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平子編

二人のその後 18

 今度は無事昼ごはんを食べ終えた真とリサは、三番隊にいた。
 苛つくリサの前で、ローズが困ったように説明していた。
「僕から注意もするし、処罰が決まったらまた連絡するから、それじゃ駄目なのかい?リサ」
「それは駄目や無い。あたしが苛ついとるのはアンタの態度やわ、ローズ。アンタがピシッとしんから、上を舐めるんやよ!」
「そんな事言ったって………」
「次なんかあったら、アンタのせいやでね!」
真と吉良は二人から離れて、リサの怒りが収まるのを待った。
「ごめん、あの日隠し撮りされてるの気づかなくて……」
「いえ、私も気づかなかったので………」
「霧島君は気づかなくても仕方ないよ。あんな状態だったし」
吉良は思い出したらしく、口元を拳で隠した。それに真は気づいたものの、黙ってやり過ごした。
「それにしても、平子隊長のファンなんてね」
「世界は広いですよね」
真の反応に、吉良は返答できずに口をつぐんだ。
 前に二人が付き合っているとかどうとかの噂が流れたが、やはり付き合ってはいないのか?
 しばらくして、言いたい事を言い終えたリサがようやくローズから離れ、真を連れて部屋から出て行った。
「お疲れ様です、隊長。大変でしたね」
「リサ、機嫌悪かったねえ。何かあったのかな」
ローズは脱力したように頬杖をつき、ため息をついた。
 まあ、リサはサッパリしてるからいいけど…。真子はどうするのかなあ、ファンの子達…。

 午後からはリサと一緒に事務仕事に時間を使った。副隊長仕事といっても、今までやってきた事とあまり変わらず、難なくできた。
 リサは平子や更木みたいなサボり癖がある訳では無く、ちょくちょく休憩を挟みながら自分のペースで仕事を進めていた。
 終業時刻が近づくと、リサは真を誘って隊舎を散歩しに行った。所々で話しかけられ、散歩はなかなか進まなかったが、どの場所でもリーダーと思われる人がいて、下の者をまとめていた。真が隊士達に囲まれている間に、リサがリーダーと話しているのが目に入った。
 「毎日隊舎を回っているんですか?」
 並んで歩きながら、真はリサに質問をした。リサは真の方は見ず、真っ直ぐ前を見て歩き続けた。
「そうやね。よっぽど何か無い限りは」
「部下と話すためですか?」
「…昔の上司がやっとったから、何となく始めたんやけど、やってみるといいもんやよ」
昔の上司といえば、リサは100年前に現総隊長京楽の副官だったんだと、平子から聞いたのを思い出した。
 総隊長から、何を学んでいたんだろう…。
「京楽総隊長は、昔から慕われていたんですね」
「昔からタダのエロオヤジやよ」
「アハハ、仲が宜しかったんですね」
真が笑うと、リサは横目で真を見た。
「真とも、仲良くなれると思うよ」
リサは少しだけ笑って、また前を向いて歩いて行った。真は何となく照れて、返事ができないまま、リサの少し後ろを歩いた。
 隊舎を一通り歩いて回ると、リサは真を門まで送ってくれた。
「今日はここまででええよ。お疲れ様」
「はい。1日、ありがとうございました」
「今日1日考えて、真子とも相談して決めてね」
「はい」
「私としては、本当に来てほしいけど」
真っ直ぐ真を見てそう言うリサの目は強くて、真はまた少し照れた。なんというか、リサはカッコいい女性だと思った。
 真は改めてリサにお礼を言うと、五番隊に帰って行った。

 真の心中はもう決断していた。八番隊で、リサの元で、新しく学び直そう、と決めた。
 自分は教育を担いたいという気持ちは変わらない。副隊長になったら、教育をする者を教育したい。
 新しい目標を携え、真は平子に気持ちを伝えようと執務室に向かっていた。
 だが、執務室に着く前から、怒鳴り声のようなやかましさが真に届いた。執務室のドアの前に立つと、その声はいよいよハッキリと聞こえた。
 真は心配になり、急いでドアを開けた。執務室には、砕蜂、夜一、射場が平子に詰め寄っていた。雛森が止めようとはしているが、砕蜂は平子の胸ぐらを掴み、今にも斬り掛かりそうな雰囲気だった。
「何をしてるんですか!」
真は入口で叫ぶと、急いで砕蜂と平子の間に割って入った。
「霧島!こいつに誑かされたのだな!何もされていないか!?」
「しゃーから何も無い言うとるやろ!CD貸しただけや!!」
「うるさい!!貴様に聞いてない!!霧島、どうなんだ!!」
「何の事ですか…」
何となく予想はついた。昼休みにあの女が叫んだ事が広まったのだろう。大方、真に目をかけているこの3人が真偽の程を確かめに来た、というところか…。
「平子隊長が、自分の隊の女を自宅に連れ込じょるっちゅう噂を聞いたんじゃけえ。詳しく聞いたら霧島じゃいうけん。確かめに来たんじゃ」
「どうなんだ、霧島」
射場と砕蜂が真を見据えた。夜一は脇で黙って真を見ている。雛森はオロオロして、真と平子と他3人を順番に見ていた。真の後ろにいる平子の表情は見えないが、ただ黙っていた。
「そんなの………あなた達には関係無いじゃないですか…何で平子隊長にこんな事するんですか」
「じゃがお前の身に何かあったら…」
「……あったら何なんですか?自衛ぐらいできます!それとも何ですか?私は男性の部屋に上がるのにあなた達の許可がいるんですか!?」
ここ数日の鬱憤が爆発し、真は声を張り上げて砕蜂と射場に怒りをぶつけた。
 二人とも、まさか真が怒るとは思っていなかったらしく、黙って体を硬直させたが、砕蜂がすぐに気を取り直し、真に語りかけた。
「わ、私達はただお前が心配で……万が一何かあってからでは……」
「そうじゃ霧島、お前は娘みたいなもんじゃし、軽く扱われるのは……」
真をまるで子どものように扱う二人を見て、とうとう真の堪忍袋の緒が切れた。
「私の好きな人は私が決める!!!あなた達じゃない!!!」
その一声に、部屋の空気が凍りついた。後ろにいる平子が何か言おうとしたが、真の声がそれをかき消した。
「あなた達が平子隊長をどう見てるかは知りませんけど、この人はずっと私を支えてくれて、私が今も死神を続けられているのは平子隊長がいたからだ!!私の気持ちを蔑ろにする事は今まで一回も無かったし、私はこの人を心から信用してる!!その人を悪く言われたら、私だって黙ってない!!!」
「真!!!!!」
平子の声で真は我に返り、やってしまったと思って口をつぐんだ。振り向いて平子を見ると、怒ってはいなさそうだったが、疲れたような顔をしていた。
 平子は一回ため息をついてから、真の頭に手を置き、グワングワン回した。真は気まずそうに俯き、平子が手を動かすのにされるがまま、頭を動かした。
「苦労が水の泡やんけ」
「す、すみません…………」
関係を認めた二人を見て、砕蜂も射場も顔が青くなった。
「ほ、本当なんけ………ボン…………」
「せやで。俺ら両想い。しゃーから、コイツが嫌がる事は何もしとらんつもりやし、もうこれ以上詮索する必要は無いやろ」
「平子、貴様………」
「俺らかて、立場上仕方無しに隠しててん。こうなるん分からん程馬鹿やないわ。せやから、もうほっといてや。俺もコイツも、疲れたわ」
平子は砕蜂と射場を冷めた目で睨み、二人を黙らせた。
 砕蜂も射場も引くに引けず沈黙が続いた時、夜一がポンッ!と手を叩いた。
「宴をしようかの!」
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