平子編
二人のその後 8
その後、通常業務をいつもと変わりなく進めていたら、平子の伝令神機が鳴った。リサだった。
「真子、霧島真に言っといてくれた?」
「あ、忘れとった」
「アホ、ボケ、ハゲ。ちゃんと伝えやあよ、役立たず」
「そこまで言わんくてもええやろー」
「恵まれとるあんたにはこっちの気持ちは分からんわ。ちょっと霧島真出しゃあ」
「へーへー」
平子は伝令神機を真に差し出しながら、真を呼んだ。
「リサが、話したいと」
「私、ですか?」
真は八番隊隊長から名指しで指名される心当たりが無く、少し戸惑いながら平子から伝令神機を受け取った。
「はい。霧島です…」
「矢胴丸やけど、今話とってええ?」
「はい、大丈夫ですが」
「あんたとちょっと時間取って話したいんやけど、今日か明日辺りでそっち言って良い時間、ある?」
「えと……今日なら、15時以降でしたら」
「じゃ、その時間にそっち行くわ。よろしく」
「…はい。お待ちしております」
約束を取り付けると、リサは電話を切った。真はしばらく伝令神機を見つめたまま、実感が湧かないような顔をしていた。
「リサ、なんて?」
真から伝令神機を受け取りながら、平子が真に聞いた。
「午後にこっちに来て、話がしたいって……何の用事でしょうか」
「ああー、リサなあ、今副隊長探しとんねん」
「ええ?!」
反応したのは真では無く、黙って会話を聞いていた雛森だった。
「引き抜きですか?」
雛森は随分悲しそうに平子に尋ねた。
「まだ何も決まってへんから、他に言うたらアカンぞ」
「はい、それはもう絶対言いませんけど…」
真は頭がついていかず、ボンヤリと二人の会話を聞いていた。
人を育てるのが自分の使命だと思っていたが、五番隊で後進を育てた後の事を考えていなかった自分に気づいた。
今日の集団訓練に弓親は現れず、訓練は坦々と進められた。直接の戦闘訓練以外は、六席と九席の二人が進めてくれるようにはなった。真の役割を完全に受け継ぐ日も遠くは無い。
「近藤、今日、手合わせの指導やってみるかい?」
真は六席の男に話を振ってみた。彼は少し身構えたが、やる気に満ちた返事をした。
その後彼は、不慣れながらも的確な指導をしていたように思える。きっと彼が真の役割を引き継いでくれる。
真はそう確信しながら、今日の訓練を終えた。
執務室に帰ると、既にリサが来ていた。平子と雛森と一緒にお茶を飲んでいた。
「すみません。お待たせしてしまいましたか?」
「ううん。仕事に疲れたから早めに来ただけやよ。気にしんといて」
「すみません、先に手を洗ってきます」
「今真さんのお茶淹れますね」
雛森が立ち上がり、給湯室に向かっていったのを、真が追いかけた。
「大丈夫ですよ桃さん、自分で淹れますから」
仲良く給湯室に立つ二人を見ながら、リサはお茶を啜った。
「雰囲気ええねえ」
「せやろ」
真が戻ってくると、リサは湯呑を置いて真をまっすぐ見た。平子はリサの横でソファにもたれ、雛森は真の横で心配そうな顔をしている。
「真子から聞いたと思うけど、副隊長がほしいんよ」
「…………はい」
「指導力もあるみたいやし、事務仕事の方も、今までの会議資料見させて貰ったわ。副官の仕事、今の時点で出来るみたいやね」
リサは一旦黙って、確認するような目で真を見た。
「で、鬼道はどこらへんまでできるの?」
「詠唱は八十まで、破棄は六十三までです」
「そこまで出来るようになっとったんか?!」
平子が驚いて声をあげた。
「ふーん………で、真自身は、副隊長になる事はどうなの?」
リサの率直な質問に、真は少し緊張した。
「ありがたい、お話だと思います。ただ、あまりにも急な話なので、実感が湧いていないのが、正直な気持ちです。少し考える時間をいただけませんか」
緊張した面持ちで答える真を見て、リサは軽く微笑んだ。
「そうしやあ。ただ、真が駄目ならまた新しく探さんとあかんし、なるべく早く返事ちょうだいね」
「ありがとうございます」
真は頭を下げてリサにお礼を言った。
「そう言えば、矢胴丸隊長はどうして真さんを副隊長にしようと思ったんですか?」
真の隣の雛森がリサに尋ねた。
「ああ、昨日飲み会で副隊長向きのヤツおらんか聞いたら、白が真が良いって言ってね」
「久南さんが?接点ありましたっけ?」
雛森が真に聞いたが、真は首を横に振った。
「修兵が、仕事できるって白に言ったらしいよ」
それを聞いて、真がげんなりした顔になった。檜佐木の事が、真は何となく苦手だ。お節介というか、何故か彼が絡むと面倒くさい事になる事が多い。
「それで気になっていろんな人に聞いて回ったんやけど、みんな副隊長にしやあって言ってさ」
「みんなって?」
横の平子が、興味深けに聞いた。
「七緒も、勇音も、射場も、冬獅郎も乱菊も、皆や」
「………まあ、そうやろな」
それを聞いた平子は、どこと無く寂しそうだった。
いろんな人に推され、真はありがたくも嬉しくも思ったが、ドン底から支え続けてくれた五番隊から離れるのは、やはり寂しく感じた。
リサが帰ってからは、平子も雛森もその話は出さず、真が冷静に考えられるようにしてくれた。
その後、通常業務をいつもと変わりなく進めていたら、平子の伝令神機が鳴った。リサだった。
「真子、霧島真に言っといてくれた?」
「あ、忘れとった」
「アホ、ボケ、ハゲ。ちゃんと伝えやあよ、役立たず」
「そこまで言わんくてもええやろー」
「恵まれとるあんたにはこっちの気持ちは分からんわ。ちょっと霧島真出しゃあ」
「へーへー」
平子は伝令神機を真に差し出しながら、真を呼んだ。
「リサが、話したいと」
「私、ですか?」
真は八番隊隊長から名指しで指名される心当たりが無く、少し戸惑いながら平子から伝令神機を受け取った。
「はい。霧島です…」
「矢胴丸やけど、今話とってええ?」
「はい、大丈夫ですが」
「あんたとちょっと時間取って話したいんやけど、今日か明日辺りでそっち言って良い時間、ある?」
「えと……今日なら、15時以降でしたら」
「じゃ、その時間にそっち行くわ。よろしく」
「…はい。お待ちしております」
約束を取り付けると、リサは電話を切った。真はしばらく伝令神機を見つめたまま、実感が湧かないような顔をしていた。
「リサ、なんて?」
真から伝令神機を受け取りながら、平子が真に聞いた。
「午後にこっちに来て、話がしたいって……何の用事でしょうか」
「ああー、リサなあ、今副隊長探しとんねん」
「ええ?!」
反応したのは真では無く、黙って会話を聞いていた雛森だった。
「引き抜きですか?」
雛森は随分悲しそうに平子に尋ねた。
「まだ何も決まってへんから、他に言うたらアカンぞ」
「はい、それはもう絶対言いませんけど…」
真は頭がついていかず、ボンヤリと二人の会話を聞いていた。
人を育てるのが自分の使命だと思っていたが、五番隊で後進を育てた後の事を考えていなかった自分に気づいた。
今日の集団訓練に弓親は現れず、訓練は坦々と進められた。直接の戦闘訓練以外は、六席と九席の二人が進めてくれるようにはなった。真の役割を完全に受け継ぐ日も遠くは無い。
「近藤、今日、手合わせの指導やってみるかい?」
真は六席の男に話を振ってみた。彼は少し身構えたが、やる気に満ちた返事をした。
その後彼は、不慣れながらも的確な指導をしていたように思える。きっと彼が真の役割を引き継いでくれる。
真はそう確信しながら、今日の訓練を終えた。
執務室に帰ると、既にリサが来ていた。平子と雛森と一緒にお茶を飲んでいた。
「すみません。お待たせしてしまいましたか?」
「ううん。仕事に疲れたから早めに来ただけやよ。気にしんといて」
「すみません、先に手を洗ってきます」
「今真さんのお茶淹れますね」
雛森が立ち上がり、給湯室に向かっていったのを、真が追いかけた。
「大丈夫ですよ桃さん、自分で淹れますから」
仲良く給湯室に立つ二人を見ながら、リサはお茶を啜った。
「雰囲気ええねえ」
「せやろ」
真が戻ってくると、リサは湯呑を置いて真をまっすぐ見た。平子はリサの横でソファにもたれ、雛森は真の横で心配そうな顔をしている。
「真子から聞いたと思うけど、副隊長がほしいんよ」
「…………はい」
「指導力もあるみたいやし、事務仕事の方も、今までの会議資料見させて貰ったわ。副官の仕事、今の時点で出来るみたいやね」
リサは一旦黙って、確認するような目で真を見た。
「で、鬼道はどこらへんまでできるの?」
「詠唱は八十まで、破棄は六十三までです」
「そこまで出来るようになっとったんか?!」
平子が驚いて声をあげた。
「ふーん………で、真自身は、副隊長になる事はどうなの?」
リサの率直な質問に、真は少し緊張した。
「ありがたい、お話だと思います。ただ、あまりにも急な話なので、実感が湧いていないのが、正直な気持ちです。少し考える時間をいただけませんか」
緊張した面持ちで答える真を見て、リサは軽く微笑んだ。
「そうしやあ。ただ、真が駄目ならまた新しく探さんとあかんし、なるべく早く返事ちょうだいね」
「ありがとうございます」
真は頭を下げてリサにお礼を言った。
「そう言えば、矢胴丸隊長はどうして真さんを副隊長にしようと思ったんですか?」
真の隣の雛森がリサに尋ねた。
「ああ、昨日飲み会で副隊長向きのヤツおらんか聞いたら、白が真が良いって言ってね」
「久南さんが?接点ありましたっけ?」
雛森が真に聞いたが、真は首を横に振った。
「修兵が、仕事できるって白に言ったらしいよ」
それを聞いて、真がげんなりした顔になった。檜佐木の事が、真は何となく苦手だ。お節介というか、何故か彼が絡むと面倒くさい事になる事が多い。
「それで気になっていろんな人に聞いて回ったんやけど、みんな副隊長にしやあって言ってさ」
「みんなって?」
横の平子が、興味深けに聞いた。
「七緒も、勇音も、射場も、冬獅郎も乱菊も、皆や」
「………まあ、そうやろな」
それを聞いた平子は、どこと無く寂しそうだった。
いろんな人に推され、真はありがたくも嬉しくも思ったが、ドン底から支え続けてくれた五番隊から離れるのは、やはり寂しく感じた。
リサが帰ってからは、平子も雛森もその話は出さず、真が冷静に考えられるようにしてくれた。
