羽化にはまだ早い(弓親)
8.
固まる真に織姫が慌てた。
「ご、ごめんなさい!嫌だった!?まことちゃん、かわいいから、そう呼びたくて!」
は?かわいい…?どういう意味??
頭が追いつかない真は、固まったまま織姫を見ていた。一角と弓親はゲラゲラ笑っている。
「織姫ちゃんよう。うちの隊のやつにかわいいは、褒め言葉になんねえよ」
一角が笑いながら織姫に言った。織姫はそーかなあ、と真の顔を覗き込んだ。
「まことちゃん、凄く綺麗な顔してると思うよ〜。目もパッチリしてるし、お肌も綺麗だし…」
織姫はどんどん真の容姿を褒めていく。真は言われる度に顔が赤くなり、汗をかいていく。一角も弓親も止めない。こんな扱いをされたのは初めてで、止めてください、と小さな声で言った。
「織姫の言うとおりよー、もっと女らしくしなさい」
後ろから、間の抜けた声がしたかと思ったら、両手が真の胸を鷲掴みにした。
真は驚き、手を振り払うと、飛びのいて、自分の胸を鷲掴みにした相手を見た。
「そう言うの、止めてくださいって言ってるじゃないですか。松本副隊長」
警戒して、乱菊を睨みながら真が強い口調で言った。
「もー。相変わらずお固いのねー。良いもの持ってるのに、持ち腐れよう」
乱菊が手をワキワキして、真に見せる。いつものやり取りなので、一角も弓親も気にしない。一護だけは、ちょっと照れていた。いつも乱菊にからかわれる真は、弓親の後ろに隠れた。
「なんの用だ松本」
一角が乱菊に聞いた。
「飲み会のお誘いでーす。何か皆辛気臭いから、パーッと飲みましょ!パーッと!」
京楽隊長と七緒でしょ、射場さんと、修平とー、と乱菊がメンバーをあげる中、真はコソッと帰ろうとしていた。
「あ!ちょっと待ちなさい!何帰ろうとしてるのよ!」
乱菊に見つかり、真は逃げの姿勢になった。
「私お酒飲めないので」
「駄目でーす!昨日いなかった人に拒否権はありませーん!」
は?と真の顔が歪む。痛いところを突かれた。今朝の男達より、タチが悪いじゃないか。しかも何で知ってるのこの人。
乱菊が真に近づき、顔を突き合わせた。酒臭い。乱菊に両腕を抑えられてしまい、身動きが取れなくなった。
「松本副隊長…飲んでますか?」
「水分なんだから、飲むに決まってるでしょ」
めちゃくちゃじゃねえか、と後ろで一角が言った。
「逃げたら…オッパイ揉むからね!」
そう言いながら、また真の胸をガシッと掴んだ。
真が咄嗟に振り解いて、腕で胸を隠す。
「もう揉んでんじゃねーか」
後ろで一角が言った。
「アンタ達絶対来なさいよ!一護も、織姫もよ!あとの二人も連れてきなさい!場所は門倉だからね!」
乱菊が四人に向かって力強く言った。そして真の腕を引きながら、道場から出ようとする。
「ちょ、ちょっと待ってください。どこに行くんですか」
真が足を踏ん張りながら乱菊に聞いた。乱菊は逃すまいと、腕を絡めてきた。
「あんたまだ有給中なんでしょ?やちるから聞いたわよ〜」
副隊長…。
「だから、あたしの買い物に付き合いなさいよ。どーせ、今日の飲み会も、色気もクソもない死覇装で来るんでしょ」
え。いつも皆死覇装で飲んでる…。
「着替えさせて、髪も顔も整えちゃうんだから!」
「何それ!楽しそう!乱菊さん僕もいく!」
要するに、真をおもちゃにしたいんだな。とその場にいた全員が思った。弓親まで乗ってきてしまった。
「だめー。今日は私の番。出来上がりを楽しみにしてなさい」
そう言うと、乱菊はじゃーねー、と手をヒラヒラさせて真を連れて行ってしまった。残された四人は、嵐が過ぎ去った出口を見つめていた。
「何か、すげー人だったな…」
一護がボソッと呟いた。織姫もハハッと苦笑いしていた。
「乱菊さん、時々ああして真を連れて行くよね。真は凄い嫌がってるのに、さすが図太いというか」
弓親も苦笑する。
「嫌がるから、来るんだろ。いじめっ子の心理だな」
全員真に同情した。
乱菊に連れられてきた真は、道場から離れると、もう普通に乱菊について歩いていた。
二人は無言のまま、人気の無い、雑木林に来た。先を歩いていた乱菊が立ち止まり、真の方に振り返った。今にも泣きそうな顔で、真に近寄り、真が腕を伸ばすと、何も言わず、真の肩に顔を埋めた。真も無言で乱菊を包んだ。
二人はしばらくそうしていた。
固まる真に織姫が慌てた。
「ご、ごめんなさい!嫌だった!?まことちゃん、かわいいから、そう呼びたくて!」
は?かわいい…?どういう意味??
頭が追いつかない真は、固まったまま織姫を見ていた。一角と弓親はゲラゲラ笑っている。
「織姫ちゃんよう。うちの隊のやつにかわいいは、褒め言葉になんねえよ」
一角が笑いながら織姫に言った。織姫はそーかなあ、と真の顔を覗き込んだ。
「まことちゃん、凄く綺麗な顔してると思うよ〜。目もパッチリしてるし、お肌も綺麗だし…」
織姫はどんどん真の容姿を褒めていく。真は言われる度に顔が赤くなり、汗をかいていく。一角も弓親も止めない。こんな扱いをされたのは初めてで、止めてください、と小さな声で言った。
「織姫の言うとおりよー、もっと女らしくしなさい」
後ろから、間の抜けた声がしたかと思ったら、両手が真の胸を鷲掴みにした。
真は驚き、手を振り払うと、飛びのいて、自分の胸を鷲掴みにした相手を見た。
「そう言うの、止めてくださいって言ってるじゃないですか。松本副隊長」
警戒して、乱菊を睨みながら真が強い口調で言った。
「もー。相変わらずお固いのねー。良いもの持ってるのに、持ち腐れよう」
乱菊が手をワキワキして、真に見せる。いつものやり取りなので、一角も弓親も気にしない。一護だけは、ちょっと照れていた。いつも乱菊にからかわれる真は、弓親の後ろに隠れた。
「なんの用だ松本」
一角が乱菊に聞いた。
「飲み会のお誘いでーす。何か皆辛気臭いから、パーッと飲みましょ!パーッと!」
京楽隊長と七緒でしょ、射場さんと、修平とー、と乱菊がメンバーをあげる中、真はコソッと帰ろうとしていた。
「あ!ちょっと待ちなさい!何帰ろうとしてるのよ!」
乱菊に見つかり、真は逃げの姿勢になった。
「私お酒飲めないので」
「駄目でーす!昨日いなかった人に拒否権はありませーん!」
は?と真の顔が歪む。痛いところを突かれた。今朝の男達より、タチが悪いじゃないか。しかも何で知ってるのこの人。
乱菊が真に近づき、顔を突き合わせた。酒臭い。乱菊に両腕を抑えられてしまい、身動きが取れなくなった。
「松本副隊長…飲んでますか?」
「水分なんだから、飲むに決まってるでしょ」
めちゃくちゃじゃねえか、と後ろで一角が言った。
「逃げたら…オッパイ揉むからね!」
そう言いながら、また真の胸をガシッと掴んだ。
真が咄嗟に振り解いて、腕で胸を隠す。
「もう揉んでんじゃねーか」
後ろで一角が言った。
「アンタ達絶対来なさいよ!一護も、織姫もよ!あとの二人も連れてきなさい!場所は門倉だからね!」
乱菊が四人に向かって力強く言った。そして真の腕を引きながら、道場から出ようとする。
「ちょ、ちょっと待ってください。どこに行くんですか」
真が足を踏ん張りながら乱菊に聞いた。乱菊は逃すまいと、腕を絡めてきた。
「あんたまだ有給中なんでしょ?やちるから聞いたわよ〜」
副隊長…。
「だから、あたしの買い物に付き合いなさいよ。どーせ、今日の飲み会も、色気もクソもない死覇装で来るんでしょ」
え。いつも皆死覇装で飲んでる…。
「着替えさせて、髪も顔も整えちゃうんだから!」
「何それ!楽しそう!乱菊さん僕もいく!」
要するに、真をおもちゃにしたいんだな。とその場にいた全員が思った。弓親まで乗ってきてしまった。
「だめー。今日は私の番。出来上がりを楽しみにしてなさい」
そう言うと、乱菊はじゃーねー、と手をヒラヒラさせて真を連れて行ってしまった。残された四人は、嵐が過ぎ去った出口を見つめていた。
「何か、すげー人だったな…」
一護がボソッと呟いた。織姫もハハッと苦笑いしていた。
「乱菊さん、時々ああして真を連れて行くよね。真は凄い嫌がってるのに、さすが図太いというか」
弓親も苦笑する。
「嫌がるから、来るんだろ。いじめっ子の心理だな」
全員真に同情した。
乱菊に連れられてきた真は、道場から離れると、もう普通に乱菊について歩いていた。
二人は無言のまま、人気の無い、雑木林に来た。先を歩いていた乱菊が立ち止まり、真の方に振り返った。今にも泣きそうな顔で、真に近寄り、真が腕を伸ばすと、何も言わず、真の肩に顔を埋めた。真も無言で乱菊を包んだ。
二人はしばらくそうしていた。