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羽化にはまだ早い 番外編

 真が五番隊に移動して、一週間が経った。
 一角は、真の部下達に毎日稽古をつけていた。真が教えただけあって、動きに無駄が無かったが、体力と力の不足を指摘し、毎日の筋トレを命じた。
 ある日、稽古を終えた一角が真の部下達と隊舎に戻ると、床の砂埃やゴミが異様に目立った。最近はトイレも臭ってきた。その為か、弓親は最近隊舎にあまり居ない。
「なあ、最近うちの隊汚くねえか?」
一角が聞くと、彼女たちは、はあ?と言う顔をした。
「霧島四席が居なくなったんだから、そうなりますよ」
どういう事かと一角が聞くと、彼女たちは口々に騒いだ。
 要するに、今までは真が早く来て、執務室や隊主室や給湯室を掃除していたと。また、トイレや廊下など広い場所は、真が部下達と割り振りをして掃除していたが、真が居なくなり、彼女たちも就業時間のほとんどを、稽古と筋トレに充てられ、掃除する暇が無かったと言う。
「むしろ今まで、何で綺麗になってると思っていたんですか?」
若干喧嘩腰に、一人の女性隊士が一角に聞いた。
「…綺麗に使ってんな…って……」
彼女達は呆れた顔で一角を追い越して行った。すると一人が振り向いて、一角を睨んだ。
「もう霧島四席はいないんですから、三席と五席で掃除分担作ってくださいよ。でないと、ウチの隊、ゴミ溜めになりますよ」
 ぐうの音も出ない一角は、その日のうちに掃除分担を作り全隊士に言いつけたが、今まで掃除なんて禄にやって来なかった男達がした所で、対して綺麗にならなかった。隊舎が綺麗にならない事に、何故か弓親がめちゃくちゃキレた。

「最近、十一番隊の書類の不備、多すぎます」
あと、この隊舎汚いですよ。と七緒が一角に言った。手には、書き直しの書類が束になって握られていた。
「それは言うんじゃねえ………」
隊舎が綺麗にならない事に疲れた一角が、ウンザリした声で言った。七緒は問答無用で、書類を一角に押し付けた。
 一角は女性隊士を呼び、書類を書いた本人達に渡すよう言いつけた。
「またやり直しですかー。霧島四席がいたら、こんな不備が出る前に、直してくれたんですけどねー」
「また霧島か……あいつ何してたんだ」
 真は、他隊に回す書類は全て一度預かり、添削をして、間違いを直させていた。言っても聞かない隊士のは、真自身が直していた。
「まて、あいつ、そんな事もしてたのか?」
「そうですよ?他の隊に迷惑はかけれないからって。あと、うちの隊、書類の紛失が多すぎるんで、四席が一度全部コピー取ってたの知ってます?」
そう言えば、書類を無くしても霧島が必ず見つけてくれてたな、と一角は思い出していたが、あれは霧島が取ったコピーだったのかと、納得した。
「あいつ、自分の仕事以外にそんな事もしてたのか………」
「給湯室のお茶の補充や、水道の掃除に、隊長がしょっちゅう筆を無くすから、毎日隊長の引き出しチェックしてたんです。それで、私達の稽古に自分の鍛錬も欠かさなかったんですよ。四席の凄さわかります?」
一角が愕然とする横で、七緒は、八番隊に呼べば良かったと思っていた。
 するとその時、隊主室から更木が勢いよく出てきた。
「おい、筆がねえ」

 一方、五番隊に移った真は、隊舎の綺麗さに驚いていた。六席が掃除場所を割り振り、毎日交代で隊士達が掃除していた。その中に、雛森も平子も含まれており、平隊士と混ざってお喋りしながら掃除をしていた。
「隊長、手が止まってますよー」
「俺、筆より重いもの持てへんねん」
まさか隊長が、隊士に混ざって掃除するとは思わず、真は目を疑った。しかも、隊士が気さくに隊長に話かけている……。
 十一番隊を、ほとんど自分と数人の部下で掃除していた真は今までの仕事量から一気に減った。
 お茶の補充も、水道の掃除も、書類のコピーも添削も、隊長の引き出しチェックもやらなくてよくなった。更に言えば、喧嘩の仲裁も、サボっている隊士への叱責も、二日酔いの隊士のフォローも、無くなった。
 大幅に時間を持て余し、空いた時間を自分の鍛錬に費やせた真は、雛森にお願いして鬼道も練習する事ができた。

 「どう?五番隊は?」
ある日乱菊の部屋に泊まりに行くと、乱菊が真に聞いた。真は、困った顔をした。
「何か……楽すぎて、今までの苦労って何だったんだろう…って思った…………」
「………十一番隊は、特殊なのよ…………」
「特殊………」
「やらない者勝ち」
「やらない者勝ち…………」
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