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平子編

8.

 自己嫌悪に押しつぶされた真は、就業後、十番隊に走った。
 全てを話せる親友に、心のうちをぶちまけたかった。
「真…?どうしたのよ、珍しい」
乱菊は不思議そうに真を見た。
「仕事、終わるまで待ってていい…?乱菊と話したい……」
普段と違って乱菊に甘える真を見て、日番谷が乱菊をあがらせた。
「もう行け松本。残りは、明日片付けろよ」
「隊長…」
「日番谷隊長…すみません。ご迷惑おかけします」
真は日番谷に深く礼をすると、乱菊と連れ立って、自分の部屋に行った。

 真はそこで、乱菊に全てを話した。
 平子を好きになった事。
 弓親に、今の自分の気持ちを話した事。
 それを平子が聞いていた事。
 平子も自分を好いていてくれた事。
 それを喜べず、今日も平子を拒絶してしまった事………。

 話を聞き終わると、乱菊は眉間にシワを寄せてため息をついた。
「バカね。何で早く相談しなかったのよ」
「……無いことに、したかった……」
「何で無いことにするの?両思いなんでしょ?」
「こんな軽い女……釣り合わない。弓親さんを傷つけて、自分だけ幸せになんて……」
「バカ!!!」
ガシリと真の両腕を掴むと、乱菊は真の瞳を覗き込んだ。
「弓親を振っておいて、平子隊長と両思いになったのに付き合わないなんて、侮辱もいいとこよ!!」
「…侮辱……?」
「その無意識がたち悪いの!!!」
乱菊は真を叱責し終えると、諭すように声を落とした。
「あんた達は、三角関係だったのよ。それでどちらかを選んだら、片方は傷つくのは当たり前なの。避けようがないの。だって、それが恋だから。両方を幸せにするなんて、虫のいい話は無いの」
真の心臓が凍るような気持ちになった。
「だから、自分が選んだ方を、全力で幸せにする努力をしなくちゃダメ。このまま、二人共不幸にしたままでいいの?あんたが平子隊長とくっつかないと、弓親だって次にいけないわよ」
真は、胃の奥からせり上がってくる感情を飲み込み、乱菊に抱きついた。
「………ありがとう……乱菊……」
「アドバイスし合わない関係は、とっくの昔に終わってるじゃない」
乱菊は真を無理矢理引き剥がすと、真を立たせ、玄関に連れて行った。
「乱菊?」
「行きなさい。わかるでしょ?好きな男の霊圧くらい」
真は泣きそうな顔で乱菊を見ると、乱菊に背を向けて走り出した。


 平子は、拳西を誘って飲み屋に行く途中だった。今日の事を、永遠と愚痴るつもりでいた。
「平子、隊長…!」
突然後ろから呼び止められて振り向くと、今日自分を拒絶した、両思いの女がいた。
「真。何や、どした?」
あくまで普通に話しかける。真は気まずそうな顔をしているが、平子から目をそらさなかった。何か大事な用があるのが分かった。
「……あなたと、話がしたい、です……」
泣きそうな目で、真は見つめてきた。
 ああ、これ、この目…いい話か悪い話か、聞きたくなる気持ち、分かるで、綾瀬川……。
「……そこらへんの奴捕まえて飲んでくる」
拳西は平子を置いて、さっさと歩いて行ってしまった。
「拳西……」
友の後ろ姿を見ながら、気遣いに感謝した。
 平子は拳西の背中を見ながら、袖口に手を入れた。不安を隠すように。
「……ここで、話されへんのんか?」
「……できれば、人目の無い所が…」
平子は向き直り、真を見た。俯いて、緊張しているのが分かった。
「どっか、店入るか……誰にも聞かれたないんやったら、俺んち……ってのも、あるけど」
ホンの少しの期待と、逃げ道を提示した。真の表情は変わらない。
「…………あなたの家に、行きます」
選ばれるとは思わなかった選択肢を提示され、平子は動揺した。
「ええんか?待つとは言うたけど、期待せんとは言うてないで?」
「はい…」
言葉の意味を理解しているか疑問に思ったが、平子は真を自身の邸に連れて行った。

 玄関を開け、家の中に入って扉を閉めると、平子は真を正面から捉えた。
「で、話って……っ!?」
突然隊長羽織を引っ張られ、前に体が傾いた瞬間、真の唇が平子の唇と重なった。
 平子は訳が分からず固まり、真は羽織から手を離すと、顔を真っ赤にして俯いた。
「覚悟が、できました。あなたを、幸せにできるよう努力します」
だから、と真は続けた。
「私と………むぐ」
真の言葉は、平子の手で押し止められた。見ると、平子が真剣な目で真を見ていた。
「そっからは、言わせてな」
平子は体をかがめて、真と視線を合わせた。
「お前が好きや、真。俺の、恋人んなって…」
真の目に、涙が浮ぶ。
「…はい……」
真の返事をしっかりと聞くと、平子は真の頬を両手で包み、額を合わせた。
「随分早う、答えを出したな……」
真は平子の手にそっと触れた。
「…傷つけて、すみませんでした…」
「傷ついとらへん……あ、ウソ。傷ついた」
平子は何かを思いついたように額を離すと、イタズラな笑みで真を見た。
「また、名前で呼んでくれたら、許したる」
ニイっと笑う平子を見て、真はにわかに頬を染めたが、平子の顔を手で包むと、顔を近づけた。
「…真子さん。好きです」
「200点満点やわ」
平子は真の腕を引き寄せると、真に口付けをした。
 真の腕を掴んでいた平子手は、真の腰にまわり、平子の頬を掴んでいた真手は、平子の首筋にまわされたいた。
 二人は、長く優しいキスをした。
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