羽化にはまだ早い(弓親)
五番隊士達が全員集められ、その前で真が新しい三席だと紹介された。
真は今までのひっつめ髪を降ろし、黒髪を肩の下まで垂らした。死白装も普通の袴を履いた。十一番隊にいた頃の真を知っている隊士は、本当にあの霧島真かと驚いた。
「しばらくは、戦いの前線には立たんと、副隊長の補佐、及び新人の指導に当たってもらうさかい。仲良うしたってな」
平子が紹介すると、隊士達から拍手が起こった。
四席就任初日に、勝ち抜き戦が始まった十一番隊とはえらい違いだな、と真は黙って考えていた。
紹介が終わると、数人の隊士がよって来た。
「元十一番隊だったんですよね?!凄いな〜!!」
「私、その時からファンです!」
「三席の稽古は何時から始まりますか?!」
皆が口々に好き勝手喋り、真が困っていると、雛森が助けてくれた。
「真さんが困ってますよ。今度歓迎会でゆっくり話しましょうね」
そう言うと雛森は、真を執務室に連れて行った。
真の机を用意してくれており、仕事の説明をしてくれた。何も説明なしに突然仕事を振られていた十一番隊時代を思い出して、違いに驚いた。
それから数週間、真にとって穏やかな日々が続いた。隊士達は仕事をサボらないし(隊長ぐらい)、喧嘩しないし、二日酔いのまま出勤しないし、書類の紛失も無かった。その事を雛森に話すと、哀れみの目で見られた。
「真さん、仕事が凄い早いなって思ってたんですが、苦労されたんですね………」
真にとって一番刺激を受けたのが、集団での戦闘訓練だった。複数で隊形を作り戦う事は、知識はあっても今までできなかった為、特に打ち込んだ。暇さえあれば書物を読み漁り、知識を頭に入れて、訓練に活かした。隊士達からも分かりやすいと評判で、他隊からも勉強に来る隊士がいた。
ある日、夜遅くまで残業していると、帰った筈の平子が執務室に来た。
「明かりがついてる思たら、何してんねん。早よ帰れ」
真は平子の方をチラリと見ただけで、また書類の整理を始めた。
「帰っても、やる事無いんで…」
「斬魄刀と話でもしたらええやん」
「…………………」
真は何も答えなかった、と言うより答えられなかった。また、平子に見透かされたと思っていた。
「……いつから、気づいていらしたんですか?」
「お前が、しばらく前線離脱したい言うた時から」
「体調が戻らないって言ったのに?」
「お前なら、前線出たい言うて、誰かに止められるはずやろ」
真は諦めたように、フー、と息を吐き、斬魄刀を机の上に置いた。平子は入り口にもたれたまま、真の斬魄刀を見た。
「………あの時からヘソ曲げて、話も、始界もさせてくれないんです」
「何でや」
「多分……天領は戦いたかったんだと思います。この子、いつもいつも戦いたいっていうから。私がやすやすと捕まったのが、許せないんだと思います」
「ふーん………」
「ふーんって………」
自分から聞いといて、興味の無さそうな平子に真は呆れた。
平子は耳をほじりながら、真を見た。
「落ち込んでる思うたけど、そうでも無さそうで安心したわ。ほなな、俺は寝るわ。おやすみさん」
平子は手をヒラヒラさせて帰って行った。
平子に言われるまで、自分の気持ちに気が付かなかった真は、斬魄刀を手に持ったまましばらく見つめていた。
それからまた日にちがたち、真は随分五番隊に慣れた。相変わらず天領は無反応だったが、後輩への指導が充実しており、あんなにも戦いたかった欲は何処に行ったんだといった感じだった。
穏やかな日々が続くと思っていたが、それは突然壊された。
笹木部副隊長がクインシーに卍解を奪われ、殉職した。
真は今までのひっつめ髪を降ろし、黒髪を肩の下まで垂らした。死白装も普通の袴を履いた。十一番隊にいた頃の真を知っている隊士は、本当にあの霧島真かと驚いた。
「しばらくは、戦いの前線には立たんと、副隊長の補佐、及び新人の指導に当たってもらうさかい。仲良うしたってな」
平子が紹介すると、隊士達から拍手が起こった。
四席就任初日に、勝ち抜き戦が始まった十一番隊とはえらい違いだな、と真は黙って考えていた。
紹介が終わると、数人の隊士がよって来た。
「元十一番隊だったんですよね?!凄いな〜!!」
「私、その時からファンです!」
「三席の稽古は何時から始まりますか?!」
皆が口々に好き勝手喋り、真が困っていると、雛森が助けてくれた。
「真さんが困ってますよ。今度歓迎会でゆっくり話しましょうね」
そう言うと雛森は、真を執務室に連れて行った。
真の机を用意してくれており、仕事の説明をしてくれた。何も説明なしに突然仕事を振られていた十一番隊時代を思い出して、違いに驚いた。
それから数週間、真にとって穏やかな日々が続いた。隊士達は仕事をサボらないし(隊長ぐらい)、喧嘩しないし、二日酔いのまま出勤しないし、書類の紛失も無かった。その事を雛森に話すと、哀れみの目で見られた。
「真さん、仕事が凄い早いなって思ってたんですが、苦労されたんですね………」
真にとって一番刺激を受けたのが、集団での戦闘訓練だった。複数で隊形を作り戦う事は、知識はあっても今までできなかった為、特に打ち込んだ。暇さえあれば書物を読み漁り、知識を頭に入れて、訓練に活かした。隊士達からも分かりやすいと評判で、他隊からも勉強に来る隊士がいた。
ある日、夜遅くまで残業していると、帰った筈の平子が執務室に来た。
「明かりがついてる思たら、何してんねん。早よ帰れ」
真は平子の方をチラリと見ただけで、また書類の整理を始めた。
「帰っても、やる事無いんで…」
「斬魄刀と話でもしたらええやん」
「…………………」
真は何も答えなかった、と言うより答えられなかった。また、平子に見透かされたと思っていた。
「……いつから、気づいていらしたんですか?」
「お前が、しばらく前線離脱したい言うた時から」
「体調が戻らないって言ったのに?」
「お前なら、前線出たい言うて、誰かに止められるはずやろ」
真は諦めたように、フー、と息を吐き、斬魄刀を机の上に置いた。平子は入り口にもたれたまま、真の斬魄刀を見た。
「………あの時からヘソ曲げて、話も、始界もさせてくれないんです」
「何でや」
「多分……天領は戦いたかったんだと思います。この子、いつもいつも戦いたいっていうから。私がやすやすと捕まったのが、許せないんだと思います」
「ふーん………」
「ふーんって………」
自分から聞いといて、興味の無さそうな平子に真は呆れた。
平子は耳をほじりながら、真を見た。
「落ち込んでる思うたけど、そうでも無さそうで安心したわ。ほなな、俺は寝るわ。おやすみさん」
平子は手をヒラヒラさせて帰って行った。
平子に言われるまで、自分の気持ちに気が付かなかった真は、斬魄刀を手に持ったまましばらく見つめていた。
それからまた日にちがたち、真は随分五番隊に慣れた。相変わらず天領は無反応だったが、後輩への指導が充実しており、あんなにも戦いたかった欲は何処に行ったんだといった感じだった。
穏やかな日々が続くと思っていたが、それは突然壊された。
笹木部副隊長がクインシーに卍解を奪われ、殉職した。