羽化にはまだ早い(弓親)
「わーい!まこまこのオッパイフカフカー!!!」
草鹿やちるの元気な声が、温泉全体に響き渡った。弓親の顔が青くなる。女湯の方から、そう言う事言わないでください、出ますよ、と声がしたて、二人の足音がして、消えた。どうやら、真とやちるは風呂から出たようだ。
やちるの言葉が聞こえた時、男湯は、狛村以外、一瞬全員が女湯とこちらを仕切る壁に目をやった。皆の思っていることが表情に出ていた。
今、オッパイって言ったか?
誰の?
霧島って、いつも首まで隠してる奴?
あの、男みたいな?
「あいつ、胸なんて板やんか」
静寂を破ったのは平子だった。全員声には出さないが、そうだったよな、と目配せをする。弓親には最悪の空気だった。想いを寄せる女が、自分以外の男達の注目の的になるなんて…しかも、体を想像されて。
「どういうこっちゃ。よっしゃ、確認したろ」
平子がいきなり湯から出て、壁に向かう。それを見て、京楽や檜佐木まで、じゃあ、と言って平子に続いた。
「ちょっ…やめてくださいよ!何してるんですか!!」
流石に見かねた弓親が、3人を止めようとするが、3人共聞いちゃいない。どっかに穴は無いかなど話している。
すると、今まで我関せずだった日番谷が声を発した。
「雛森ー、いるかー」
「ひ、日番谷君?!何?」
壁の向こうから、雛森の戸惑った声がする。平子が、まずい、と言う顔をした。日番谷に向かって、シー!とジェスチャーするが、日番谷は無視した。
「お前の所の隊長が、覗きしようとしてるぞ。後でちゃんと言っとけよ」
伊勢にも言っとけ、と告げて日番谷は湯から出て脱衣場に向かった。
「あいつ、自分だけええカッコしようとしてんで。あーゆー奴に限ってムッツ…ギ!」
上から桶が降ってきて、平子に命中した。平子がイッター!と上を見ると、壁の上から、鬼の形相で、乱菊と七緒が、平子、京楽、檜佐木を睨んでいた。京楽と檜佐木も上を見て、青ざめた。他の男達は、急いで手ぬぐいで体を隠した。
「あら〜、七緒ちゃん…いたの……イタ!」
七緒の投げた桶が京楽の顎に命中した。檜佐木にも、乱菊の桶が当たった。
「平子隊長…最低ですよ。最低ですよ!!」
壁の向こうで、雛森の軽蔑する声がした。
「2回も言うなや!あた!いたいいたい!」
桶は止まらず降ってくる。
「違うんすよ!!乱菊さん…イタッ!!俺たちは、女子風呂じゃなくて、霧島が……イタッ!!」
檜佐木が乱菊に弁解するが、逆に乱菊の怒りに火を注いだ。
「真を見ようとしたのね〜……!!!!絶対許さない!!!何で、あんた達は、止めないのよ!!!」
乱菊の怒りは3人だけで無く、男達全員に向いた。桶が、あっちにもこっちにも降り注いだ。
皆から遅れて、浮竹と仙太郎と白哉がお風呂にくると、ちょうど乱菊が男達全員に怒りをぶつけている所だった。
更木が呆れた様に、脱衣場に向かって来たので、浮竹が更木に何があったのか聞いた。
「知らねえな。餓鬼の揉め事だ。チッ、ゆっくり風呂にも入れやしねえ」
更木が脱衣場に入ろうとすると、後ろから来た弓親がスルリと追い越し、急いで着替えて出ていった。
髪もろくに乾かさず、弓親が風呂場から出ると、ロビーの縁側で真とやちるが寛いでいた。
弓親がそっと近づいて、真の胸元を確認すると、いつも通りにペッタンコで、浴衣の首元もキッチリ閉められていた。弓親はそれを見てホッと胸を撫でおろした。
「あ!ゆみちーだ!」
「あ、お疲れ様です、弓親さん」
真の髪は結ばれていたが、まだ濡れたままだった。自分の事など二の次で、やちるの世話をしたんだな、と弓親は思った。
「真、副隊長は僕が見とくから、髪乾かしてきなよ」
やちるの隣に座りながら、弓親が言った。真は髪が濡れたままになっている事を思い出し、弓親にお礼を言って風呂場に戻った。
「副隊長、梅ジュースが売ってましたよ。買いに行きませんか?」
「行くー!」
弓親はやちると歩きながら、出来れば男達が出てくる時と、真が出てくる時が重ならない事を願った。
「ったく、あいつらホント使えないんだから!」
真が、鏡の前で髪を乾かしていると、女性陣がプリプリしながら出てきた。乱菊は怒り、七緒と雛森は呆れ帰っている。
「恋次にも言っておきます。あのたわけめ」
ルキアまで怒っている。
「何かあったの?」
真が聞くと、全員が言いづらそうな顔をした。
「やちるが、あんたの胸の事、バカでかい声で言ったでしょ?そしたら、気になった馬鹿が覗こうとしたのよ」
真の顔が引きつる。この後、夕食で全員一部屋に集まるが、男性陣と顔を合わせると思うと気が滅入った。
「誰がやったの?」
「修平の馬鹿よ」
「うちの京楽隊長です」
「平子隊長も…」
七緒と雛森が、申し訳なさそうに頭を下げた。平子隊長までいたのか、と真は思った。
「あ、でも、日番谷君が教えてくれたので、未遂で済んだんですけど…」
「日番谷隊長、雛森にお熱だから、覗かれちゃ、たまんないもんねー」
「乱菊さん!違いますよ、幼馴染だから!」
乱菊は雛森をからかったあと、真にそっと耳打ちした。
「弓親も止めようとしてたわよ。聞こえた」
真の頭に、あの綺麗な髪を、乾かさず出てきた弓親の顔が浮かんだ。
草鹿やちるの元気な声が、温泉全体に響き渡った。弓親の顔が青くなる。女湯の方から、そう言う事言わないでください、出ますよ、と声がしたて、二人の足音がして、消えた。どうやら、真とやちるは風呂から出たようだ。
やちるの言葉が聞こえた時、男湯は、狛村以外、一瞬全員が女湯とこちらを仕切る壁に目をやった。皆の思っていることが表情に出ていた。
今、オッパイって言ったか?
誰の?
霧島って、いつも首まで隠してる奴?
あの、男みたいな?
「あいつ、胸なんて板やんか」
静寂を破ったのは平子だった。全員声には出さないが、そうだったよな、と目配せをする。弓親には最悪の空気だった。想いを寄せる女が、自分以外の男達の注目の的になるなんて…しかも、体を想像されて。
「どういうこっちゃ。よっしゃ、確認したろ」
平子がいきなり湯から出て、壁に向かう。それを見て、京楽や檜佐木まで、じゃあ、と言って平子に続いた。
「ちょっ…やめてくださいよ!何してるんですか!!」
流石に見かねた弓親が、3人を止めようとするが、3人共聞いちゃいない。どっかに穴は無いかなど話している。
すると、今まで我関せずだった日番谷が声を発した。
「雛森ー、いるかー」
「ひ、日番谷君?!何?」
壁の向こうから、雛森の戸惑った声がする。平子が、まずい、と言う顔をした。日番谷に向かって、シー!とジェスチャーするが、日番谷は無視した。
「お前の所の隊長が、覗きしようとしてるぞ。後でちゃんと言っとけよ」
伊勢にも言っとけ、と告げて日番谷は湯から出て脱衣場に向かった。
「あいつ、自分だけええカッコしようとしてんで。あーゆー奴に限ってムッツ…ギ!」
上から桶が降ってきて、平子に命中した。平子がイッター!と上を見ると、壁の上から、鬼の形相で、乱菊と七緒が、平子、京楽、檜佐木を睨んでいた。京楽と檜佐木も上を見て、青ざめた。他の男達は、急いで手ぬぐいで体を隠した。
「あら〜、七緒ちゃん…いたの……イタ!」
七緒の投げた桶が京楽の顎に命中した。檜佐木にも、乱菊の桶が当たった。
「平子隊長…最低ですよ。最低ですよ!!」
壁の向こうで、雛森の軽蔑する声がした。
「2回も言うなや!あた!いたいいたい!」
桶は止まらず降ってくる。
「違うんすよ!!乱菊さん…イタッ!!俺たちは、女子風呂じゃなくて、霧島が……イタッ!!」
檜佐木が乱菊に弁解するが、逆に乱菊の怒りに火を注いだ。
「真を見ようとしたのね〜……!!!!絶対許さない!!!何で、あんた達は、止めないのよ!!!」
乱菊の怒りは3人だけで無く、男達全員に向いた。桶が、あっちにもこっちにも降り注いだ。
皆から遅れて、浮竹と仙太郎と白哉がお風呂にくると、ちょうど乱菊が男達全員に怒りをぶつけている所だった。
更木が呆れた様に、脱衣場に向かって来たので、浮竹が更木に何があったのか聞いた。
「知らねえな。餓鬼の揉め事だ。チッ、ゆっくり風呂にも入れやしねえ」
更木が脱衣場に入ろうとすると、後ろから来た弓親がスルリと追い越し、急いで着替えて出ていった。
髪もろくに乾かさず、弓親が風呂場から出ると、ロビーの縁側で真とやちるが寛いでいた。
弓親がそっと近づいて、真の胸元を確認すると、いつも通りにペッタンコで、浴衣の首元もキッチリ閉められていた。弓親はそれを見てホッと胸を撫でおろした。
「あ!ゆみちーだ!」
「あ、お疲れ様です、弓親さん」
真の髪は結ばれていたが、まだ濡れたままだった。自分の事など二の次で、やちるの世話をしたんだな、と弓親は思った。
「真、副隊長は僕が見とくから、髪乾かしてきなよ」
やちるの隣に座りながら、弓親が言った。真は髪が濡れたままになっている事を思い出し、弓親にお礼を言って風呂場に戻った。
「副隊長、梅ジュースが売ってましたよ。買いに行きませんか?」
「行くー!」
弓親はやちると歩きながら、出来れば男達が出てくる時と、真が出てくる時が重ならない事を願った。
「ったく、あいつらホント使えないんだから!」
真が、鏡の前で髪を乾かしていると、女性陣がプリプリしながら出てきた。乱菊は怒り、七緒と雛森は呆れ帰っている。
「恋次にも言っておきます。あのたわけめ」
ルキアまで怒っている。
「何かあったの?」
真が聞くと、全員が言いづらそうな顔をした。
「やちるが、あんたの胸の事、バカでかい声で言ったでしょ?そしたら、気になった馬鹿が覗こうとしたのよ」
真の顔が引きつる。この後、夕食で全員一部屋に集まるが、男性陣と顔を合わせると思うと気が滅入った。
「誰がやったの?」
「修平の馬鹿よ」
「うちの京楽隊長です」
「平子隊長も…」
七緒と雛森が、申し訳なさそうに頭を下げた。平子隊長までいたのか、と真は思った。
「あ、でも、日番谷君が教えてくれたので、未遂で済んだんですけど…」
「日番谷隊長、雛森にお熱だから、覗かれちゃ、たまんないもんねー」
「乱菊さん!違いますよ、幼馴染だから!」
乱菊は雛森をからかったあと、真にそっと耳打ちした。
「弓親も止めようとしてたわよ。聞こえた」
真の頭に、あの綺麗な髪を、乾かさず出てきた弓親の顔が浮かんだ。