平子編
二人のその後 11
リサが戻って来る間、真と平子は他の4人に混ざって席について待っていた。
やはり隊長格を長く務めているだけあって、真にも平子にもアレコレ聞いてこず、ただ黙っていてくれる事を了解してくれた。
「ゆっくり考えりゃええ。覚悟も無く副官になりゃ、それの方が迷惑じゃからの」
「どっちに決めようと、真がしっかり考えればそれでいいのよ」
射場と乱菊に励まされ、真は胸が温かくなった。その間も、平子はずっと不機嫌だった。
しばらくしてから、ようやくリサが戻って来たが、円乗寺の姿は無かった。
「円乗寺は?」
「帰らせた」
平子の質問にリサがサラリと答え、真面目な顔つきで真の横に座った。
「悪かったね。うちの三席が。ちゃんと教育しなおすで、うちの隊の事悪く思わんとって。あんなのばかりや無いから」
「矢胴丸隊長が気にされる事じゃ……。すみません、お休み中でしたのに、出てきていただいて」
「ええよそれは。それより、夕飯は食べた?円乗寺に請求するで、好きなの食べてええよ。そこの人らあも、口止め料に奢ったげる」
リサの申し出に皆が喜んだが、平子は浮かない顔で頬杖をついていた。
帰りたそう…………。
しかし真が断れない為、一人帰っても意味の無い平子は、結局その場に居ることにした。
リサは真が思っていたより喋る人だった。淡々としているが、人見知りはせず、誰にでも話を振った。
周りをよく見て、グラスが空きそうならメニューを渡し、皿が空けば引いて重ねた。
一方で平子は割り切ったらしく、知らないうちに機嫌も直って、会話を楽しんでいた。
「真は酒が飲めんのなら、甘酒もだめなん?」
メニュー表を見ながら、リサが真に聞いてきた。
「飲んだこと無いので、なんとも…」
「そうよね。真、正月の甘酒も飲まないもんね」
「飲んでみる?」
「え」
「いーじゃーん!酒飲んでる気分になれるかもよ?」
「甘酒ってアルコール入ってないよね?」
「酒粕のはあかんけど、聞いてみよか」
リサが店員を呼んで、店の甘酒が酒粕から作られているかどうかを確認してから、甘酒を頼んでくれた。
「霧島、一気に飲むなよ。怖いから」
檜佐木が心配そうに真に釘をさした。
「ほうじゃ。最初は1滴から飲めよ」
「駄目そうなら、飲まなくていいからね、霧島君」
「先ず匂いからやな」
たかが甘酒でも、真が飲むとなると皆戦々恐々としていた。
リサ以外は、お猪口1杯で真が意識を失うのを見ているからだ。ならなぜ飲ませるんだ、とも思ったが、真がどこまでがセーフか知りたい興味もあった。
甘酒が到着すると、真は杯を持って匂いを嗅いだ。
「……アルコールは、無い、かな?」
「どれどれ。嗅がせて」
乱菊にも嗅いでもらい、アルコールが無いのを確認すると、真は杯に口をつけて、舌の先で少しだけ舐めた。
リサ以外全員が固唾を飲んで見守っていると、真はしばらく考えた後、杯を傾けて甘酒を口にふくみ、ゴクリの飲み込んだ。
「…………美味しい」
甘酒を飲んでも、別段変わりない真を見て、皆はホッと胸を撫でおろした。
「真が…真が………酒と名のつくものを飲めたのね……!!」
何故か乱菊が感極まり、真に抱きついて喜びを体で表現した。
「真と酒は飲めないって諦めてたから、嬉しい!!」
「アハハ。私も思った」
「今日は霧島の酒解禁記念じゃな」
皆は酒を、真は甘酒を飲みながら、和気あいあいと話ははずんだ。
「そういえば、真は前は十一番隊やったんやって?」
「はい、そうです」
何故五番隊に行ったのか、とリサが聞かないか、全員が心配して動きを止めた。
「更木はどうなの。あんたにとって」
予想とは違った質問にとりあえずホッとしたものの、皆興味深そうに真を見た。
「更木隊長はですね…」
真が更木を何と言うか、平子は聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちだった。
「あんなふうになれたらなあ…と思います。憧れです」
「強くなりたいって事?」
「それもですけど、更木隊長はシンプルじゃないですか。言葉が悪いから嫌う人もいるけど、更木隊長は誰も気にしないし、戦い以外をごちゃごちゃ考えないし……」
「霧島君は、そうはならなくていいと思うけどな……」
吉良が思わず気持ちを言葉にすると、真はありがとうございます、とお礼を言った。
「無いものねだりなんですけどね。でも、やっぱり持論を地でいく更木隊長は憧れますよ」
「分かるぞ。儂もそうじゃけえ」
ですよね、と真と射場が笑いあった。それが平子には少し面白くない。
今のお前の隊長は俺やぞ………。
「まあでも、隊長全員が更木隊長だったら回りませんからね。平子隊長の所に来れたのは、視野を広げる良い勉強になりました」
真はリサに微笑みながら、平子を褒めた。普段人前で平子を褒めない真の珍しい姿に、平子がちょっと動揺した。
「平子隊長は、本当に部下の事をよく見ているんですよ。地頭が良いので、個性をすぐに見抜いて適材適所で人を活かす事に長けてます。そんなの、やろうと思って出来る事じゃないですよね。毎日側にいられて、学ぶ事が沢山あるんです」
「お、おい、真、お前どうしたんや……」
平子が話しかけても真はニコニコしたまま、止まらなかった。
「普段はおちゃらけていますが、それが部下を近づきやすくさせるんですよね。隊長と隊士の距離が近いのは、やっぱり平子隊長と桃さんの人柄だと思います。距離が近いと言えば乱菊もそうなんですけど、乱菊も平子隊長に負けず劣らず人の事をよく見てて、元気が無いとかそういうの直ぐ気づくんですよ。見かけだけじゃなくて、中身もキレイなのが乱菊の魅力でして………」
「ちょっと真、おかしいわよアンタ!」
「酔っとる!!コイツ酔っとるぞ!!!」
「水じゃ!!吉良!!水もってこい!!!」
「ちょっと待ってください。乱菊の魅力についてちゃんと聞いてください。乱菊程の女性は滅多にいないんですよ。なんでかって言うと…」
「落ち着け霧島!乱菊さんの魅力は分かったから!!!」
「いや。あなたはまだ全然分かっていないんですよ。檜佐木副隊長」
「甘酒で酔って饒舌な褒め上戸になるとかウケる」
「リサ!笑っとらんと、水飲ませえ!!いつ倒れるか分からんぞ!!」
「水!!水ですよ!!!」
吉良がピッチャーで水を貰ってきて、コップについで真に渡すも、真は怪訝な顔をするだけで口をつけようとしなかった。
「ちょっと全員席につきましょう。私は大丈夫ですから」
「どこがやねん。はよ水飲めボケ」
「はーっしょうがないな」
見かねたリサがコップの水を口に含んだと思ったら、真の顔を両手で押えて真に口をつけた。
「なっ!!!リサ!!?」
「何しちょるんですかぁ!!!!矢胴丸隊長!!!」
喚く男達を尻目に、リサは真の口内に水を流し込み、真が飲み込むのを確認して、ようやく口を離した。
リサは涼しい顔で口を拭い、真は放心状態で固まっていた。
全員が、目の前の光景に意識を奪われ、シャッター音に気づけなかった。
リサが戻って来る間、真と平子は他の4人に混ざって席について待っていた。
やはり隊長格を長く務めているだけあって、真にも平子にもアレコレ聞いてこず、ただ黙っていてくれる事を了解してくれた。
「ゆっくり考えりゃええ。覚悟も無く副官になりゃ、それの方が迷惑じゃからの」
「どっちに決めようと、真がしっかり考えればそれでいいのよ」
射場と乱菊に励まされ、真は胸が温かくなった。その間も、平子はずっと不機嫌だった。
しばらくしてから、ようやくリサが戻って来たが、円乗寺の姿は無かった。
「円乗寺は?」
「帰らせた」
平子の質問にリサがサラリと答え、真面目な顔つきで真の横に座った。
「悪かったね。うちの三席が。ちゃんと教育しなおすで、うちの隊の事悪く思わんとって。あんなのばかりや無いから」
「矢胴丸隊長が気にされる事じゃ……。すみません、お休み中でしたのに、出てきていただいて」
「ええよそれは。それより、夕飯は食べた?円乗寺に請求するで、好きなの食べてええよ。そこの人らあも、口止め料に奢ったげる」
リサの申し出に皆が喜んだが、平子は浮かない顔で頬杖をついていた。
帰りたそう…………。
しかし真が断れない為、一人帰っても意味の無い平子は、結局その場に居ることにした。
リサは真が思っていたより喋る人だった。淡々としているが、人見知りはせず、誰にでも話を振った。
周りをよく見て、グラスが空きそうならメニューを渡し、皿が空けば引いて重ねた。
一方で平子は割り切ったらしく、知らないうちに機嫌も直って、会話を楽しんでいた。
「真は酒が飲めんのなら、甘酒もだめなん?」
メニュー表を見ながら、リサが真に聞いてきた。
「飲んだこと無いので、なんとも…」
「そうよね。真、正月の甘酒も飲まないもんね」
「飲んでみる?」
「え」
「いーじゃーん!酒飲んでる気分になれるかもよ?」
「甘酒ってアルコール入ってないよね?」
「酒粕のはあかんけど、聞いてみよか」
リサが店員を呼んで、店の甘酒が酒粕から作られているかどうかを確認してから、甘酒を頼んでくれた。
「霧島、一気に飲むなよ。怖いから」
檜佐木が心配そうに真に釘をさした。
「ほうじゃ。最初は1滴から飲めよ」
「駄目そうなら、飲まなくていいからね、霧島君」
「先ず匂いからやな」
たかが甘酒でも、真が飲むとなると皆戦々恐々としていた。
リサ以外は、お猪口1杯で真が意識を失うのを見ているからだ。ならなぜ飲ませるんだ、とも思ったが、真がどこまでがセーフか知りたい興味もあった。
甘酒が到着すると、真は杯を持って匂いを嗅いだ。
「……アルコールは、無い、かな?」
「どれどれ。嗅がせて」
乱菊にも嗅いでもらい、アルコールが無いのを確認すると、真は杯に口をつけて、舌の先で少しだけ舐めた。
リサ以外全員が固唾を飲んで見守っていると、真はしばらく考えた後、杯を傾けて甘酒を口にふくみ、ゴクリの飲み込んだ。
「…………美味しい」
甘酒を飲んでも、別段変わりない真を見て、皆はホッと胸を撫でおろした。
「真が…真が………酒と名のつくものを飲めたのね……!!」
何故か乱菊が感極まり、真に抱きついて喜びを体で表現した。
「真と酒は飲めないって諦めてたから、嬉しい!!」
「アハハ。私も思った」
「今日は霧島の酒解禁記念じゃな」
皆は酒を、真は甘酒を飲みながら、和気あいあいと話ははずんだ。
「そういえば、真は前は十一番隊やったんやって?」
「はい、そうです」
何故五番隊に行ったのか、とリサが聞かないか、全員が心配して動きを止めた。
「更木はどうなの。あんたにとって」
予想とは違った質問にとりあえずホッとしたものの、皆興味深そうに真を見た。
「更木隊長はですね…」
真が更木を何と言うか、平子は聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちだった。
「あんなふうになれたらなあ…と思います。憧れです」
「強くなりたいって事?」
「それもですけど、更木隊長はシンプルじゃないですか。言葉が悪いから嫌う人もいるけど、更木隊長は誰も気にしないし、戦い以外をごちゃごちゃ考えないし……」
「霧島君は、そうはならなくていいと思うけどな……」
吉良が思わず気持ちを言葉にすると、真はありがとうございます、とお礼を言った。
「無いものねだりなんですけどね。でも、やっぱり持論を地でいく更木隊長は憧れますよ」
「分かるぞ。儂もそうじゃけえ」
ですよね、と真と射場が笑いあった。それが平子には少し面白くない。
今のお前の隊長は俺やぞ………。
「まあでも、隊長全員が更木隊長だったら回りませんからね。平子隊長の所に来れたのは、視野を広げる良い勉強になりました」
真はリサに微笑みながら、平子を褒めた。普段人前で平子を褒めない真の珍しい姿に、平子がちょっと動揺した。
「平子隊長は、本当に部下の事をよく見ているんですよ。地頭が良いので、個性をすぐに見抜いて適材適所で人を活かす事に長けてます。そんなの、やろうと思って出来る事じゃないですよね。毎日側にいられて、学ぶ事が沢山あるんです」
「お、おい、真、お前どうしたんや……」
平子が話しかけても真はニコニコしたまま、止まらなかった。
「普段はおちゃらけていますが、それが部下を近づきやすくさせるんですよね。隊長と隊士の距離が近いのは、やっぱり平子隊長と桃さんの人柄だと思います。距離が近いと言えば乱菊もそうなんですけど、乱菊も平子隊長に負けず劣らず人の事をよく見てて、元気が無いとかそういうの直ぐ気づくんですよ。見かけだけじゃなくて、中身もキレイなのが乱菊の魅力でして………」
「ちょっと真、おかしいわよアンタ!」
「酔っとる!!コイツ酔っとるぞ!!!」
「水じゃ!!吉良!!水もってこい!!!」
「ちょっと待ってください。乱菊の魅力についてちゃんと聞いてください。乱菊程の女性は滅多にいないんですよ。なんでかって言うと…」
「落ち着け霧島!乱菊さんの魅力は分かったから!!!」
「いや。あなたはまだ全然分かっていないんですよ。檜佐木副隊長」
「甘酒で酔って饒舌な褒め上戸になるとかウケる」
「リサ!笑っとらんと、水飲ませえ!!いつ倒れるか分からんぞ!!」
「水!!水ですよ!!!」
吉良がピッチャーで水を貰ってきて、コップについで真に渡すも、真は怪訝な顔をするだけで口をつけようとしなかった。
「ちょっと全員席につきましょう。私は大丈夫ですから」
「どこがやねん。はよ水飲めボケ」
「はーっしょうがないな」
見かねたリサがコップの水を口に含んだと思ったら、真の顔を両手で押えて真に口をつけた。
「なっ!!!リサ!!?」
「何しちょるんですかぁ!!!!矢胴丸隊長!!!」
喚く男達を尻目に、リサは真の口内に水を流し込み、真が飲み込むのを確認して、ようやく口を離した。
リサは涼しい顔で口を拭い、真は放心状態で固まっていた。
全員が、目の前の光景に意識を奪われ、シャッター音に気づけなかった。
