羽化にはまだ早い(弓親)
次の日には一角と雛森が来て、移隊の手続きをしてくれた。一角が、仕事の引き継ぎをしてくれるらしく、真が十一番隊に一度も足を踏み入れる事なく移隊できるようにしてくれた。
一角が帰って、雛森と二人残されると、真の力が抜けた。雛森がいてくれても、男性がいると嫌でも緊張する様になっていた。
「大丈夫ですか?霧島さん」
「少し、疲れて…」
雛森は真の様子を見て、優しく微笑んだ。
「…少し、わかります。気持ちの持って行き方が、分からないですよね」
雛森は、藍染に裏切られ憔悴していた時の事を真に語った。
「多分、平子隊長は、私と霧島さんを引き合わせようとしたんだと思います」
あの人なら分かる気がした。
「嫌な事思い出したり、何も手につかなくなったりする事もあると思いますが、その時は遠慮なく言ってくださいね」
雛森の笑顔に、真の緊張が解け、安心した笑顔になった。
「ありがとうございます、雛森副隊長」
「桃、でいいですよ」
「桃さん…私も、真で」
「真さん、これからよろしくお願いします」
二人はしばらく五番隊の事や、世間話をして過ごした。
真が五番隊へ復帰する前日、真と乱菊は現世に来ていた。
空座第一高校の校門前に立っていると、嫌でも人目を引いた。男子は乱菊の胸を凝視するし、女子は真を見てヒソヒソと囁きあっている。
「ねー、もう入って探しましょーよー」
待ち疲れた乱菊が真の腕にしがみつきながら、駄々をこねた。真は涼しい顔で乱菊の腕を剥がして、手を握った。
「乱菊が、前と違う制服を着たいって言ったから、校舎に入れないんだよ?」
「もう立つの疲れたー!抱っこしてー!」
「しょうがないな…」
真が乱菊をお姫様抱っこすると、観衆がざわめきたった。
「何してんだ、あんたら……」
「乱菊さん、真ちゃん?」
余りにも目立つ二人を見かねて、一護が出てきた。後ろには織姫もいた。
「あらー!遅いわよ一護、織姫ー!待ちくたびれたわ」
真に抱かれながら、乱菊が二人に手を振った。
「乱菊、私の勝手で待ってたんだから、そんな事言っちゃ駄目だよ」
「はあーい」
乱菊が、真の首に顔を埋めながら返事をした。真はそのまま、一護と織姫に向き直った。
「二人共、今から時間あるかな」
「……いや、まず目立つから降ろせよ」
乱菊は渋々真から離れ、真は改めて二人の方を向くと、一護と織姫は真の体への違和感を感じた。
「何か…真、でかくなってねえか?」
ああ、と真が自分の体を見た。
「技術開発局に頼んで、男の義骸にしてもらったんだ」
「えー!凄い、そんな事できるの?」
織姫が驚いて真をマジマジと見た。いつもは乱菊より背の低い真が、今日は乱菊より10cm以上高くなり、肩幅も体格もガッシリしていた。
「いいでしょー?この色男具合。イケメンを連れて歩くの夢だったのよねー」
乱菊が、真の体を触りながら自慢げに言った。
「で、今日はなんの用だよ?」
「そうそう!真がねー、あんた達二人にお礼がしたいってんで、来たのよー!」
「助けてもらったのに、お礼も言えなかったから。本当に、ありがとう」
一護と織姫は気にしないでほしいと言ったが、乱菊がほぼ無理矢理二人を引き連れて、近くのカフェに入って行った。
「もう体は大丈夫なのかよ?」
ケーキを食べながら、一護が真に聞いた。4人の机には、店のケーキ全種類が並べられ、織姫と乱菊は嬉しそうに頬張っていた。
「井上さんのおかげで、綺麗に治ったよ」
真が織姫に視線を投げると、織姫はえへへ、と頭をかいた。
「ホント、織姫がいてくれて助かったわー。真が生きていてくれて」
乱菊も嬉しそうに言った。
「まあ…元気そうでよかった」
一護が安心したように言った。織姫も、フォークを置いて、真をじっくり見た。
「本当に…私は、怪我しか治せなかったから…」
しんみりする織姫に、乱菊が体を乗り出して、織姫の頭を鷲掴みにした。
「またあんたはそう言う事を〜!真がありがとうって言ってんだから、素直にどういたしまして!って言えばいいのよ!」
「痛い痛い!痛いよ乱菊さん」
「乱菊…」
真がそっと乱菊の腕を掴み戻した。織姫の頭はグチャグチャになっていた。一護は呆れてため息をついたが、そう言えば、と切り出した。
「真はもう復帰したのか?」
コーヒーを飲もうとしていた真は、手を止めて、いや、まだ、と言った。
「明日から五番隊に復帰する」
「五番隊?!平子のとこか?!」
そうだと言って、真はコーヒーを飲んだ。一護は、真を助けに来た平子の事を思い出して、二人の関係に疑問を持った。
「あんた、平子と仲いいのか?」
「まあ………仲はいいよ」
そう言うと、隣で乱菊が嫉妬の目で見てきた為、真は、乱菊の次に、と付け足した。
「平子隊長って、フザケてる割には人の事よく見てるのよね〜。根がお人好しなのか、結構誰にでも目をかけるし」
「そうだね。考えてる事見抜いてくるし、怖いよ、あの人」
乱菊も真も、口を揃えて平子を褒めた。それを聞いた一護も織姫もへーと感心していた。
帰りに、一護と織姫にお土産のケーキを渡した。別れ際、織姫が真に近寄って、小さな声で囁いた。
「真ちゃんが、救護に運ばれた時、弓親さんが走って来たの…」
弓親の名前を聞いて、真は織姫の顔を見ながら固まった。乱菊は聞こえていないフリをして、そっぽを向いた。
「真ちゃんが、生きていてくれて嬉しいって、凄い真剣に言ってたよ…………って、ごめんね、変な事言って!」
織姫は真に謝ると、ケーキありがとう、と言って一護と帰って行った。
真は少しの間動かなかったが、すぐに乱菊に向き直り、行こうか、と促した。
ソウルソサエティに戻ると、真は髪を切りに行き、明日の初出勤に向けて早めに寝た。
一角が帰って、雛森と二人残されると、真の力が抜けた。雛森がいてくれても、男性がいると嫌でも緊張する様になっていた。
「大丈夫ですか?霧島さん」
「少し、疲れて…」
雛森は真の様子を見て、優しく微笑んだ。
「…少し、わかります。気持ちの持って行き方が、分からないですよね」
雛森は、藍染に裏切られ憔悴していた時の事を真に語った。
「多分、平子隊長は、私と霧島さんを引き合わせようとしたんだと思います」
あの人なら分かる気がした。
「嫌な事思い出したり、何も手につかなくなったりする事もあると思いますが、その時は遠慮なく言ってくださいね」
雛森の笑顔に、真の緊張が解け、安心した笑顔になった。
「ありがとうございます、雛森副隊長」
「桃、でいいですよ」
「桃さん…私も、真で」
「真さん、これからよろしくお願いします」
二人はしばらく五番隊の事や、世間話をして過ごした。
真が五番隊へ復帰する前日、真と乱菊は現世に来ていた。
空座第一高校の校門前に立っていると、嫌でも人目を引いた。男子は乱菊の胸を凝視するし、女子は真を見てヒソヒソと囁きあっている。
「ねー、もう入って探しましょーよー」
待ち疲れた乱菊が真の腕にしがみつきながら、駄々をこねた。真は涼しい顔で乱菊の腕を剥がして、手を握った。
「乱菊が、前と違う制服を着たいって言ったから、校舎に入れないんだよ?」
「もう立つの疲れたー!抱っこしてー!」
「しょうがないな…」
真が乱菊をお姫様抱っこすると、観衆がざわめきたった。
「何してんだ、あんたら……」
「乱菊さん、真ちゃん?」
余りにも目立つ二人を見かねて、一護が出てきた。後ろには織姫もいた。
「あらー!遅いわよ一護、織姫ー!待ちくたびれたわ」
真に抱かれながら、乱菊が二人に手を振った。
「乱菊、私の勝手で待ってたんだから、そんな事言っちゃ駄目だよ」
「はあーい」
乱菊が、真の首に顔を埋めながら返事をした。真はそのまま、一護と織姫に向き直った。
「二人共、今から時間あるかな」
「……いや、まず目立つから降ろせよ」
乱菊は渋々真から離れ、真は改めて二人の方を向くと、一護と織姫は真の体への違和感を感じた。
「何か…真、でかくなってねえか?」
ああ、と真が自分の体を見た。
「技術開発局に頼んで、男の義骸にしてもらったんだ」
「えー!凄い、そんな事できるの?」
織姫が驚いて真をマジマジと見た。いつもは乱菊より背の低い真が、今日は乱菊より10cm以上高くなり、肩幅も体格もガッシリしていた。
「いいでしょー?この色男具合。イケメンを連れて歩くの夢だったのよねー」
乱菊が、真の体を触りながら自慢げに言った。
「で、今日はなんの用だよ?」
「そうそう!真がねー、あんた達二人にお礼がしたいってんで、来たのよー!」
「助けてもらったのに、お礼も言えなかったから。本当に、ありがとう」
一護と織姫は気にしないでほしいと言ったが、乱菊がほぼ無理矢理二人を引き連れて、近くのカフェに入って行った。
「もう体は大丈夫なのかよ?」
ケーキを食べながら、一護が真に聞いた。4人の机には、店のケーキ全種類が並べられ、織姫と乱菊は嬉しそうに頬張っていた。
「井上さんのおかげで、綺麗に治ったよ」
真が織姫に視線を投げると、織姫はえへへ、と頭をかいた。
「ホント、織姫がいてくれて助かったわー。真が生きていてくれて」
乱菊も嬉しそうに言った。
「まあ…元気そうでよかった」
一護が安心したように言った。織姫も、フォークを置いて、真をじっくり見た。
「本当に…私は、怪我しか治せなかったから…」
しんみりする織姫に、乱菊が体を乗り出して、織姫の頭を鷲掴みにした。
「またあんたはそう言う事を〜!真がありがとうって言ってんだから、素直にどういたしまして!って言えばいいのよ!」
「痛い痛い!痛いよ乱菊さん」
「乱菊…」
真がそっと乱菊の腕を掴み戻した。織姫の頭はグチャグチャになっていた。一護は呆れてため息をついたが、そう言えば、と切り出した。
「真はもう復帰したのか?」
コーヒーを飲もうとしていた真は、手を止めて、いや、まだ、と言った。
「明日から五番隊に復帰する」
「五番隊?!平子のとこか?!」
そうだと言って、真はコーヒーを飲んだ。一護は、真を助けに来た平子の事を思い出して、二人の関係に疑問を持った。
「あんた、平子と仲いいのか?」
「まあ………仲はいいよ」
そう言うと、隣で乱菊が嫉妬の目で見てきた為、真は、乱菊の次に、と付け足した。
「平子隊長って、フザケてる割には人の事よく見てるのよね〜。根がお人好しなのか、結構誰にでも目をかけるし」
「そうだね。考えてる事見抜いてくるし、怖いよ、あの人」
乱菊も真も、口を揃えて平子を褒めた。それを聞いた一護も織姫もへーと感心していた。
帰りに、一護と織姫にお土産のケーキを渡した。別れ際、織姫が真に近寄って、小さな声で囁いた。
「真ちゃんが、救護に運ばれた時、弓親さんが走って来たの…」
弓親の名前を聞いて、真は織姫の顔を見ながら固まった。乱菊は聞こえていないフリをして、そっぽを向いた。
「真ちゃんが、生きていてくれて嬉しいって、凄い真剣に言ってたよ…………って、ごめんね、変な事言って!」
織姫は真に謝ると、ケーキありがとう、と言って一護と帰って行った。
真は少しの間動かなかったが、すぐに乱菊に向き直り、行こうか、と促した。
ソウルソサエティに戻ると、真は髪を切りに行き、明日の初出勤に向けて早めに寝た。