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親友の好きな人(京楽 浮竹)

47.現場検証

 元柳斎の命により戦時特別予算が出され、旅禍騒動で壊れた建物が全て隊費を使わず直せる事になった。
 だがそれには、残留霊子の観測と本人の証言が必要だ。
 残留霊子の観測は十二番隊がやってくれた為、本人確認業務は総務に回ってきた。
 だが、総務部の誰もがその仕事をやりたがらなかった。理由は、十一番隊の3人がいるからだ。できれば千草だって、更木とその部下とは顔を合わせたくない。だが更木が癇癪を起こしたら、止められそうなのは千草しかいない。
 千草は仕方なく、対岩鷲、対一護及び対更木の戦闘を行った者を収集した。
 纖罪宮に集められた、岩鷲、弓親、一護、恋次、一角、狛村、更木、はいつにも増して氷の目をした千草を前にして、一言も発せずにいた。因みに、千草は藍染との戦闘後からほとんど寝ずに仕事をしており、最高に機嫌が悪かった。
「……では今から、残留霊子の本人確認を行って行きます。私が聞いていきますので、『はい』か『いいえ』かのどちらかで答えてください。それ以外の言葉を発したら、容赦なくあなた達の給料から修繕費を差し引きますので。旅禍の二人は実家に請求します」
更木以外が力なく、はい…と答えた。だが更木だけは、不機嫌な口調で千草に突っかかった。
「クソ面倒くセエ事させやがって。壊れてんなら、壊れたままでも何とかなんだろ。帰らせろ。俺は寝ミイんだ」
集められた全員が、更木の空気の読めなささに驚愕した。
 千草の目が更木に向き、二人は黙って睨み合うと、千草が懐から伝令神機を取り出し、何処かに電話をかけた。
「……もしもし?私。今すぐ業者に連絡して、十一番隊の隊舎を解体して」
千草の言葉に、一角や弓親だけで無く、恋次や一護も愕然として千草を見た。千草は周りなど気にせず話し続けた。
「…え?更木隊長が、壊れたままでも何とかなるとおっしゃったから、実践していただくのよ。あんな建物でも、柱くらい売れば金になるでしょ。修繕費に回すわ。………大丈夫よ。私が責任持つから」
「そそそ総務官!!!!すみませんでした!!!隊長の失言は俺らが代わりに謝りますんで!!!」
一角が千草の足元に跪き、両手を顔の前に合わせて必死に謝った。それを見て、弓親も一角の隣に並び千草に撤回を求めた。元十一番隊の恋次も一緒になって謝り、ようやく千草が撤回して電話を切った。
「…………では、現場検証を始めます。この建物を切ったのは、更木剣八?」
「………おう」
「はい!!!」
ぶっきらぼうに答える更木の代わりに一角が答えた。
 更木と一護の現場検証は、終始そんな感じで一角がついて回った。
 ようやく一組の現場検証が終わった所で、屋根の上から声がした。
「よっ!!大変そうだなあ。手伝おうか?」
「更木の現場検証は僕らでやろうかあ?」
上を見ると、屋根の上から浮竹と京楽が千草達を見下ろしていた。その後ろには茶渡もいた。
「浮竹君、京楽君……茶渡君も。そっちは終わったの?」
千草が聞くと、屋根の上の3人は下に飛び降り、団体に混ざった。
「僕が茶渡君と戦った場所で山じいと戦ったからね。移動が無かったんだ」
京楽が説明した。
「よし、更木、狛村と戦った場所に行こうか!」
浮竹がにこやかに更木の肩に手を置き、更木を促した。更木は面倒くさそうだが、浮竹に従った。
「……あの女よかマシだ」
更木が浮竹について行くのを見て、千草がファイルから紙を数枚取り出し、京楽に渡した。
「………ごめんね。迷惑かけて」
「いいさ。早く終わらせて休みなよ」
「ええ。ありがとう」
京楽は千草から紙を受け取ると、狛村と共に浮竹達の後を追った。
 更木に対する態度とは打って変わって、京楽にしおらしい態度を取った千草に男達が見とれていると、再び千草の目が氷になり、男達を見据えた。
「……移動するわよ」
 何で俺らには優しく無いんだ、と全員が思ったが、口に出せる訳もなく、静かに千草に従った。
 ようやく最後の、弓親と岩鷲の戦闘跡を検証が終わり、全員が安堵のため息を漏らすと、京楽と浮竹が戻ってきた。
「おーい、お疲れ様ー。こっちも終わったよー」
「更木と狛村は帰したが、良かったか?」
「ええ、いいわ。ありがとう。皆も帰っていいわよ、お疲れ様」
千草が一護や恋次達に告げると、全員が疲れたようにゾロゾロと解散した。
 その時、電池が切れたかのように千草が倒れ、浮竹が慌ててキャッチした。帰路に着こうとしていた男達は、ギョッとして千草を見た。
 千草は浮竹の腕の中で、苦しそうに目を瞑っていた。
「何日寝てないんだ」
千草は震える手で、指を3本上げた。
「コラ」
思わず浮竹がたしなめると、千草がうつらうつらし始めた。
「……もう、後…は、……業者……………」
最後まで言い終わる前に、千草は寝息をたて始め、浮竹も京楽も困ったように千草を見た。
「……やれやれ。コイツの責任感も、ここまで来たら悪癖だな」
「もしかして、藍染と戦ってから、まともに休んで無いんじゃない?」
「まったく」
浮竹は千草を抱き上げ、京楽に向き直った。
「もうこのまま俺の邸に連れて行く。悪いが、書類を総務に渡してくれるか、京楽」
「お、なら僕も後でお邪魔していい?」
「いいが、何にも無いぞ」
「買っていくよー。じゃあ、また後で」
京楽と浮竹は解散し、別々に歩いて行った。
 残された男達は、呆然としつつも、帰って行った。

 浮竹と京楽が縁側で酒を酌み交わす中、千草は朝まで寝続けた。
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