親友の好きな人(京楽 浮竹)
53.前日
「黒崎さんなら、きっと大丈夫ッスよ。1ヶ月、平子さん達の元で修行していたんスから」
突然の報告に、千草は言葉を失った。
待って、今、誰って言ったの…。
「じゃ、アタシはアタシでやる事あるんで。お邪魔しました〜」
「あ、ちょっと!浦原君…………!」
プッ!ツーツーツー…………。
千草は受話器を握りしめたま、立ち尽くした。
平子君達は生きてる……。何をしたの?黒崎一護に……。何で皆揃いも揃って、子どもを利用するの……。本当に、馬鹿ばっかりよ。
千草は深呼吸をしてから受話器を戻し、自分の壊れた机に戻った。
今すぐにでも、虚圏に子ども達を助けに行きたい。阿散井君や、ルキアさんみたいに、何もかもかなぐり捨てて、やりたいようにやれればどれだけいいか。今だけは、総務に来たのを後悔するわ………。
阿散井君とルキアさんは、後で処罰を受けるのかしら…。私が行かせた事にしようか…。いえ、それじゃあ、責任の所在が分からなくなるわ。
そんな事をグダグダ考えていたら、総務の扉が開き、浮竹と京楽が顔を出した。
「千草、飯食ったか?」
「僕ら今から行こうと思ってるけど」
浮竹と京楽が、重たい雰囲気の千草に明るく声をかけた。死んでいた千草の目が、少しだけ蘇った。
「総務官、行ってきてください。ここは、私達でやるので」
補佐官が、優しい声で千草に言った。周りの部下達も、笑顔で頷いた。
「決戦前に、浮竹隊長も総務官と過ごしたいですよ」
「その通りです。行ってください、総務官」
「みんな…………。ありがとう…………。ありがたく、行かせてもらうわ」
千草は眉を下げて微笑み、席から立ち上がった。
「何か僕、お邪魔っぽいけど、居ていいよね?」
苦笑いをする京楽の肩を、千草が掴んだ。
「当たり前よ。3人で過ごさないと意味無いわ」
「そうだぞ、京楽。お前が居なくてどうする」
京楽が千草と浮竹に肩を掴まれ、連行される様にして、3人は総務を後にした。
3人の不思議な関係に、総務の全員が不思議そうに扉を見つめていた。
「更木だけじゃ無く、白哉と涅と、卯ノ花隊長も虚圏に行くそうだ」
「え?」
席に着くなり、浮竹が千草に説明した。戦力の分散に、千草は眉をしかめた。千草の顔を見て、京楽が苦笑いをした。
「……阿散井君に、ルキアちゃん。現世の3人に3人の隊長達か……本当は藍染に費やした方がいいんだろうけど。朽木隊長も涅隊長も、聞きゃしないからねえ」
「………割と痛い目みて帰ってこれば良いと思うわ」
冷淡な千草に、二人は苦笑いをした。
「まあ、大丈夫だ。こっちには、俺達二人に、元柳斎先生もいる」
自信たっぷりに笑う浮竹を見て、千草はさらに眉間のシワが深くなった。
「………今ばっかりは、総務になったのを後悔するわ。私も戦いたい。待つなんて、辛いだけだし」
「……まあ、そうだよね」
「学生の時のを思い出すわね」
浮竹と京楽が、千草を置いて戦いに行った時の事だ。
浮竹と京楽は互いに目を合わせて、気まずそうに頭や顎を掻いた。
「もう面子なんて守らないよ」
京楽が笑って、優しく言った。千草は無表情で京楽を見た。
「無理はしないさ」
浮竹も笑ったが、千草はまだ無表情だ。
「……何が起きても、私が御艇を蘇らせるけど。死んでいいって訳じゃないからね」
「分かってる」
二人は同時に頷いた。
「………ん」
机から離れて、千草はしかめ面で両腕を広げた。京楽も浮竹も、子どもみたいに甘える千草に困ったように笑って、左右から千草を抱きしめた。
この3人だけに許された、特別なハグだった。
「生きて帰ってきてね」
「ああ」
「うん」
夜明けと共にガルガンタは開通し、虚圏組が旅立って行った。残った隊長格は、センカイ門前に待機していた。千草も見送りに来ており、千草の横には、七緒がいた。
戦闘中は、千草は精霊艇内で守られる。七緒の結界の中で、戦争が終わるのをじっと待たなければならない。全ては御艇の為とはいえ、辛い使命だと思った。
「伊勢副隊長、何があろうと、千草を結界からだすでないぞ」
元柳斎は、七緒に再三念を押していた。千草は、少し離れて、聞かないようにした。聞いたと自覚したら、焦燥感が顔に出てしまいそうだった。
藍染の強さを知っているからこそ、最悪の結末……自分一人だけ残される可能性が非常に高いと分かっている。京楽の大切な姪すら、助けられないかも知れないと思うと、今から胸が痛んだ。
千草は一度目をつぶり、心を落ち着けると、隊長格達を見渡した。
大丈夫。皆強い。浮竹君も、京楽君もいる。元柳斎様もいる。浦原君も、夜一さんも、一心君も駆けつける。大丈夫。皆が安心して出立できるよう、私がしっかりしないと。
「元柳斎様」
千草は、七緒と話し終わった元柳斎に声をかけた。元柳斎は千草を見て、うむ、と頷いた。それを見て、千草は微笑んだ。
「ご武運を」
杖に手を置く元柳斎の手に自分の手を重ね、千草は真っ直ぐ目を見て言った。元柳斎は娘にするように、千草の頭に手を置き、2回優しく叩いた。
「うむ」
元柳斎は、『後はまかせた』とは言わなかった。千草を働かせるような結末は無い、と言っているようだった。
それを見た浮竹と京楽がやってきた。
「山じいだけずるいじゃないか。千草僕にも」
「俺も俺も」
千草は笑いながら浮竹と京楽の手を取り、ご武運を、と言った。浮竹も京楽も、元柳斎のマネをして、千草の頭を撫でた。
離れた所で、砕蜂が舌打ちをした。(緊張感の無い奴らめ)
少しして、隊長格達が現世に向かい、千草は総務で結界に守られた。
「黒崎さんなら、きっと大丈夫ッスよ。1ヶ月、平子さん達の元で修行していたんスから」
突然の報告に、千草は言葉を失った。
待って、今、誰って言ったの…。
「じゃ、アタシはアタシでやる事あるんで。お邪魔しました〜」
「あ、ちょっと!浦原君…………!」
プッ!ツーツーツー…………。
千草は受話器を握りしめたま、立ち尽くした。
平子君達は生きてる……。何をしたの?黒崎一護に……。何で皆揃いも揃って、子どもを利用するの……。本当に、馬鹿ばっかりよ。
千草は深呼吸をしてから受話器を戻し、自分の壊れた机に戻った。
今すぐにでも、虚圏に子ども達を助けに行きたい。阿散井君や、ルキアさんみたいに、何もかもかなぐり捨てて、やりたいようにやれればどれだけいいか。今だけは、総務に来たのを後悔するわ………。
阿散井君とルキアさんは、後で処罰を受けるのかしら…。私が行かせた事にしようか…。いえ、それじゃあ、責任の所在が分からなくなるわ。
そんな事をグダグダ考えていたら、総務の扉が開き、浮竹と京楽が顔を出した。
「千草、飯食ったか?」
「僕ら今から行こうと思ってるけど」
浮竹と京楽が、重たい雰囲気の千草に明るく声をかけた。死んでいた千草の目が、少しだけ蘇った。
「総務官、行ってきてください。ここは、私達でやるので」
補佐官が、優しい声で千草に言った。周りの部下達も、笑顔で頷いた。
「決戦前に、浮竹隊長も総務官と過ごしたいですよ」
「その通りです。行ってください、総務官」
「みんな…………。ありがとう…………。ありがたく、行かせてもらうわ」
千草は眉を下げて微笑み、席から立ち上がった。
「何か僕、お邪魔っぽいけど、居ていいよね?」
苦笑いをする京楽の肩を、千草が掴んだ。
「当たり前よ。3人で過ごさないと意味無いわ」
「そうだぞ、京楽。お前が居なくてどうする」
京楽が千草と浮竹に肩を掴まれ、連行される様にして、3人は総務を後にした。
3人の不思議な関係に、総務の全員が不思議そうに扉を見つめていた。
「更木だけじゃ無く、白哉と涅と、卯ノ花隊長も虚圏に行くそうだ」
「え?」
席に着くなり、浮竹が千草に説明した。戦力の分散に、千草は眉をしかめた。千草の顔を見て、京楽が苦笑いをした。
「……阿散井君に、ルキアちゃん。現世の3人に3人の隊長達か……本当は藍染に費やした方がいいんだろうけど。朽木隊長も涅隊長も、聞きゃしないからねえ」
「………割と痛い目みて帰ってこれば良いと思うわ」
冷淡な千草に、二人は苦笑いをした。
「まあ、大丈夫だ。こっちには、俺達二人に、元柳斎先生もいる」
自信たっぷりに笑う浮竹を見て、千草はさらに眉間のシワが深くなった。
「………今ばっかりは、総務になったのを後悔するわ。私も戦いたい。待つなんて、辛いだけだし」
「……まあ、そうだよね」
「学生の時のを思い出すわね」
浮竹と京楽が、千草を置いて戦いに行った時の事だ。
浮竹と京楽は互いに目を合わせて、気まずそうに頭や顎を掻いた。
「もう面子なんて守らないよ」
京楽が笑って、優しく言った。千草は無表情で京楽を見た。
「無理はしないさ」
浮竹も笑ったが、千草はまだ無表情だ。
「……何が起きても、私が御艇を蘇らせるけど。死んでいいって訳じゃないからね」
「分かってる」
二人は同時に頷いた。
「………ん」
机から離れて、千草はしかめ面で両腕を広げた。京楽も浮竹も、子どもみたいに甘える千草に困ったように笑って、左右から千草を抱きしめた。
この3人だけに許された、特別なハグだった。
「生きて帰ってきてね」
「ああ」
「うん」
夜明けと共にガルガンタは開通し、虚圏組が旅立って行った。残った隊長格は、センカイ門前に待機していた。千草も見送りに来ており、千草の横には、七緒がいた。
戦闘中は、千草は精霊艇内で守られる。七緒の結界の中で、戦争が終わるのをじっと待たなければならない。全ては御艇の為とはいえ、辛い使命だと思った。
「伊勢副隊長、何があろうと、千草を結界からだすでないぞ」
元柳斎は、七緒に再三念を押していた。千草は、少し離れて、聞かないようにした。聞いたと自覚したら、焦燥感が顔に出てしまいそうだった。
藍染の強さを知っているからこそ、最悪の結末……自分一人だけ残される可能性が非常に高いと分かっている。京楽の大切な姪すら、助けられないかも知れないと思うと、今から胸が痛んだ。
千草は一度目をつぶり、心を落ち着けると、隊長格達を見渡した。
大丈夫。皆強い。浮竹君も、京楽君もいる。元柳斎様もいる。浦原君も、夜一さんも、一心君も駆けつける。大丈夫。皆が安心して出立できるよう、私がしっかりしないと。
「元柳斎様」
千草は、七緒と話し終わった元柳斎に声をかけた。元柳斎は千草を見て、うむ、と頷いた。それを見て、千草は微笑んだ。
「ご武運を」
杖に手を置く元柳斎の手に自分の手を重ね、千草は真っ直ぐ目を見て言った。元柳斎は娘にするように、千草の頭に手を置き、2回優しく叩いた。
「うむ」
元柳斎は、『後はまかせた』とは言わなかった。千草を働かせるような結末は無い、と言っているようだった。
それを見た浮竹と京楽がやってきた。
「山じいだけずるいじゃないか。千草僕にも」
「俺も俺も」
千草は笑いながら浮竹と京楽の手を取り、ご武運を、と言った。浮竹も京楽も、元柳斎のマネをして、千草の頭を撫でた。
離れた所で、砕蜂が舌打ちをした。(緊張感の無い奴らめ)
少しして、隊長格達が現世に向かい、千草は総務で結界に守られた。