臆病は大人(ローズ)
8.
ご飯を食べている間に、ローズの予想は確信に変わっていった。
目をなかなか合わせようとしないが、いざ目が合うと真っ赤になって逸らす。だが、ローズの話は嬉しそうに聴く……。というより、ローズの事をもっと知りたそうに、質問を投げかけてくる。箸は中々進んでおらず、口を開けるのを恥ずかしがってる風だった。
めちゃくちゃ僕の事好きじゃん。
なら、2年前に会った時のあの姿から、頑張ってここまで綺麗になったなかな…。思い上がりかも知れないけど、あながち間違いでも無いかも。
そう思うと、陸の健気さに心が打たれた。
この子。大事にしよ…。
食事を終えると、陸がヘヴィメタルを聴いた事をローズに伝えて来たので、ローズは音楽の話を理由に陸の連絡先を聞いた。
案の定、陸は喜んで連絡先を教えてくれた。
連絡先を交換し合うと、ローズは伝票を取り、会計に持っていった。
「あの、支払いは私が……」
「いいのいいの。僕は隊長だし、男だ。カッコつけさせてよ」
そう言うと、陸はまた顔を赤らめた。ローズには、陸の反応がいちいち可愛く感じた。
ここまで僕のする事を肯定してくれる子も、珍しいな……。
それから二人は、頻繁にメールを送りあった。初めは音楽や映画の話か中心だったが、次第に会話は日常の出来事になっていき、気がつくと、おはようからおやすみを送り合う様になっていった。
おはよう。今日は隊首会だ。総隊長の話が長くないといいなあ。
おはようございます。朝からお疲れ様です。老人が話が長くなるのは、何ででしょうね。不思議。
仕事中にギター弾いてたら、イヅルに取り上げられた。返してもらえない……。
吉良君厳しい。まじめに仕事して、早く返してもらいましょう。私も頑張っています。
まじめに仕事するから、甘い物食べに行かない?
行きます!定時で終わらせます!
わーい
陸ちゃんのおかげで充電できたよ。ありがとう。おやすみ。
鳳橋隊長のおかげで、明日も頑張れそうです。おやすみなさい。
まさかこんなにも親しくなれるとは思っていなかった陸は、毎日が幸せでキラキラした。明日も憧れのあの人から、おはよう、と送られて来るのが楽しみで、朝が待ち遠しかった。
関係を温めるとは、こういう事か……。幸せだ……。ありがとう協力してくれた皆さん。ありがとうプラダを着た悪魔。ありがとう、アン・ハサウェイ。
ある日の夜、ローズは平子と拳西と共に居酒屋にいた。
ローズは二人を前に、陸とのやりとりを話した。
「……前に、一緒に飲んだ、陸ちゃんっていたじゃん?黒髪ウェーブの」
「ああ、あの可愛らしい子ぉか」
「実は、あれからいろいろ?あって、最近毎日メールしてるんだけど」
ローズの話に、平子と拳西は目を見開いた。
「え、ホンマか」
「お前、気があんのか?あのガキに」
「それが分からないんだよ……。勘違いじゃなく、彼女は僕に好意を持ってくれてて、それは、やぶさかでは無い、と言うより、ハッキリ言って嬉しいんだけど…」
だけど?と、平子と拳西は首をかしげた。
「……あんな、若くて可愛い子に手を出していいのか、と言う罪悪感と、僕は彼女が好きなんじゃ無くて、ある程度可愛い子に好意を持ってもらったから、好きだと勘違いしているんじゃないか、という不安が、ある………」
気まずそうに机を見つめるローズを見て、平子と拳西が目互いにを合わせた。
「まあ、俺らとあの子らの年齢差で、真剣なお付き合い、は覚悟がいるわな」
「まず、向こうも、恋愛感情なのか憧れなのか……。ガキはそこらへん勘違いするからな」
拳西の言葉が、ローズにはシックリ来たらしく、目に一本芯が宿った。
「……確かに。それは、あるかも……」
「見極めろよ。本気になってからじゃ、遅えぞ」
「せやなあ。簡単に次に移れる若さは、俺らにはもう無いからなあ」
「……そうだね。ちょっと、冷静になってみるよ」
飲み会を解散してから、ローズは少し遠回りして帰り、頭を冷やした。
家について、伝令神機を開くと、陸からメールが入っていた。
飲み会楽しめましたか?私は明日から、虚討伐の遠征に行く事になりました。2、3日で帰ってきます。今日は早めに寝ます。おやすみなさい。
ローズは伝令神機を閉じ、ベッドに座った。酒のせいで、性欲が出てきていた。
「……エッチしたいなあ………」
男の性で、陸との好意を想像してしまったが、直ぐに罪悪感がそれを止めた。
たとえ想像でも、彼女を汚せない………。
案外、憧れを抱いているのは、自分なのかも知れない。
なりたい自分を全肯定してくれる、母親のような、女神のような存在に陸を引き上げてしまっている。性の対象では無く、心の支えなのだ。
もし彼女と恋仲になって、今より距離が近くなって、お互いの欠点が見えてきたら、彼女は今まで通り僕を肯定してくれるだろうか。離れないで居てくれるだろうか。そして僕は、耐えられるだろうか。彼女の若さに振り回されるのを……。
ご飯を食べている間に、ローズの予想は確信に変わっていった。
目をなかなか合わせようとしないが、いざ目が合うと真っ赤になって逸らす。だが、ローズの話は嬉しそうに聴く……。というより、ローズの事をもっと知りたそうに、質問を投げかけてくる。箸は中々進んでおらず、口を開けるのを恥ずかしがってる風だった。
めちゃくちゃ僕の事好きじゃん。
なら、2年前に会った時のあの姿から、頑張ってここまで綺麗になったなかな…。思い上がりかも知れないけど、あながち間違いでも無いかも。
そう思うと、陸の健気さに心が打たれた。
この子。大事にしよ…。
食事を終えると、陸がヘヴィメタルを聴いた事をローズに伝えて来たので、ローズは音楽の話を理由に陸の連絡先を聞いた。
案の定、陸は喜んで連絡先を教えてくれた。
連絡先を交換し合うと、ローズは伝票を取り、会計に持っていった。
「あの、支払いは私が……」
「いいのいいの。僕は隊長だし、男だ。カッコつけさせてよ」
そう言うと、陸はまた顔を赤らめた。ローズには、陸の反応がいちいち可愛く感じた。
ここまで僕のする事を肯定してくれる子も、珍しいな……。
それから二人は、頻繁にメールを送りあった。初めは音楽や映画の話か中心だったが、次第に会話は日常の出来事になっていき、気がつくと、おはようからおやすみを送り合う様になっていった。
おはよう。今日は隊首会だ。総隊長の話が長くないといいなあ。
おはようございます。朝からお疲れ様です。老人が話が長くなるのは、何ででしょうね。不思議。
仕事中にギター弾いてたら、イヅルに取り上げられた。返してもらえない……。
吉良君厳しい。まじめに仕事して、早く返してもらいましょう。私も頑張っています。
まじめに仕事するから、甘い物食べに行かない?
行きます!定時で終わらせます!
わーい
陸ちゃんのおかげで充電できたよ。ありがとう。おやすみ。
鳳橋隊長のおかげで、明日も頑張れそうです。おやすみなさい。
まさかこんなにも親しくなれるとは思っていなかった陸は、毎日が幸せでキラキラした。明日も憧れのあの人から、おはよう、と送られて来るのが楽しみで、朝が待ち遠しかった。
関係を温めるとは、こういう事か……。幸せだ……。ありがとう協力してくれた皆さん。ありがとうプラダを着た悪魔。ありがとう、アン・ハサウェイ。
ある日の夜、ローズは平子と拳西と共に居酒屋にいた。
ローズは二人を前に、陸とのやりとりを話した。
「……前に、一緒に飲んだ、陸ちゃんっていたじゃん?黒髪ウェーブの」
「ああ、あの可愛らしい子ぉか」
「実は、あれからいろいろ?あって、最近毎日メールしてるんだけど」
ローズの話に、平子と拳西は目を見開いた。
「え、ホンマか」
「お前、気があんのか?あのガキに」
「それが分からないんだよ……。勘違いじゃなく、彼女は僕に好意を持ってくれてて、それは、やぶさかでは無い、と言うより、ハッキリ言って嬉しいんだけど…」
だけど?と、平子と拳西は首をかしげた。
「……あんな、若くて可愛い子に手を出していいのか、と言う罪悪感と、僕は彼女が好きなんじゃ無くて、ある程度可愛い子に好意を持ってもらったから、好きだと勘違いしているんじゃないか、という不安が、ある………」
気まずそうに机を見つめるローズを見て、平子と拳西が目互いにを合わせた。
「まあ、俺らとあの子らの年齢差で、真剣なお付き合い、は覚悟がいるわな」
「まず、向こうも、恋愛感情なのか憧れなのか……。ガキはそこらへん勘違いするからな」
拳西の言葉が、ローズにはシックリ来たらしく、目に一本芯が宿った。
「……確かに。それは、あるかも……」
「見極めろよ。本気になってからじゃ、遅えぞ」
「せやなあ。簡単に次に移れる若さは、俺らにはもう無いからなあ」
「……そうだね。ちょっと、冷静になってみるよ」
飲み会を解散してから、ローズは少し遠回りして帰り、頭を冷やした。
家について、伝令神機を開くと、陸からメールが入っていた。
飲み会楽しめましたか?私は明日から、虚討伐の遠征に行く事になりました。2、3日で帰ってきます。今日は早めに寝ます。おやすみなさい。
ローズは伝令神機を閉じ、ベッドに座った。酒のせいで、性欲が出てきていた。
「……エッチしたいなあ………」
男の性で、陸との好意を想像してしまったが、直ぐに罪悪感がそれを止めた。
たとえ想像でも、彼女を汚せない………。
案外、憧れを抱いているのは、自分なのかも知れない。
なりたい自分を全肯定してくれる、母親のような、女神のような存在に陸を引き上げてしまっている。性の対象では無く、心の支えなのだ。
もし彼女と恋仲になって、今より距離が近くなって、お互いの欠点が見えてきたら、彼女は今まで通り僕を肯定してくれるだろうか。離れないで居てくれるだろうか。そして僕は、耐えられるだろうか。彼女の若さに振り回されるのを……。