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平子編

二人のその後 4


 今日の飲み会は、いつもの男3人に、リサと白が加わっていた。
 白には真の事は黙っている。口が軽いからだ。白に黙っているのに、リサだけに言うのも気が引けて、結局男達しか真と平子の関係は知らない。 「いい加減、副隊長がほしいわ」
 飲み始めから、リサが独り言のように言った。全員がリサを見て、リサが話を続けた。
「アイツ、いつまで経っても七緒を離さんし。副隊長が常駐しないってのは、不便極まりないわ」
アイツとは、総隊長の京楽春水の事だ。相変わらず遠慮がない。
「別に伊勢じゃ無くてもいいんだろ?」
焼き鳥を頬張りながら、拳西が確認をする。
「誰かいいのおんの?」
「いや、知らねえけど」
「知らないんなら言うな」
拳西に毒づき、リサは改めてため息をついた。それを見た白が声を上げる。
「ならあの子は〜?ほら、前にシューへーが言ってた……シンズィのトコの〜えーとっ」
白が頭を抱えて記憶を手繰ろうとた。拳西は何となく心当たりがありそうな雰囲気だが、ビールジョッキを口に持っていき、喋れない口実を作った。
「うち?うちに副隊長向きのなんかおらへんぞ」
「いるってシューへーが言ったんだよう!お仕事バリバリで、強い子!!」
平子の頭に一人の人物が浮かんだ。
 おのれ修兵……覚えとけよ……。
「ほらあ!!三席の子!!黒髪のさあ!!!名前なんだっけ!?シンズィ!!!」
「霧島真」
言いたくは無いが、言わない訳にもいかず、平子は名前を告げた。平子の横のローズは、話に巻き込まれ無いように、ピスタチオの殻を剥き始めた。
「ああ、霧島なら七緒も言っとったよ。どうなんや、真子。副隊長向き?その、霧島ってのは」
「いま浅打使こうてるで、戦力にならへんぞ」
「七緒も斬魄刀持って無いし、そこは別に構わんわ。でも強いんやろ?」
唯一真が副隊長になれない理由が、隊長であるリサによって打ち消され、もう否定の言葉が出てこなかった。
「………まあ、強いちゃあ、強い……」
弱点であった鬼道も、最近克服してしまった。皮肉な事に、見事に斬拳走鬼揃ってしまったのだ。
「ふーん。アンタがそう言うなら信用できるな」
ああ、リサが真に興味持ってまった……。今日やっと、鬱陶しい虫を駆除できそうになったのに……。まだアカン。まだ手元に置かんと安心できへん。でもリサも副隊長無しで辛そうやしなあ……正直真以上に副隊長に適した人材って聞かんし……。いや
でも……。
「なんや真子、何か不満がありそうやん」
浮かない顔の平子を見て、リサが問い出した。ローズはギョッとしてピスタチオを取り落とすし、拳西はビールでむせた。
「………せやかて……」
「あん?」
「アイツがおらんと、俺の仕事、増えるし…………」
「何それ、真子の都合なんか知らんわ。それに、アンタんトコの副官も優秀なんやろ?ならええやん。三席よこしゃーよ」
リサが平子に詰め寄り、言い訳出来ない平子は顔を引つらせながら黙っていた。
「リサ、ちょっと待ちなよ」
そこに助け舟を出したのがローズだった。
「真ちゃんは、いろいろあって十一番隊から五番隊に行ったんだ。だから、必ずしも昇進がしたい子じゃ無いんだよ」
ローズの説明に、平子に詰め寄っていたリサが少し離れた。平子は心の中でローズに手を合わせた。
「今直ぐにとか言わんけど…。今度会いに行くわ。真子、言っといて」
「えー………メンド……」
「言え」
「………はい」
 あー、気ぃ進まんわー…。
 そんな事を考えながら、平子はビールジョッキを煽った。向かいでは白が何か喚いている。刺し盛にサーモンが無かったらしい。それを拳西が怒鳴っている。ローズはピスタチオから、ピーナッツに移行している。どんだけナッツ食うねん。
「そういや、彼女できたんやって?」
唐突にリサがそう言い放ち、平子は驚いてジョッキを机に置いた。
「ローズ」
なんや、ローズの話か。ビビって損したわ。
「フフフ、そうなんだよ。写真、見る?」
「見ん」
嬉しそうに伝令神機を取り出すローズをリサがピシャリと跳ね除け、ローズを愕然とさせた。今の振りはなんだったのか、と。
「確認しただけや。幸せアピールはいらん」
するとリサは平子の横顔をじっと見てきた。視線が痛い。
「なんなん?」
「真子は、どうなん」
「あ?おらんわ、そんなん」
すると、平子達のいるテーブルの後ろから、キャー!という声があがった。驚いてそちらを見ると、どこの隊だか知らない女達が身を寄せ合いながら、こちらにチラチラ視線を送っていた。
 ああ、そういう事か。
 平子はいつもの癖で、女達に声をかけた。
「俺に彼女がおらんくて嬉しい?」
内緒の関係とはいえ、彼女がいるのにこの軽い態度はもはや悪癖だろう、とローズと拳西は呆れ返った。故に、特に咎めもせず、野放しだ。
 女達は平子に声をかけられると、キャーキャー言って、真ん中に座る女を指差した。
「この子、平子隊長のファンなんです!」
そう言われた女は、体を縮めてモジモジしながら、憧れの眼差しを平子に送った。自分の見せ方を知っている、女らしい仕草だった。
 昔の自分は、こういうのをいい女だと思ってモーションをかけていたが、今は違った。
 彼女を見て思ったのは、あざとい、騒がしい、子供っぽい、と何ともマイナスな感情だ。随分真に影響されていると、改めて自覚した。
「ありがとさん。可愛らしい子にそう言われて嬉しいわ」
平子が社交辞令を述べると、彼女は顔に手をやり、首を傾げて平子を見てきた。
 うーん、やり手かも知れん。
「ほな、お互い飲み会楽しもうな」
平子はそう言って手を振り、体の向きを変えて自分の卓の料理に手を出した。後ろからは、良かったね!声かけてもらえたね!と騒ぐ声が聞こえてきた。
「ガキくさ」
隣のリサが、苦々しく呟いた。同調はしないが、共感はする。
 ああいうのを目にして心が冷めるあたり、時間の流れを感じる。
「いいのお?シンズィ。女の子だよ?」
白は成長しないのかもしれない。
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