を変えて八番隊執務室に入ると、ソファに座ってふんぞり返るリサと、その隣で頭を抱えて俯く真と、向かいのソファに無言で座る拳西と、申し訳無さそうにする檜佐木がいた。
「………すみません平子隊長…。俺の早とちりで……」
檜佐木が平子に事情を説明したが、平子の怒りは収まらなかった。
「そんなん言うてもセクハラには変わりないやんけ!!!!」
「うっさいなあ。真があたしの本奪うもんでやん」
「隊の風紀を乱すものを持ってこないでくださいよ」
「違うよ真。エロ本が風紀を乱すんやない。弱い心が風紀を乱すんやよ」
「そんな良い話みたいに言っても騙されませんからね。というか、1日体験の時は読んで無かったじゃないですか。そこは本当に騙されました」
不満げに言う真を横目で見て、リサは鼻をフンッと鳴らした。
「それはアンタの情報収集不足やね。あたしの店の事皆知っとったよ。男共は」
リサの話に真が愕然とすると、男3人はサッと目をそらした。
「何で教えてくれなかったんですか…!!!」
真が平子に切実に訴えても、平子は目を泳がして言葉を濁すだけで、ハッキリとは言わなかった。
「言えるわけ無いよなあ?真子?あたしの店で、何を買っとったかなんて、なあ…?」
「リサーーーーー!!!!!!!真はそんな目で見んな!!!今は買っとらへんわ!!!」
「へえ………今は…………」
「おい。それより早く終わらしてえから、真子は帰れよ。リサは仕事でもしてろ」
「この状況でよく言えますよね、隊長…………」
「真!聞け!!付き合う前やからな!!」
「………ふぅん…………」
周知の事実になったところで、平子の一方通行感はあまり変わらないのであった。
おわり
ーーーーーおまけーーーー
「ちなみに、真子が巨乳ギャルものから黒髪ロングものにシフトチェンジした時点で、あたしは気づいたよ。真子に好きな女ができたこと」
「!?なっ…何でいうねん!!!!リサ!!!!!お前!!!!!!」
「……………………うわっ」
「うわって何やねん真!!!!うわって!!!!」
「真を初めて見た瞬間にピンッときたわ」
「ややややややめえ、お前、それ以上何も言うな……………」
「ひよりに言ったらむせる程笑っとった」
「何でよりにもよってひよりに言うんや!!!!悪意しか無いやん!!!!!」
「ラブは腹筋が死んだらしい」
「リサお前覚えとけよ!!!!!絶対許さへんからな!!!!!」
「へー……平子隊長そういう趣味だったんスか………」
「お前は黙っとれ修兵!」
「金髪巨乳モノ………」ボソッ
「修兵。お前、分かりやす過ぎるだろ……」
「ちが…あれは、その、頼まれて……」
「誰にだよ」
「……射場さん………」
「射場は自分で買いにくるよ」
「あー!知りたくなかった!!!先生のそんなの!!」
「真、俺の時と反応違うやん………」
「斑目と買いにくる」
「もうまともに二人の事見れない!!!最悪だ」
「真、男はなあ、そういう生き物なんや。エロに興味のない男はおらんのやよ」
「女のお前が1番興味あるけどな」
