親友の好きな人(番外編)
こそこそ
「千草の様子がおかしい?」
ある夜、浮竹に呼び出された京楽は、居酒屋の個室で浮竹の口から思わぬ言葉を聞くことになった。
「そうなんだ…。伝令神機を見ながら笑っていたり、返信を待つように何回も確認したり……今日も、行き先を告げずにどこかに出かけて行ったんだ……。どう思う?」
浮竹は深刻そうに机の上で手を組み、眉間にシワを寄せていた。
「いやあ……どうって………ねえ…」
返答に困り、言葉を探していると、襖の向こう側から甲高い声が聞こえてきた。
「えー!彼氏が伝令神機見ながらニヤニヤしたり、デート中に何回も確認するの?それで?今日もどこに行ってるか分からないって!?それ、絶対に浮気だってー!!早く別れなよー!!!」
女性のこそこそしていない話を耳にして、浮竹の顔がサッと青くなった。
「イヤイヤイヤイヤ!!!!落ち着いて浮竹!!!千草に限ってそれは無いって!!!あの、氷の淑女だよ!!??」
「そ、そうだよな………千草に限ってそんな………」
浮竹が気を持ち直そうとしていると、先程の女の声がまた聞こえてきた。
「最近は出会い系ってのもあるからねー!自分が把握してる交友関係じゃないから、特定は難しいねー」
浮竹は襖を指さしながら、京楽に声にならない声で訴えた。
「だぁから、大丈夫だってー…………多分」
「多分て!!!!」
「まあ……帰ってきたら、確認してみなよ」
夜更けに帰宅した千草は、なんとなく上機嫌で、また伝令神機を見て微笑んでいた。
「お、お帰り、千草」
浮竹が声をかけると、千草は慌てて伝令神機を隠し、浮竹とは目を合わせずに、ただいま、と返事をしてから、足早に風呂に行ってしまった。
それを見た浮竹は、居酒屋での女達の話を思い出し、血の気が引いた。
翌日、京楽が雨乾堂を訪れると、ゲッソリした浮竹がおり、書類の書き損じが所々に散らばっていた。
「伝令神機を咄嗟に隠すし、俺と目を合わせようとしないんだ………」
「おやまあ………それは…………」
「浮気調査承りましょうかーー!!!??」
「わーーーー!!!????」
突然暖簾が開き、浦原喜助が登場した。浮竹と京楽は驚きのけ反った。
浦原は扇子を開き、いつもの飄々とした態度でヘラヘラ笑った。
「いやあ、総務官に領収書をお渡しに来たんですが、会えなかったので、旦那様の浮竹隊長の所に来てみたら、面白………ゲフンゲフン!!深刻そうなお話をしていらっしゃったので!!」
「今、面白って言わなかったかい?」
「それより浦原君、領収書なら総務の誰かに渡しておけば良かったんじゃないか?」
「え?今そこに焦点あてるの?」
「この領収書は、総務官の個人的なものなので」
「「個人的なもの?」」
浮竹も京楽も不思議がり、浦原から領収書を受け取って内容を確認すると、糸やビーズといった裁縫道具と共に、シ○バニアファミリーと書かれていた。
「「シ○バニアファミリー?????」」
「これって、うさぎとかくまの人形遊びのやつだよね?君んち、シ○バニアファミリー置いてあったっけ?」
京楽が浮竹に聞くと、浮竹はフルフルと首を振った。
「何故千草は浦原商店でシ○バニアファミリーを買ったんだ?」
「いや、アタシはお忙しい総務官に代わって買っただけでして、何に使うかとかは知らないんですよねえ。昨日取りにみえて、どこかに持っていったみたいですよ。対応したのは雨ですけど」
千草はシ○バニアファミリーを一体どこに持っていったのか二人が考えていると、浮竹の伝令神機が鳴った。画面を見ると、千草と出ている。
「千草か、どうかしたか?」
京楽と浦原は声を殺して、電話のやりとりを見守った。
「浮竹君、悪いんだけど、今日も帰りが遅くなると思うの」
「そうか、仕事か?」
「ううん、仕事じゃ無いんだけど、ちょっとね………。ごめんね」
千草はそれだけ言うと、一方的に電話を切ってしまった。
ツーツーツーと鳴る伝令神機を持ったまま放心する浮竹に、浦原が近寄り、肩に手を置いた。
「霊圧遮断マント、お貸ししましょうか?」
「………2つ貸してくれ………」
「え、それ僕のぶん?!」
終業のベルが鳴り、千草が総務部を出発すると、隠れて千草を待っていた3人は霊圧遮断マントを着て千草の後を追った。
「なんで浦原君もいるの?」
「そりゃあ、面白…ゲフンゲフン!!うちの商売がご夫婦の仲を壊してしまうなんて事、あってはいけませんから」
「面白って言ったよね?絶対」
「しっ、千草は穿界門に向かったぞ」
千草は穿界門前で義骸を受け取り、穿界門に入っていった。
「おや、あれはうちで購入した生殖活動可能義骸じゃないでスか」
「せ…!?何でそんなもの買ってるんだ!?」
「そりゃあ、必要だからでしょう」(浮竹隊長の分も買っていただいているんですが、面白いから黙っていましょう)
浮竹の顔はますます引きつり、目は千草に釘付けのまま千草を追って穿界門にフラフラと入っていった。
現世に来た千草は、公園で誰かを待っているようだった。
「だ、誰をまっているのだろう……」
浮竹は終始ソワソワしており、京楽はそんな浮竹を呆れたように見ていた。
「義骸が必要だという事は、人間でしょうねえ」
「人間といつ接点があった!?なあ、京楽!!千草はそんな現世とやりとりしていたか!?無かったよな!?」
「無かったよ。だから落ち着きなよ浮竹、みっともない」
「あらあら、京楽隊長からみっともないと言われてますよ、浮竹隊長」
そんなやり取りをしていると、夜の帳の向こう側から男性と思われる影が現れた。
「「「!!?!?!」」」
「あらら、あれって」
「もしかして……」
「石田雨竜君じゃないか!!??」
3人とも現状が理解できずに頭を捻っていると、千草と雨竜は並んでベンチに座り、千草の伝令神機を一緒に眺めていた。千草が何かを説明し、雨竜はふむふむと頷いていた。
「えーと……多分、浮気ではないから。良かったんじゃない?浮竹」
京楽がチラリと浮竹を見ると、浮竹は胸に手をやり何かを噛みしめるかのように目を瞑っていた。
「ありゃりゃ~?そこにいるのは、浦原さん、浮竹さん、京楽さんですか!?」
突然声をかけられ、3人が慌てて振り向くと、井上織姫が大きめのバッグを持って立っていた。
「みなさんも、千草さんのシ○バニアファミリー見に来たんですかぁ?」
「え!?浮竹君!?京楽君!?」
織姫の声で気がついた千草が慌てて立ち上がり、3人の姿を目視すると、みるみるうちに顔を赤くして、両手で顔を覆った。
「ち、千草………最近、様子がおかしいから、心配で………」
浮竹がマントを脱ぎながら、おずおずと進み出ると、千草は更に前かがみになり、顔を隠してしまった。
「あの、総務官さん、やはり伴侶の浮竹隊長にはキチンと説明してから出かけられた方が良かったんじゃ…」
雨竜も困ったように千草に話しかけた。千草はまだ心の整理がつかないようで、織姫を手招きすると、代弁を頼んだ。
「えーとですね、事の発端は、私と朽木さんなんです…」
織姫が言うには、最近女子高生の間でシ○バニアファミリーを好きにカスタマイズするのが流行っており、織姫が手芸部で一護やチャドや雨竜を模したシ○バニアファミリーを作ってルキアに見せた所、ルキアが気に入って恋次や白哉のシ○バニアファミリーも頼んだのだという。それを偶然千草が見つけて、自分も作ってみたいと、ルキアを経由して織姫に教えて貰っていた、という話だった。
「それで、浮竹隊長は完成したんですが、京楽隊長の羽織の花柄を刺繍する為に、今日は石田君を呼んだんです。私じゃ刺繍はできないので……」
「………いい歳して、こんなことしてるの知られたくなかったの………」
千草は顔を真っ赤にしながら、浮竹や京楽を見ずに言った。
「その、完成したという人形はあるのか?」
浮竹が聞くと、千草は一瞬固まったが、観念したように鞄から1体のシ○バニアファミリーを取り出した。
それは、白い長髪を被ったウサギで、丁寧に死白装と隊長羽織が着せられているうえ、手には双魚ノ理が握られていた。
「かわっ……!!!!」
「おやまあ、流石だねえ。器用なものだ」
「……京楽君はあと羽織だけだったの………」
そう言って取り出したクマの人形は、笠を被り、ちゃんとヒゲまでついていた。手にはちゃんと花天狂骨が握られている。
それを見た浮竹と京楽は苦笑いをしつつも、ホッと胸を撫で下ろした。
「いやー!これで一件落着ッスねえ!!良かった良かった!!!」
後日、完成した浮竹と京楽のシ○バニアファミリーは千草の仕事机に飾られ、それを見た女性死神の間でシ○バニアファミリーが流行り、浦原商店が御艇十三隊シ○バニアファミリーを売り出した事で飛ぶように売れた。
「千草の様子がおかしい?」
ある夜、浮竹に呼び出された京楽は、居酒屋の個室で浮竹の口から思わぬ言葉を聞くことになった。
「そうなんだ…。伝令神機を見ながら笑っていたり、返信を待つように何回も確認したり……今日も、行き先を告げずにどこかに出かけて行ったんだ……。どう思う?」
浮竹は深刻そうに机の上で手を組み、眉間にシワを寄せていた。
「いやあ……どうって………ねえ…」
返答に困り、言葉を探していると、襖の向こう側から甲高い声が聞こえてきた。
「えー!彼氏が伝令神機見ながらニヤニヤしたり、デート中に何回も確認するの?それで?今日もどこに行ってるか分からないって!?それ、絶対に浮気だってー!!早く別れなよー!!!」
女性のこそこそしていない話を耳にして、浮竹の顔がサッと青くなった。
「イヤイヤイヤイヤ!!!!落ち着いて浮竹!!!千草に限ってそれは無いって!!!あの、氷の淑女だよ!!??」
「そ、そうだよな………千草に限ってそんな………」
浮竹が気を持ち直そうとしていると、先程の女の声がまた聞こえてきた。
「最近は出会い系ってのもあるからねー!自分が把握してる交友関係じゃないから、特定は難しいねー」
浮竹は襖を指さしながら、京楽に声にならない声で訴えた。
「だぁから、大丈夫だってー…………多分」
「多分て!!!!」
「まあ……帰ってきたら、確認してみなよ」
夜更けに帰宅した千草は、なんとなく上機嫌で、また伝令神機を見て微笑んでいた。
「お、お帰り、千草」
浮竹が声をかけると、千草は慌てて伝令神機を隠し、浮竹とは目を合わせずに、ただいま、と返事をしてから、足早に風呂に行ってしまった。
それを見た浮竹は、居酒屋での女達の話を思い出し、血の気が引いた。
翌日、京楽が雨乾堂を訪れると、ゲッソリした浮竹がおり、書類の書き損じが所々に散らばっていた。
「伝令神機を咄嗟に隠すし、俺と目を合わせようとしないんだ………」
「おやまあ………それは…………」
「浮気調査承りましょうかーー!!!??」
「わーーーー!!!????」
突然暖簾が開き、浦原喜助が登場した。浮竹と京楽は驚きのけ反った。
浦原は扇子を開き、いつもの飄々とした態度でヘラヘラ笑った。
「いやあ、総務官に領収書をお渡しに来たんですが、会えなかったので、旦那様の浮竹隊長の所に来てみたら、面白………ゲフンゲフン!!深刻そうなお話をしていらっしゃったので!!」
「今、面白って言わなかったかい?」
「それより浦原君、領収書なら総務の誰かに渡しておけば良かったんじゃないか?」
「え?今そこに焦点あてるの?」
「この領収書は、総務官の個人的なものなので」
「「個人的なもの?」」
浮竹も京楽も不思議がり、浦原から領収書を受け取って内容を確認すると、糸やビーズといった裁縫道具と共に、シ○バニアファミリーと書かれていた。
「「シ○バニアファミリー?????」」
「これって、うさぎとかくまの人形遊びのやつだよね?君んち、シ○バニアファミリー置いてあったっけ?」
京楽が浮竹に聞くと、浮竹はフルフルと首を振った。
「何故千草は浦原商店でシ○バニアファミリーを買ったんだ?」
「いや、アタシはお忙しい総務官に代わって買っただけでして、何に使うかとかは知らないんですよねえ。昨日取りにみえて、どこかに持っていったみたいですよ。対応したのは雨ですけど」
千草はシ○バニアファミリーを一体どこに持っていったのか二人が考えていると、浮竹の伝令神機が鳴った。画面を見ると、千草と出ている。
「千草か、どうかしたか?」
京楽と浦原は声を殺して、電話のやりとりを見守った。
「浮竹君、悪いんだけど、今日も帰りが遅くなると思うの」
「そうか、仕事か?」
「ううん、仕事じゃ無いんだけど、ちょっとね………。ごめんね」
千草はそれだけ言うと、一方的に電話を切ってしまった。
ツーツーツーと鳴る伝令神機を持ったまま放心する浮竹に、浦原が近寄り、肩に手を置いた。
「霊圧遮断マント、お貸ししましょうか?」
「………2つ貸してくれ………」
「え、それ僕のぶん?!」
終業のベルが鳴り、千草が総務部を出発すると、隠れて千草を待っていた3人は霊圧遮断マントを着て千草の後を追った。
「なんで浦原君もいるの?」
「そりゃあ、面白…ゲフンゲフン!!うちの商売がご夫婦の仲を壊してしまうなんて事、あってはいけませんから」
「面白って言ったよね?絶対」
「しっ、千草は穿界門に向かったぞ」
千草は穿界門前で義骸を受け取り、穿界門に入っていった。
「おや、あれはうちで購入した生殖活動可能義骸じゃないでスか」
「せ…!?何でそんなもの買ってるんだ!?」
「そりゃあ、必要だからでしょう」(浮竹隊長の分も買っていただいているんですが、面白いから黙っていましょう)
浮竹の顔はますます引きつり、目は千草に釘付けのまま千草を追って穿界門にフラフラと入っていった。
現世に来た千草は、公園で誰かを待っているようだった。
「だ、誰をまっているのだろう……」
浮竹は終始ソワソワしており、京楽はそんな浮竹を呆れたように見ていた。
「義骸が必要だという事は、人間でしょうねえ」
「人間といつ接点があった!?なあ、京楽!!千草はそんな現世とやりとりしていたか!?無かったよな!?」
「無かったよ。だから落ち着きなよ浮竹、みっともない」
「あらあら、京楽隊長からみっともないと言われてますよ、浮竹隊長」
そんなやり取りをしていると、夜の帳の向こう側から男性と思われる影が現れた。
「「「!!?!?!」」」
「あらら、あれって」
「もしかして……」
「石田雨竜君じゃないか!!??」
3人とも現状が理解できずに頭を捻っていると、千草と雨竜は並んでベンチに座り、千草の伝令神機を一緒に眺めていた。千草が何かを説明し、雨竜はふむふむと頷いていた。
「えーと……多分、浮気ではないから。良かったんじゃない?浮竹」
京楽がチラリと浮竹を見ると、浮竹は胸に手をやり何かを噛みしめるかのように目を瞑っていた。
「ありゃりゃ~?そこにいるのは、浦原さん、浮竹さん、京楽さんですか!?」
突然声をかけられ、3人が慌てて振り向くと、井上織姫が大きめのバッグを持って立っていた。
「みなさんも、千草さんのシ○バニアファミリー見に来たんですかぁ?」
「え!?浮竹君!?京楽君!?」
織姫の声で気がついた千草が慌てて立ち上がり、3人の姿を目視すると、みるみるうちに顔を赤くして、両手で顔を覆った。
「ち、千草………最近、様子がおかしいから、心配で………」
浮竹がマントを脱ぎながら、おずおずと進み出ると、千草は更に前かがみになり、顔を隠してしまった。
「あの、総務官さん、やはり伴侶の浮竹隊長にはキチンと説明してから出かけられた方が良かったんじゃ…」
雨竜も困ったように千草に話しかけた。千草はまだ心の整理がつかないようで、織姫を手招きすると、代弁を頼んだ。
「えーとですね、事の発端は、私と朽木さんなんです…」
織姫が言うには、最近女子高生の間でシ○バニアファミリーを好きにカスタマイズするのが流行っており、織姫が手芸部で一護やチャドや雨竜を模したシ○バニアファミリーを作ってルキアに見せた所、ルキアが気に入って恋次や白哉のシ○バニアファミリーも頼んだのだという。それを偶然千草が見つけて、自分も作ってみたいと、ルキアを経由して織姫に教えて貰っていた、という話だった。
「それで、浮竹隊長は完成したんですが、京楽隊長の羽織の花柄を刺繍する為に、今日は石田君を呼んだんです。私じゃ刺繍はできないので……」
「………いい歳して、こんなことしてるの知られたくなかったの………」
千草は顔を真っ赤にしながら、浮竹や京楽を見ずに言った。
「その、完成したという人形はあるのか?」
浮竹が聞くと、千草は一瞬固まったが、観念したように鞄から1体のシ○バニアファミリーを取り出した。
それは、白い長髪を被ったウサギで、丁寧に死白装と隊長羽織が着せられているうえ、手には双魚ノ理が握られていた。
「かわっ……!!!!」
「おやまあ、流石だねえ。器用なものだ」
「……京楽君はあと羽織だけだったの………」
そう言って取り出したクマの人形は、笠を被り、ちゃんとヒゲまでついていた。手にはちゃんと花天狂骨が握られている。
それを見た浮竹と京楽は苦笑いをしつつも、ホッと胸を撫で下ろした。
「いやー!これで一件落着ッスねえ!!良かった良かった!!!」
後日、完成した浮竹と京楽のシ○バニアファミリーは千草の仕事机に飾られ、それを見た女性死神の間でシ○バニアファミリーが流行り、浦原商店が御艇十三隊シ○バニアファミリーを売り出した事で飛ぶように売れた。
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