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平子編

二人のその後 9

 仕事上がりに、真は一旦家に戻り着替えを袋に入れると、遠回りをしながら平子の家を目指した。忘れた風呂セットを取りに行くためだ。
 今まで平子の家は何回も訪れてはいるが、2日連続で行くのは始めてだ。
 歩きながら、無意識にいろんな事を考えてしまう。
 副隊長の話、昨日の夜の事、後進の育成について、昨日の夜の事、副隊長になる心の持ち方、昨日の夜の事……………。
 いやスケベか!!!私は!!!
 真は立ち止まり、自分自身にツッコミを入れると、深呼吸をして頭の中を整理した。
 真子さんの所にいくからって、昨日の事を思い出し過ぎだろ…。そりゃあ、昨日の真子さんはちょっと激しかったけど…。私もおかしくなってたし。でも、真子さんはそれで良いって言ってくれて……。最後、愛してるって………。
 ッだあ!!!それしか考えんのかい!!!!
 真は頭を振って、煩悩を頭から追い出そうとしたが、そうすればそうする程、昨夜の情事が感触まで鮮明に思い出され、ガックリと項垂れた。
 結局頭の中は煩悩にまみれたまま、肝心の副隊長昇進については1ミリも考えられず、平子の家の近くまで来てしまった。
 自己嫌悪になりながらも、真は注意深く周りを気にしてから、平子の家のチャイムを鳴らした。
「開いてるで〜」
中から声が聞こえて、真は中に入った。寝室から音楽が聞こえる。廊下の脇に、昨日置いたままの風呂セットがあった。
 真は草履を脱ぐと、風呂セットを通り過ぎて寝室まで行った。
「来ると思っとったわ。忘れもん取りに」
平子は部屋着になって、ベッドの上であぐらをかいて本を読んでいた。煩悩まみれの真は、平子の姿を見ただけで心がざわついた。
 仕事中は平気だったのにな……。
「直ぐ帰らんやろ?」
駆け引きをするような声で、平子は真に聞いた。平子も期待しているのではないか、と思ってしまうのは、自分の欲目だろうか。
「しばらく居て、いいですか?」
ひきつけられるように、真はフラッと平子に寄っていった。
 ベッドの端に腰掛け、平子の手元の本を見た。ファッション誌だ。現世のオシャレは良くわからないが、本に載っているなら、これがオシャレなのだろう。
「今度電気屋行くなら、服買わなあかんな」
雑誌を捲りながら、平子が真に話しかけた。
「…前に揃えてもらったのがありますよ?」
「ええやん。新しいの買おうや。お前何着せても似合うし、選ぶの楽しいねん」
平子に褒められ、真の頬が赤く色づいた。乗せられているとは分かっているが、悪い気はしない。
「あーでも、真はこう言うのは似合わんな」
そう言って平子が指差したのは、デートコーデと題されたページの女性だった。淡いピンクのヒラヒラしたスカートに、フワフワの上着を着ている。
「…そう言うのは、桃さんが似合いそうですね」
「そうかあ?桃が着たら如何にもあざとくて嫌やなあ。てか、こういう服で男が釣れる思うのが間ちごうてるわ」
「要するに、こういう服は嫌いなんですね?」
「正解」
平子は更にページを捲り、タートルネックのニットにワイドパンツ、ロングコートを来た女性を出した。
「真は、こういうのやな」
そう話す平子の横顔は楽しそうで、真も顔がほころんだ。すると平子はこちらを見て、真の顔を観察するように見据えてきた。
「………顔立ちがハッキリしてるから、暗めのリップも似合いそうやな………」
平子の指が真の唇に触れ、真の背中に電気が走った様な感覚になった。
 ああ、駄目だ。今きっと顔赤い…。変な顔になってる…。
 頭がグルグルしている間に、平子の顔が近づいてきて、唇が重なった。
 気持ちいい…。不思議だ。何で、これがこんなにも気持ち良く感じるんだろう…。
 真はそう思いながら首を捻って、平子の口内に自分の舌を入れた。平子の舌ピアスを舐めて、感触を楽しむと、唇を動かして平子の唇の感触を確かめた。
 平子の口の動きが止まった為、真も動くのを止めてそっと唇を離した。
「……び、……くりしたあ………」
平子は手の甲で口を押さえ、動揺している顔をしていた。その表情を見て、真も自分のした事を理解し、パッと顔を下げた。
「………つい………」
「いや、嫌やない。ってか…うん、嬉しいよ。顔、上げ」
平子に誘われたが、真は顔は上げずに、ベッドに手をつく平子の指に、スルスルと自分の指を絡ませた。
「………体が………言うこときかないんです………」
絡ませた指を見つめながら、真がポツリと言った。平子もその手をじっと見て、真の言葉の続きを待った。
「副隊長に誘われた事、真剣に考えないといけないのに………頭の中は、昨日の事思い出しちゃって………」
真は平子の手を握って、そっと持ち上げた。
「体が…火照って…………」
そう言って真は顔を上げ、高潮し潤んだ目で平子を見つめた。初めて見る真の姿に、平子の喉が思わず鳴った。
「熱を……逃して、くれますか……?」
真が持ち上げた平子の人差し指に口をつけ、パクリと咥えると、平子の指が真の舌に当たった。真は口の中で舌を動かし、平子の指をなぞるように舐めた。
「………どこで覚えたん」
細長いものを舐める真を見て、平子の下半身が俄に熱くなった。目が座り、いつでも出来る雰囲気が出来上がった。
 真は挑むような目で平子を見ると、口を開いて平子の指を解放した。濡れた指のまま、平子が真の耳をなぞると、真の肩が反応した。
「したいんか」
「したい」
「俺も」
平子が笑って腕を広げると、真はその中になだれ込み、二人でベッドに倒れた。
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