親友の好きな人(京楽 浮竹)
51.井上織姫
井上織姫が精霊艇にやってきた。
ルキアが織姫と一緒に総務に来て、千草に織姫を会わせた。
「……しばらく、井上織姫の滞在許可をいただきたいのですが……」
ルキアは緊張したように、千草に申し出た。
千草は表情を変えずに、ルキアと織姫を見た。
「滞在理由は?」
「しゅ、修行です!二人で、今度の冬の決戦に向けて、力をつけます!!」
千草は引き出しから許可証を出すと、ルキアの説明をサラサラと筆書きし、ハンコを押した。
ルキアと織姫は、余りにもアッサリ許可が出て、呆気に取られていた。
「浮竹君は、井上さんの事知ってるの?」
許可証を渡しながら、千草がルキアに聞いた。
「いえ、まだ…最初にここに来まして……これから雨乾堂に参ります」
「そう。浮竹君なら、きっと力になってくれるわ」
「はい」
ルキアと織姫は千草にお礼を言うと、雨乾堂に向かった。
道中、織姫がドキドキしながら、ルキアに小声で質問をした。
「ねえねえ、千草さんと浮竹隊長さんって、どういう関係か、朽木さん知ってる?」
ルキアは織姫を見て、フッと得意げに笑った。
「お二人は、100年の恋人だ。素晴らしい愛だろう」
織姫は両手で口を覆って、目を輝かせた。
「や、やっぱり〜!!!?そうだと思ったの〜!!!100年の恋人かあ〜。素敵だなあ。いいなあ。好きな人とずっと一緒にいられるなんて……」
「そうだな。井上も、頑張れ!!」
「や、やだなあ!!朽木さん!!!そんな!!!」
「私は応援しているぞ」
「ふぁ〜!!!ありがとうございます〜!!」
その日の夜、千草が浮竹の家に行くと、十三番隊の隊舎裏で二人が修行を始めた事を聞いた。
「朽木がな、井上織姫と修行するから、演習場を貸してほしいと、自分で言ってきたんだ」
ベッドで横になって、千草を後ろから抱きしめながら、浮竹が嬉しそうに話した。
「消極的だったアイツが、他人を自分から誘えるようになったなんてなあ……」
「随分成長したのね。いい事だわ」
「そうなんだ。現世に送り出して良かったよ」
「前は後悔してたけどね」
「結果良ければ、だよ」
「フフ、そうね」
「明日見に来ないか?凄く楽しそうにやってるんだよ」
浮竹の誘いに千草はすぐには返事をせず、体を回して、浮竹の顔をじっと見た。
「……とっても見に行きたいけど、今、『絵』の蓄えをしているから、時間が無いの」
「ああ、そうだったな。休憩したくなったら来いよ」
「うん。そうする」
我ながら上手く嘘がつけたと思う。
ルキアも、織姫も、千草からしたらとっても可愛い娘達だ。そんな子達を見ていたら、無くした筈の欲が復活してしまう。また、子どもが欲しくなってしまう。だから見たくないのだ。
欲は、隠さなければならない。
その夜は、上手くやり過ごし、いつも通りの時間を過ごした。
それからも、何度も演習場に足を運びたくなったが、なんとか我慢をした。
そして数日後、現世への破面の出現を観測し、ルキアと織姫が精霊艇を後にした。だが、織姫は現世に着くことなく霊圧が探知出来なくなり、帰還した隊士によって、織姫が破面と姿を消した事が語られた。
誰よりも責任を感じていたのは、浮竹だった。
気落ちする浮竹に声をかける暇もなく、乱菊から千草に連絡が入り、破面の戦闘準備が整っていると報告を受けた。
「報告ありがとう。所で、井上織姫はそこにいる?」
「織姫?いえ、ここには…」
「そう……」
「どういう事ですか?」
すると電話の向こうから、日番谷の声がし、乱菊が今の会話を日番谷に伝えた。
直ぐに日番谷が電話を代わった。
「松本から聞きました。井上織姫は今どこに?」
「明言は出来ないけど、コチラにはいないわ。黒崎一護は、今話せる?」
「いえ、アイツは重傷で、意識が戻らないと朽木から連絡がありました。起こしますか?」
「そうね、明日朝イチで、霊波通信機のある部屋に連れてきて」
「御意……」
千草は電話を切ると、直ぐに元柳斎の元へ報告に向かった。
そこには浮竹もいた。
「井上、織姫は……?」
僅かな希望にすがるような顔で、浮竹が千草に聞いたが、千草は首を横に振る事しかできなかった。浮竹は現実を受け止める様に、目を瞑った。
「……可能性は低いけど……」
浮竹を見ずに、千草が言った。
「明日の朝、黒崎一護に聞いてみるわ」
浮竹は元柳斎に向き直り、真剣な眼差しで懇願した。
「…黒崎一護への説明は、俺にさせて下さい」
「…うむ。よかろう。して、千草、破面の進軍は何時の予想か」
元柳斎は浮竹を飛び越えて、千草に尋ねた。
「井上織姫の能力を目的とした拉致だとしたら、明日、明後日にもあり得るかと……」
「ガルガンタの調整は?」
「九割五分」
「フム……」
元柳斎は一度考える仕草をし、片目を開いた。
「日番谷先遣隊を、明日にでも連れ戻せ」
「……黒崎一護はどうしますか」
「無謀な挙に出んとも限らん、儂から留置く。先遣隊が命令に背く可能性を鑑み、更木、朽木、両隊長に先遣隊強制帰還指示と、刃向かえば力ずくで返せと伝えよ」
「……俺から伝えよう」
浮竹はそう言って、部屋から出て行った。残された千草は、もう一度元柳斎を見た。
「千草よ」
「はい」
元柳斎は千草から目を反らし、外の景色を見た。
「虚圏に送る隊長は、誰が適任じゃと考える?」
「…個人的な厭悪を抜きにしても、更木剣八が妥当か、と。アレを現世に出したら、それこそ、天誅結界の意味が無くなります」
「奇遇じゃな。儂もそう思っておった」
井上織姫が精霊艇にやってきた。
ルキアが織姫と一緒に総務に来て、千草に織姫を会わせた。
「……しばらく、井上織姫の滞在許可をいただきたいのですが……」
ルキアは緊張したように、千草に申し出た。
千草は表情を変えずに、ルキアと織姫を見た。
「滞在理由は?」
「しゅ、修行です!二人で、今度の冬の決戦に向けて、力をつけます!!」
千草は引き出しから許可証を出すと、ルキアの説明をサラサラと筆書きし、ハンコを押した。
ルキアと織姫は、余りにもアッサリ許可が出て、呆気に取られていた。
「浮竹君は、井上さんの事知ってるの?」
許可証を渡しながら、千草がルキアに聞いた。
「いえ、まだ…最初にここに来まして……これから雨乾堂に参ります」
「そう。浮竹君なら、きっと力になってくれるわ」
「はい」
ルキアと織姫は千草にお礼を言うと、雨乾堂に向かった。
道中、織姫がドキドキしながら、ルキアに小声で質問をした。
「ねえねえ、千草さんと浮竹隊長さんって、どういう関係か、朽木さん知ってる?」
ルキアは織姫を見て、フッと得意げに笑った。
「お二人は、100年の恋人だ。素晴らしい愛だろう」
織姫は両手で口を覆って、目を輝かせた。
「や、やっぱり〜!!!?そうだと思ったの〜!!!100年の恋人かあ〜。素敵だなあ。いいなあ。好きな人とずっと一緒にいられるなんて……」
「そうだな。井上も、頑張れ!!」
「や、やだなあ!!朽木さん!!!そんな!!!」
「私は応援しているぞ」
「ふぁ〜!!!ありがとうございます〜!!」
その日の夜、千草が浮竹の家に行くと、十三番隊の隊舎裏で二人が修行を始めた事を聞いた。
「朽木がな、井上織姫と修行するから、演習場を貸してほしいと、自分で言ってきたんだ」
ベッドで横になって、千草を後ろから抱きしめながら、浮竹が嬉しそうに話した。
「消極的だったアイツが、他人を自分から誘えるようになったなんてなあ……」
「随分成長したのね。いい事だわ」
「そうなんだ。現世に送り出して良かったよ」
「前は後悔してたけどね」
「結果良ければ、だよ」
「フフ、そうね」
「明日見に来ないか?凄く楽しそうにやってるんだよ」
浮竹の誘いに千草はすぐには返事をせず、体を回して、浮竹の顔をじっと見た。
「……とっても見に行きたいけど、今、『絵』の蓄えをしているから、時間が無いの」
「ああ、そうだったな。休憩したくなったら来いよ」
「うん。そうする」
我ながら上手く嘘がつけたと思う。
ルキアも、織姫も、千草からしたらとっても可愛い娘達だ。そんな子達を見ていたら、無くした筈の欲が復活してしまう。また、子どもが欲しくなってしまう。だから見たくないのだ。
欲は、隠さなければならない。
その夜は、上手くやり過ごし、いつも通りの時間を過ごした。
それからも、何度も演習場に足を運びたくなったが、なんとか我慢をした。
そして数日後、現世への破面の出現を観測し、ルキアと織姫が精霊艇を後にした。だが、織姫は現世に着くことなく霊圧が探知出来なくなり、帰還した隊士によって、織姫が破面と姿を消した事が語られた。
誰よりも責任を感じていたのは、浮竹だった。
気落ちする浮竹に声をかける暇もなく、乱菊から千草に連絡が入り、破面の戦闘準備が整っていると報告を受けた。
「報告ありがとう。所で、井上織姫はそこにいる?」
「織姫?いえ、ここには…」
「そう……」
「どういう事ですか?」
すると電話の向こうから、日番谷の声がし、乱菊が今の会話を日番谷に伝えた。
直ぐに日番谷が電話を代わった。
「松本から聞きました。井上織姫は今どこに?」
「明言は出来ないけど、コチラにはいないわ。黒崎一護は、今話せる?」
「いえ、アイツは重傷で、意識が戻らないと朽木から連絡がありました。起こしますか?」
「そうね、明日朝イチで、霊波通信機のある部屋に連れてきて」
「御意……」
千草は電話を切ると、直ぐに元柳斎の元へ報告に向かった。
そこには浮竹もいた。
「井上、織姫は……?」
僅かな希望にすがるような顔で、浮竹が千草に聞いたが、千草は首を横に振る事しかできなかった。浮竹は現実を受け止める様に、目を瞑った。
「……可能性は低いけど……」
浮竹を見ずに、千草が言った。
「明日の朝、黒崎一護に聞いてみるわ」
浮竹は元柳斎に向き直り、真剣な眼差しで懇願した。
「…黒崎一護への説明は、俺にさせて下さい」
「…うむ。よかろう。して、千草、破面の進軍は何時の予想か」
元柳斎は浮竹を飛び越えて、千草に尋ねた。
「井上織姫の能力を目的とした拉致だとしたら、明日、明後日にもあり得るかと……」
「ガルガンタの調整は?」
「九割五分」
「フム……」
元柳斎は一度考える仕草をし、片目を開いた。
「日番谷先遣隊を、明日にでも連れ戻せ」
「……黒崎一護はどうしますか」
「無謀な挙に出んとも限らん、儂から留置く。先遣隊が命令に背く可能性を鑑み、更木、朽木、両隊長に先遣隊強制帰還指示と、刃向かえば力ずくで返せと伝えよ」
「……俺から伝えよう」
浮竹はそう言って、部屋から出て行った。残された千草は、もう一度元柳斎を見た。
「千草よ」
「はい」
元柳斎は千草から目を反らし、外の景色を見た。
「虚圏に送る隊長は、誰が適任じゃと考える?」
「…個人的な厭悪を抜きにしても、更木剣八が妥当か、と。アレを現世に出したら、それこそ、天誅結界の意味が無くなります」
「奇遇じゃな。儂もそう思っておった」