平子編
12.
やることの無い真は、一人で修行する用の装置をメンテナンスしてもらう為に、十二番隊に向かった。
「あ!真ちゃんだ〜!久しぶり!」
技術開発局に行くと、ニコが嬉しそうに手を振ってきた。
「おう、坊っちゃんじゃねえか、どうした」
タバコを吸っていた阿近が、椅子から真を見上げた。周りの局員達も、座ったまま真に声をかけた。見た目の割に、ここの人達は人懐こいが、必要以上に介入してこない所が、真は好きだった。
「坊っちゃんはやめてくださいって、言ってるじゃないですか」
「なら彼氏の一人でも連れてこい」
ニヤリと笑う阿近に、真は黙って装置を差し出した。
「懐かしいな。最近使ってるか?」
阿近は装置を手に取り、目の高さに掲げた。
「いえ、久々に使おうと思って」
阿近はちらりと真を見たが、何も聞いてくる事はなく、ちょっと待ってろ、と言って、分解し始めた。他の人たちも、何も聞いてこない。局員のこういう所が、楽で好きだ。
「南流魂街に虚の反応あり!!これは……メノスです!!」
リンの声が部屋に響き渡り、局員達が慌ただしく動き出した。
「真ちゃん!五番隊の管轄地区だよ!!」
ニコが真を見上げて言った。真の体が硬直した。
「坊っちゃんは非番だろ。働かせんな」
ニコの隣のヒヨスが画面を見ながら、ニコをたしなめた。あ、そっか、とニコも画面に向き直った。
「またこの地域かよ!昨日も出たじゃねえか!!穴でもあんのかよ!!オイ、リン!!お前調査してこいよ!!」
「ええ!!??僕ですかあ!!???」
ヒヨスとリンがやり取りしている姿を、真が心配そうに見ていると、阿近が真の肩に手を置いた。
「そんな顔すんな。平子隊長も行くだろうし。他の隊士も、お前が教えたんだろ?自分の身くらいなら、自分で守れるだろ」
阿近の言葉を受けた時、今まで整理できなかった真の気持ちが、綺麗にまとまった。真はスッキリした顔で阿近を見ると、局員達に礼を言って部屋を出ていった。
平子と雛森がメノスを見上げて、刀を抜こうとした時、背後から悲鳴があがった。
「平子たい………!!!!ぐあ!!!ぎゃあああああ!!!」
見ると5体もの巨大虚が、平子達の部隊を取り囲んでいた。その中で4人の隊士が、触手のある虚に捕まるか、串刺しにされていた。
「桃!ここはええから、あっちに行ったり」
「はい!」
雛森が駆け出した瞬間、触手がまた一人の隊士に襲いかかった。
「うわあああああああ!!!!!!」
触手が隊士の腹に触れる直前に、斬撃が触手を切り落とした。
弾みで尻もちをついた隊士が、視線を上げると、霧島真が虚の前に立ちはだかっていた。
「三席……」
「真さん!!」
真は刀を構え、襲いかかる触手を次々と叩き切った。
「立てる者で隊列を組み直せ!!4人は後方で援護射撃を」
真の指示に、バラバラだった隊士の動きにまとまりが生まれた。全員が訓練通りに隊列を組み、虚に対峙した。
「三席、虚は5体です!援護は……」
五席が聞いているうちに、真は最後の触手を切り落として刀を収めた。
なぜ刀を収めたのかと、全員が疑問に感じていると、案の定虚が真に襲いかかってきた。
「三席!!!」
その刹那、虚の体は真っ二つに割れていた。
真の居合抜きだ。
「4人だ」
刀を鞘に収めながら言い放ち、真は隊列に混ざった。
真の指示で部隊は機能し、確実に巨大虚を圧倒し始めた。
雛森は隊列に加わらず、平子と共にメノスに向かっていた。
真の様子を見て、平子は安心したような笑みを浮かべていた。それを見た雛森は嬉しそうだった。
真が指示を出しながら、横目で平子を見ると、平子もこちらを見ていた。
平子隊長。私、思い出しました。
どうして強くなりたかったのか。
守りたかった。
初めは姉さん。次は班の部下達。今は、五番隊の全員。
一人で守りきるには限界がある。
だから、私は教え、繋いでいく必要がある。
新芽を育て、守る必要のない存在にする。
それが私の役目だ。
十一番隊には、芽を置いてきました。
だから、あちらはもう大丈夫。
次は、五番隊で私の役目を全うします。
させてください。
全てが片付くと、真は刀を鞘に収めて、平子の方を向いた。
平子も黙って真を見た。
真はツカツカと歩み寄ると、手前で止まり、頭を下げた。
「すみませんでした。まだ五番隊で勉強させてください」
平子は腕を組んで、横にいる雛森を見た。
「どうする?桃」
「何で意地悪するんですか!!戻ってきてほしいに決まってるじゃないですかあ!!!」
雛森は涙目で、平子をポカポカ叩いた。真は眉を下げて、雛森を見た。
「……桃さん……」
「まあ、桃がこう言うてるで、許したるわ」
平子は真を見ずに、脇を見ていた。
「そんで、アナタは命の大切さ、学びましょーネ……」
「はい……」
二人が仲直りしたのを見届けると、隊士達が駆け寄ってきて、二人を囲んだ。皆真が十一番隊に戻ると思っていたようで、安堵の声が真を包んだ。
「いやー、祝、仲直りやなあ」
隊舎に帰還し、平子と真は隊首室で二人きりになっていた。雛森は用事があると言って、どこかに行った。
「喧嘩したわけじゃ……」
真は平子の机にお茶を置きながら言った。
「なら何で昨日連絡してこんかってん」
平子は椅子から立ち上がり、真と爪先が当たるほど近づいた。真は足を引いて遠ざかろうとするが、平子は前進して真に迫った。
「寂しかったか?」
真の背中に壁があたった。平子は壁に手をついて、真の逃げ道を無くした。真は顔をしかめて平子を見た。
「何の……」
「チュウしよ」
顔を近づけながら平子が迫ってきた。唇が触れる直前で、真の手が邪魔をした。
「こんな所で何を…」
口を塞ぐ真の手首を平子が掴んで、口から剥がした。真が顔をそむけるが、平子は引かない。
「したいねん。させてや」
「………ダメ」
「嫌ならもっと抵抗したらええやん」
耳元で囁かれ、真は顔をしかめて俯き黙った。平子はニヤリと笑って、真の顎に手をかけた。
「……ほんの、少しや、な?」
懐柔された真が、平子にされるがまま顔をあげ、そこに平子が口をつけた。
ガチャ
「仲直りして本当に良かったよ〜!!それでね……え!!?」
突然扉が開き、雛森と日番谷が入って来て、壁際で明らかにキスをしていただろう二人を見て固まった。
真と平子も、顔だけ雛森と日番谷を見て固まっていた。
「見なかった事にしてください……」
真と平子は、雛森と日番谷の足元で土下座した。
「誰にも、言いませんけど……えと、いつから……」
雛森も、その横で顔を横に向ける日番谷も顔が真っ赤だった。
平子は土下座から顔をあげ、地面を見た。二人の顔は到底直視できなかった。真はまだ額を地面につけていた。
「つい……最近……」
「……良かった……!」
雛森は両手を合わせて喜んだ。雛森のリアクションに平子と日番谷が雛森を見た。真は顔をあげない。
「隊長、ずっと真さんの事好きでしたもんね……良かったですね!私も、嬉しいです…!」
「桃チャン、そういうの、口に出したらあかんよ……恥ずかしいから……」
平子は顔を真っ赤にして手で覆った。
日番谷は気持ちを切り替えるために深呼吸をしてから、平子と真に向き直った。
「まあ、誰と付き合おうが自由だが……仕事中に変な事はすんなよ」
「ごめんなあ、ひっつん。子どもには刺激が強かったなあ」
「誰がひっつんだ!!あと子どもじゃねえ!!!霧島!!いい加減顔を上げろ!!!!!」
「……無理…………」
〜IFの世界〜終わり
やることの無い真は、一人で修行する用の装置をメンテナンスしてもらう為に、十二番隊に向かった。
「あ!真ちゃんだ〜!久しぶり!」
技術開発局に行くと、ニコが嬉しそうに手を振ってきた。
「おう、坊っちゃんじゃねえか、どうした」
タバコを吸っていた阿近が、椅子から真を見上げた。周りの局員達も、座ったまま真に声をかけた。見た目の割に、ここの人達は人懐こいが、必要以上に介入してこない所が、真は好きだった。
「坊っちゃんはやめてくださいって、言ってるじゃないですか」
「なら彼氏の一人でも連れてこい」
ニヤリと笑う阿近に、真は黙って装置を差し出した。
「懐かしいな。最近使ってるか?」
阿近は装置を手に取り、目の高さに掲げた。
「いえ、久々に使おうと思って」
阿近はちらりと真を見たが、何も聞いてくる事はなく、ちょっと待ってろ、と言って、分解し始めた。他の人たちも、何も聞いてこない。局員のこういう所が、楽で好きだ。
「南流魂街に虚の反応あり!!これは……メノスです!!」
リンの声が部屋に響き渡り、局員達が慌ただしく動き出した。
「真ちゃん!五番隊の管轄地区だよ!!」
ニコが真を見上げて言った。真の体が硬直した。
「坊っちゃんは非番だろ。働かせんな」
ニコの隣のヒヨスが画面を見ながら、ニコをたしなめた。あ、そっか、とニコも画面に向き直った。
「またこの地域かよ!昨日も出たじゃねえか!!穴でもあんのかよ!!オイ、リン!!お前調査してこいよ!!」
「ええ!!??僕ですかあ!!???」
ヒヨスとリンがやり取りしている姿を、真が心配そうに見ていると、阿近が真の肩に手を置いた。
「そんな顔すんな。平子隊長も行くだろうし。他の隊士も、お前が教えたんだろ?自分の身くらいなら、自分で守れるだろ」
阿近の言葉を受けた時、今まで整理できなかった真の気持ちが、綺麗にまとまった。真はスッキリした顔で阿近を見ると、局員達に礼を言って部屋を出ていった。
平子と雛森がメノスを見上げて、刀を抜こうとした時、背後から悲鳴があがった。
「平子たい………!!!!ぐあ!!!ぎゃあああああ!!!」
見ると5体もの巨大虚が、平子達の部隊を取り囲んでいた。その中で4人の隊士が、触手のある虚に捕まるか、串刺しにされていた。
「桃!ここはええから、あっちに行ったり」
「はい!」
雛森が駆け出した瞬間、触手がまた一人の隊士に襲いかかった。
「うわあああああああ!!!!!!」
触手が隊士の腹に触れる直前に、斬撃が触手を切り落とした。
弾みで尻もちをついた隊士が、視線を上げると、霧島真が虚の前に立ちはだかっていた。
「三席……」
「真さん!!」
真は刀を構え、襲いかかる触手を次々と叩き切った。
「立てる者で隊列を組み直せ!!4人は後方で援護射撃を」
真の指示に、バラバラだった隊士の動きにまとまりが生まれた。全員が訓練通りに隊列を組み、虚に対峙した。
「三席、虚は5体です!援護は……」
五席が聞いているうちに、真は最後の触手を切り落として刀を収めた。
なぜ刀を収めたのかと、全員が疑問に感じていると、案の定虚が真に襲いかかってきた。
「三席!!!」
その刹那、虚の体は真っ二つに割れていた。
真の居合抜きだ。
「4人だ」
刀を鞘に収めながら言い放ち、真は隊列に混ざった。
真の指示で部隊は機能し、確実に巨大虚を圧倒し始めた。
雛森は隊列に加わらず、平子と共にメノスに向かっていた。
真の様子を見て、平子は安心したような笑みを浮かべていた。それを見た雛森は嬉しそうだった。
真が指示を出しながら、横目で平子を見ると、平子もこちらを見ていた。
平子隊長。私、思い出しました。
どうして強くなりたかったのか。
守りたかった。
初めは姉さん。次は班の部下達。今は、五番隊の全員。
一人で守りきるには限界がある。
だから、私は教え、繋いでいく必要がある。
新芽を育て、守る必要のない存在にする。
それが私の役目だ。
十一番隊には、芽を置いてきました。
だから、あちらはもう大丈夫。
次は、五番隊で私の役目を全うします。
させてください。
全てが片付くと、真は刀を鞘に収めて、平子の方を向いた。
平子も黙って真を見た。
真はツカツカと歩み寄ると、手前で止まり、頭を下げた。
「すみませんでした。まだ五番隊で勉強させてください」
平子は腕を組んで、横にいる雛森を見た。
「どうする?桃」
「何で意地悪するんですか!!戻ってきてほしいに決まってるじゃないですかあ!!!」
雛森は涙目で、平子をポカポカ叩いた。真は眉を下げて、雛森を見た。
「……桃さん……」
「まあ、桃がこう言うてるで、許したるわ」
平子は真を見ずに、脇を見ていた。
「そんで、アナタは命の大切さ、学びましょーネ……」
「はい……」
二人が仲直りしたのを見届けると、隊士達が駆け寄ってきて、二人を囲んだ。皆真が十一番隊に戻ると思っていたようで、安堵の声が真を包んだ。
「いやー、祝、仲直りやなあ」
隊舎に帰還し、平子と真は隊首室で二人きりになっていた。雛森は用事があると言って、どこかに行った。
「喧嘩したわけじゃ……」
真は平子の机にお茶を置きながら言った。
「なら何で昨日連絡してこんかってん」
平子は椅子から立ち上がり、真と爪先が当たるほど近づいた。真は足を引いて遠ざかろうとするが、平子は前進して真に迫った。
「寂しかったか?」
真の背中に壁があたった。平子は壁に手をついて、真の逃げ道を無くした。真は顔をしかめて平子を見た。
「何の……」
「チュウしよ」
顔を近づけながら平子が迫ってきた。唇が触れる直前で、真の手が邪魔をした。
「こんな所で何を…」
口を塞ぐ真の手首を平子が掴んで、口から剥がした。真が顔をそむけるが、平子は引かない。
「したいねん。させてや」
「………ダメ」
「嫌ならもっと抵抗したらええやん」
耳元で囁かれ、真は顔をしかめて俯き黙った。平子はニヤリと笑って、真の顎に手をかけた。
「……ほんの、少しや、な?」
懐柔された真が、平子にされるがまま顔をあげ、そこに平子が口をつけた。
ガチャ
「仲直りして本当に良かったよ〜!!それでね……え!!?」
突然扉が開き、雛森と日番谷が入って来て、壁際で明らかにキスをしていただろう二人を見て固まった。
真と平子も、顔だけ雛森と日番谷を見て固まっていた。
「見なかった事にしてください……」
真と平子は、雛森と日番谷の足元で土下座した。
「誰にも、言いませんけど……えと、いつから……」
雛森も、その横で顔を横に向ける日番谷も顔が真っ赤だった。
平子は土下座から顔をあげ、地面を見た。二人の顔は到底直視できなかった。真はまだ額を地面につけていた。
「つい……最近……」
「……良かった……!」
雛森は両手を合わせて喜んだ。雛森のリアクションに平子と日番谷が雛森を見た。真は顔をあげない。
「隊長、ずっと真さんの事好きでしたもんね……良かったですね!私も、嬉しいです…!」
「桃チャン、そういうの、口に出したらあかんよ……恥ずかしいから……」
平子は顔を真っ赤にして手で覆った。
日番谷は気持ちを切り替えるために深呼吸をしてから、平子と真に向き直った。
「まあ、誰と付き合おうが自由だが……仕事中に変な事はすんなよ」
「ごめんなあ、ひっつん。子どもには刺激が強かったなあ」
「誰がひっつんだ!!あと子どもじゃねえ!!!霧島!!いい加減顔を上げろ!!!!!」
「……無理…………」
〜IFの世界〜終わり
