羽化にはまだ早い(弓親)
敵の出現と同時に、平子と雛森は隊舎を飛び出した。
真は隊舎の入り口で、隊列を組んで待機した。格好は、十一番隊時代の物に戻した。
隊士達は落ち着かない様に、ソワソワと歩き回った。
「戦いの前に疲れてしまうよ」
じっとしない隊士達に、真は優しく声をかけた。だが、皆、分かってはいるが落ち着かないという目で真を見た。
「三席は…怖くないんですか?」
隊士の一人が真に聞いた。真は、斬魄刀を握りしめ、一度目を閉じた。
「怖いよ」
「怖いなら引っ込んでな!!って言っても殺すけど!」
空から声がして見上げると、女のクインシーがこちらを見下ろしていた。その場にいた全員が、斬魄刀を抜き、構えた。
「いけ!」
真の掛け声と共に、4人が四方から切りかかった。それぞれが解放の名前を言っていたが、刀が敵に触れる前に全員が焼け落ち、灰になった。
「稲妻を切れると思ってんの?」
女は死神達を嘲り笑い、巨大な稲妻を真達に向かって落としてきた。
稲妻が落ちる瞬間、真が天領の爆破でギリギリで相殺し、辺りは砂埃で何も見えなくなった。
「何これ!何も見えないじゃ……」
「破道の四!白雷!!」
真が砂埃に隠れて破道を打ち、命中した。
「今のうちに、動ける者は逃げろ!!!」
「全員殺すって言ってんでしょ!!!」
傷をつけられ怒った敵が、無差別に雷を落とした。逃げ始めていた隊士が、次々と倒れていった。真にも命中し、地面に体を打ち付けた。皮膚が焼ける匂いがした。
「弱すぎ。今のうちに制圧して」
女が五番隊舎に背を向けて指を鳴らすと、どこから湧いたのか、白いマントに身を包み、黒のゴーグルで顔を隠した男達が隊舎周りを埋め尽くした。
雑兵に任せたか…甘く見られたな……。
真は立ち上がり、隊舎の入り口前を陣取った。
「…お待たせ、天領。餌だよ」
あの女も殺せ
「ごめん。まずはこっちだ」
真は天領を解放すると、雑兵を文字通り叩き潰した。
天領の鉄球の炎は消え、変わりに爆発の威力が格段に上がった。
「打て!!」
鉄球が敵に着くと同時に真が叫ぶと、敵の体に鉄球と同じ大きさの穴が空いた。一人だけでは無く、後ろにいた二人も貫通していた。
敵が倒れたら、迷いなく頭を潰した。
いいぞ、そうだ。これだ。昔を思い出すだろう?真。
天領がうっとりした声で、真に話かける。真には返事をする余裕は無かったが、天領の言う通り、昔を思い出していた。
たった一人で虚と戦った、あの時の夢心地そのものだ。
自分の血の流れが分かる、後ろに目がある、次の動きが無意識に分かる……。楽しい。もっと来い………。
真は、どんどん研ぎ澄まされる自分の感覚に酔いしれた。周りを気にする余裕は無く、真は一人で戦いを楽しんだ。
「おい……三席、笑ってないか…?」
怪我人を隊舎に運んでいた隊士が、戦う真を見ながら怯えたように言った。誰もが、真に対しての恐怖で、加勢しようとしていなかった。
猟奇的な笑みで敵を惨殺していく真は、五番隊士達が知っている、穏やかな真とはかけ離れていた。
雑兵を全滅させた真は、殺意に満ちた目をクインシーの女に向けた。
「雑魚を殺したくらいで、何いい気になってんの?」
女は半笑いで、真を馬鹿にするように言った。
真は気にしなかった。それよりも、主要戦力と思われるあの女と戦いたかった。心臓がバクバクしたが、それすら気持ち良く感じた。
あの女は、今のお前では殺される。卍解しろ。
「駄目だ!周りに隊士がいる」
黙れ!お前の意見など聞きたくない!卍解をするんだ!
鎖が熱を持ち、真の手が焼けた。
「っ…!皆早く隊舎に入れ!死ぬぞ!」
真は叫び、死人を運ぼうとしていた隊士も急いで下がらせた。真の手は火傷でただれ始めていた。
「何すんの?」
女は不敵な笑みで真を見た。
真は両手に鎖を持つと、卍解の構えをした。女は怪しく笑った。
「卍…」
「やめ給え、霧島三席」
突如涅マユリの声が、真の卍解を遮った。女は真の動きが止まったスキに、また雷を打ち込んだ。真は天領で受け止めたが、爆風を浴び、体が吹っ飛んだ。
地面に叩きつけられ、横たわる真の周りを、小さなハエが飛び回った。
「隊長4名の卍解が奪われた。これ以上、敵に卍解をやるんじゃないヨ」
ハエから涅マユリの声がした。何故涅が真の卍解を知っているのか不思議だったが、今は卍解無しで敵を倒す方法が分からなかった。
「卍解無しで、どうやって倒せばいいんですかっ」
切迫する状況への苛立ちから、真が声を荒げた。
「打開策を見つけるまで、堪えるんダヨ。この役立たずが」
「そんな…!」
言いたい事だけ告げて、ハエは飛んでいってしまった。取り残された真は、女を見ながら立ち上がった。
「…クソッ」
「何?卍解しないの?」
金属のネックレスを振り回しながら、女はイジワルく真に聞いた。そうか、あれで卍解を……。
「卍解無しで、お前を倒す」
「はあ?そんな死にたいの?」
真が鎖を構えると、中で天領が叫んだ。
この軟弱者め!!!
天領が突然火を吹き、真の腕が肩まで燃えた。
「ああああああッ!!!!」
激痛に耐えられず、真は叫び声をあげ、天領を手放した。
地面に落ちた天領は、元の刀と鞘に戻った。
「ぷっ!何?自滅してんじゃん」
腕をぶら下げて、やっとの思いで立っている真を、女は嘲り、地面に降りて近付いて来た。
腕が使えない真は、蹴りで立ち向かったが、容易く地面にねじ伏せられた。
「あんた、結構イイ顔してんじゃん。アタシのペットになるなら、命だけは助けてあげよっか?」
仰向けに横たわる真のみぞおちを、足で踏みつけながら、女が言った。苦しさと腕の痛みに呻きながら、真は女を睨んだ。
「悪いねお嬢さん……私は、女だよ」
「あっそ、ならいいや、死んで」
女が真の首に手をかけたその時、空気が突然熱くなった。山本元柳斎総隊長の霊圧が、ここまで伝わってきた。
冷静になった真は、更木の弱った霊圧を感じた。
「…更木隊長…………くっ!!!」
焼けただれた真の腕が、乾燥で皮膚が引きつり、激痛に苦しんだ。
女は真から目を離し、どこか遠くを見ていた。
「ユーハバッハ様…」
女は真に一撃を加えると、ユーハバッハの元へ走っていった。
手も足もでなかった………
全身に火傷を負い、薄れゆく意識の中で、真は悔しさに打ちひしがれた。
卍解さえ出来れば……。
そして意識を失った。
真は何とか一命を取り留め、次の日に目を覚ました。
真は隊舎の入り口で、隊列を組んで待機した。格好は、十一番隊時代の物に戻した。
隊士達は落ち着かない様に、ソワソワと歩き回った。
「戦いの前に疲れてしまうよ」
じっとしない隊士達に、真は優しく声をかけた。だが、皆、分かってはいるが落ち着かないという目で真を見た。
「三席は…怖くないんですか?」
隊士の一人が真に聞いた。真は、斬魄刀を握りしめ、一度目を閉じた。
「怖いよ」
「怖いなら引っ込んでな!!って言っても殺すけど!」
空から声がして見上げると、女のクインシーがこちらを見下ろしていた。その場にいた全員が、斬魄刀を抜き、構えた。
「いけ!」
真の掛け声と共に、4人が四方から切りかかった。それぞれが解放の名前を言っていたが、刀が敵に触れる前に全員が焼け落ち、灰になった。
「稲妻を切れると思ってんの?」
女は死神達を嘲り笑い、巨大な稲妻を真達に向かって落としてきた。
稲妻が落ちる瞬間、真が天領の爆破でギリギリで相殺し、辺りは砂埃で何も見えなくなった。
「何これ!何も見えないじゃ……」
「破道の四!白雷!!」
真が砂埃に隠れて破道を打ち、命中した。
「今のうちに、動ける者は逃げろ!!!」
「全員殺すって言ってんでしょ!!!」
傷をつけられ怒った敵が、無差別に雷を落とした。逃げ始めていた隊士が、次々と倒れていった。真にも命中し、地面に体を打ち付けた。皮膚が焼ける匂いがした。
「弱すぎ。今のうちに制圧して」
女が五番隊舎に背を向けて指を鳴らすと、どこから湧いたのか、白いマントに身を包み、黒のゴーグルで顔を隠した男達が隊舎周りを埋め尽くした。
雑兵に任せたか…甘く見られたな……。
真は立ち上がり、隊舎の入り口前を陣取った。
「…お待たせ、天領。餌だよ」
あの女も殺せ
「ごめん。まずはこっちだ」
真は天領を解放すると、雑兵を文字通り叩き潰した。
天領の鉄球の炎は消え、変わりに爆発の威力が格段に上がった。
「打て!!」
鉄球が敵に着くと同時に真が叫ぶと、敵の体に鉄球と同じ大きさの穴が空いた。一人だけでは無く、後ろにいた二人も貫通していた。
敵が倒れたら、迷いなく頭を潰した。
いいぞ、そうだ。これだ。昔を思い出すだろう?真。
天領がうっとりした声で、真に話かける。真には返事をする余裕は無かったが、天領の言う通り、昔を思い出していた。
たった一人で虚と戦った、あの時の夢心地そのものだ。
自分の血の流れが分かる、後ろに目がある、次の動きが無意識に分かる……。楽しい。もっと来い………。
真は、どんどん研ぎ澄まされる自分の感覚に酔いしれた。周りを気にする余裕は無く、真は一人で戦いを楽しんだ。
「おい……三席、笑ってないか…?」
怪我人を隊舎に運んでいた隊士が、戦う真を見ながら怯えたように言った。誰もが、真に対しての恐怖で、加勢しようとしていなかった。
猟奇的な笑みで敵を惨殺していく真は、五番隊士達が知っている、穏やかな真とはかけ離れていた。
雑兵を全滅させた真は、殺意に満ちた目をクインシーの女に向けた。
「雑魚を殺したくらいで、何いい気になってんの?」
女は半笑いで、真を馬鹿にするように言った。
真は気にしなかった。それよりも、主要戦力と思われるあの女と戦いたかった。心臓がバクバクしたが、それすら気持ち良く感じた。
あの女は、今のお前では殺される。卍解しろ。
「駄目だ!周りに隊士がいる」
黙れ!お前の意見など聞きたくない!卍解をするんだ!
鎖が熱を持ち、真の手が焼けた。
「っ…!皆早く隊舎に入れ!死ぬぞ!」
真は叫び、死人を運ぼうとしていた隊士も急いで下がらせた。真の手は火傷でただれ始めていた。
「何すんの?」
女は不敵な笑みで真を見た。
真は両手に鎖を持つと、卍解の構えをした。女は怪しく笑った。
「卍…」
「やめ給え、霧島三席」
突如涅マユリの声が、真の卍解を遮った。女は真の動きが止まったスキに、また雷を打ち込んだ。真は天領で受け止めたが、爆風を浴び、体が吹っ飛んだ。
地面に叩きつけられ、横たわる真の周りを、小さなハエが飛び回った。
「隊長4名の卍解が奪われた。これ以上、敵に卍解をやるんじゃないヨ」
ハエから涅マユリの声がした。何故涅が真の卍解を知っているのか不思議だったが、今は卍解無しで敵を倒す方法が分からなかった。
「卍解無しで、どうやって倒せばいいんですかっ」
切迫する状況への苛立ちから、真が声を荒げた。
「打開策を見つけるまで、堪えるんダヨ。この役立たずが」
「そんな…!」
言いたい事だけ告げて、ハエは飛んでいってしまった。取り残された真は、女を見ながら立ち上がった。
「…クソッ」
「何?卍解しないの?」
金属のネックレスを振り回しながら、女はイジワルく真に聞いた。そうか、あれで卍解を……。
「卍解無しで、お前を倒す」
「はあ?そんな死にたいの?」
真が鎖を構えると、中で天領が叫んだ。
この軟弱者め!!!
天領が突然火を吹き、真の腕が肩まで燃えた。
「ああああああッ!!!!」
激痛に耐えられず、真は叫び声をあげ、天領を手放した。
地面に落ちた天領は、元の刀と鞘に戻った。
「ぷっ!何?自滅してんじゃん」
腕をぶら下げて、やっとの思いで立っている真を、女は嘲り、地面に降りて近付いて来た。
腕が使えない真は、蹴りで立ち向かったが、容易く地面にねじ伏せられた。
「あんた、結構イイ顔してんじゃん。アタシのペットになるなら、命だけは助けてあげよっか?」
仰向けに横たわる真のみぞおちを、足で踏みつけながら、女が言った。苦しさと腕の痛みに呻きながら、真は女を睨んだ。
「悪いねお嬢さん……私は、女だよ」
「あっそ、ならいいや、死んで」
女が真の首に手をかけたその時、空気が突然熱くなった。山本元柳斎総隊長の霊圧が、ここまで伝わってきた。
冷静になった真は、更木の弱った霊圧を感じた。
「…更木隊長…………くっ!!!」
焼けただれた真の腕が、乾燥で皮膚が引きつり、激痛に苦しんだ。
女は真から目を離し、どこか遠くを見ていた。
「ユーハバッハ様…」
女は真に一撃を加えると、ユーハバッハの元へ走っていった。
手も足もでなかった………
全身に火傷を負い、薄れゆく意識の中で、真は悔しさに打ちひしがれた。
卍解さえ出来れば……。
そして意識を失った。
真は何とか一命を取り留め、次の日に目を覚ました。