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二番隊編

霧島真と二番隊 4


 膨らむ欲望に抗えず、弓親は真の髪にそっとふれた。
 真は、眠ったまま反応しない。
 髪から手を離し、指の背で頬を撫でたが、やはり真は眠ったままだ。
 そのまま頬を撫でながら、指を真の唇に持っていった。
 薄く、柔らかい唇独特の感触に、弓親の肌がピリピリし始めた。
 本能が、理性を制圧してしまった。
 弓親は音を立てないようにゆっくりと立ち上がり、真の顔の横に手をついた。

 一回許してくれたんだ。きっと懐柔できる。
 
 上から見下ろした真の顔は、まつ毛がよく分かり、本当に美しかった。

 この肌が、目が、唇が、自分だけのものだと主張できたら、どんなにいいだろう。この口から、好きだと、愛していると、言われたい。真っ直ぐな瞳で、媚びないその声で言われたい。

 募った想いを欲望に変えて、弓親は真の動きを確認するかのように、ゆっくりゆっくり体を倒していった。
 真の寝息が聞こえる程近づいた時、勢いよくドアが開いた。
「あーめんどくせえ!めんどくせえ!!何で俺様がたかが四席の為に荷物を届けなきゃならね………」
ドアを開いた大前田の視線の先には、真に覆いかぶさるように身を屈める弓親がいた。憎悪の目でこちらを見ている。鈍い大前田にも、流石にどんな状況か予想がついた。
「綾瀬川!!!??テメエ今何しようとしてやがった!!!」
「う、うるさいな!!呼吸を確認してたんだよ!!病室で騒ぐな!!!」
二人の怒鳴り声を聞きつけて、看護婦と伊江村が様子を見に駆けつけた。
「いかがなされましたか!?霧島様に何か!?」
「ったく!何でもないよ!!」
苛ついている弓親が大前田を睨みあげ、肩で風を切るように病室から出ていった。 
「大前田様は、こちらで何を…」
伊江村がメガネを押し上げながら大前田に向き直ると、大前田も不機嫌そうに斬魄刀と風呂敷を伊江村に押し付けた。
「うちの隊長に、そこの四席の荷物だから届けろって言われてよ。アイツが起きるまでなんて待っていられねえから、お前渡せよな」
大前田もそれだけ言うと、鼻をほじりながら去っていった。
 伊江村が風呂敷と斬魄刀を抱えてポカンと立っていると、看護婦達が騒ぎ出した。
「伊江村三席!!霧島さんの荷物、私が渡します!!」
「いえ私に!!お願いします!!」
「私まだ霧島さんと話した事無いんです!!お願いします!!」
沸き立つ看護婦達を見て、伊江村は顔をしかめながら手の中の物を頭上に掲げた。
「だーかーらー!!こうなるから、霧島様の事は虎徹副隊長が担当すると決めたでしょうが!!!」


 夕方頃、真が目を覚ますと、横に勇音がいた。点滴を片付けていた。
「……虎徹副隊長…」
「あ、気が付きました?」
真がゆっくり体を起こすのを、勇音が笑顔で補助した。
「砕蜂隊長に無理矢理飲まされたんですよね。大変でしたね……」
「……うまく断れなくて………」
真が困ったように笑うと、勇音も苦笑してくれた。
「私もうまく言えないタイプなので、分かりますよ。砕蜂隊長には、私からもうしないように言っておきましたから」
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ」
 勇音がベッドの脇の棚から風呂敷を取り出し、真に渡した。
「これ、砕蜂隊長が大前田副隊長に持ってこさせた荷物です」
真が風呂敷を開くと、自分の死覇装が出てきた。一番上には、蜂のマークと共に電話番号が書かれているメモが乗っていた。真の横で風呂敷を開くのを見ていた勇音が、あ、と声を出した。
「これは、砕蜂隊長の電話番号ですね」
「かけろ、と言う事でしょうか…?」
「うーん、多分……」
「四席の私が、隊長に電話をかけてもいいんでしょうか……」
メモを手に取り困っている真を見て、勇音が声をかけた。
「私から、かけてみましょうか?女性死神協会で関わりがあるので」
「た、助かります……」
そういうと、真は自分の伝令神機を勇音に差し出し、勇音がダイヤルを押して砕蜂に電話をかけた。
 しばらく黙って待っていると、砕蜂が電話に出た。
ガチャ「私だ」
「あ、砕蜂隊長ですか?虎徹勇音です。今霧島さんが目を覚まされたんで、風呂敷のメモを見ました。霧島さんの伝令神機を借りて電話をかけています」
「霧島は、話せない程なのか?」
「いえ、ご自分の立場で砕蜂隊長に電話をしていいか迷ってらしたので、私が代わりに……」
「そうか、ならば構わん。霧島にかわれ」
勇音は一度伝令神機から耳を離し、マイク部分を手で押さえて、真に差し出した。
「砕蜂隊長が、話しをしたいそうですよ」
真は勇音にお礼をいいながら、伝令神機を受け取った。
「……霧島です。申し訳ありません砕蜂隊長。せっかく誘っていただいたのに…」
「……悪かったな、無理矢理飲ませて。体はもういいのか」
威圧的だと思っていた砕蜂から謝罪の言葉を言われ、真はやや驚きながらも、なるべく丁寧に受け答えをした。
「はい、今はなんともありません。お気遣いありがとうございます」
「そうか、ならば良かった。…夜一様がな、また日を改めて近衛先生の墓参りに行きたいと仰られてな、霧島の非番の日は何時だ」
「私の方こそ、ぜひよろしくお願いします。次は、…ちょうど1週間後です」
「分かった。では来週10時に二番隊に来い。その着物はくれてやるから、それを着て来い」
砕蜂はそれだけ言って電話を一方的に切った。通話が切れた伝令神機を見ながら、真は困惑した顔で勇音を見た。
「…砕蜂隊長は、なんて?」
「体調を気遣ってくださったうえ、着物をくださると…………」
「え!!こんな高そうなものを!!?」
「ど、どうしよう…いいのだろうか…」
「いいんじゃないですかね!!せっかくだし!!」


 一方、電話を切った砕蜂は、黒装束に身を包んだ部下を2名呼びつけていた。
「霧島真の本性を暴け。夜一様に近づかせて良い者か、私が判断する」
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