親友の好きな人(京楽 浮竹)
45.お客様
「犬?ってか、人形?何だこれ?モッドソウルか?」
一護は千草を指差しながら、困惑していた。織姫も石田も茶渡も岩鷲も、まじまじと千草を見た。
「モッドソウルでは無いけど、私の霊力で動いているのよ。藍染との戦いで本体が霊力切れで動けなくなってしまったから、こんな姿なの。お客様に失礼だとは思ったけど。ごめんなさいね」
「え、て事は、あんたが『ソームカン』って人なのか?死神じゃないのか?」
「話は、歩きながらしましょうか。あなた達の部屋を準備したわ。疲れているでしょ」
千草は一護達に背を向け、てちてち歩いたが、全く進んでいなかった。
「俺が運んでいくよ」
浮竹が千草を拾い上げると、一護達も後ろからついて来た。
皆で一番隊隊舎へ歩きながら、千草は一護の説明に答えた。
「自己紹介がまだだったわね。総務官の横山千草よ。私は死神で、隊長達とは違う仕事内容なの」
「立場としては隊長と同等か、それ以上だがな」
浮竹が補足した。
「仕事は概ね、ソウルソサエティ全土の事象の記録と保管。全死神の個人情報から、ライフラインの管理、予算配分、管轄分配をしているの」
「何故それを、死神がする必要があるんですか?一般人でも出来そうな…」
石田が不思議そうに尋ねた。先頭を歩いていた浮竹が振り向くと、その手の中にいる千草も石田を見た。
「最後の砦だからよ。隊長達が全滅しようと、御艇の歴史と組織の運営を管理している総務があれば、御艇は何度でも蘇る」
「千草は、御艇の柱であり、根っこなんだ」
「だから、私は戦わない死神だけど、強くある必要があるの」
一護達は感心して、ため息を漏らした。
「それであんたが藍染と……?」
「戦闘になったのは偶然だけど、私も日番谷隊長も手も足も出なかったわ」
藍染を目の当たりにしている一護は、千草の悔しさが分かり、一人ツバを飲み込んだ。
そうこうしている間に一番隊隊舎に着き、千草が一護達を客室棟に案内した。
部屋が並んでいる廊下に来ると、千草が全員を止めた。
「ちょっと待っててね。本体が回復して、こちらに向かっているわ」
そう言い終えると、張り子の千草が浮竹の手の中で崩れるように消えた。それと同時に、一行の後ろから声がした。
「お待たせ。ようやく動けたわ。浮竹君もありがとう」
全員が振り向くと、本体の千草が、いつも通りの美貌で、髪を耳にかけながら現れた。
千草の姿が想像と違ったらしく、一護達全員か言葉を失い千草を凝視した。
「どうしたの?大丈夫?」
千草が不思議そうに聞いたが、ソワソワするばかりで誰も答えなかった。
千草は旅禍組の不審行動は無視して、部屋の説明に入った。
「全部同じ作りだから、好きな部屋に入って。中にある物は好きに使っていいわよ。厠と風呂は共同になるから、今から案内するわね」
「じゃあ、俺はここで」
案内に出ようとした千草の横で浮竹が言い、千草が柔らかい顔で浮竹を見た。
「ありがとうね、連れて来てくれて」
「無理はするなよ」
「うん」
同僚としては親しすぎる距離感に、一護達は目を見張った。千草はそんな事気にもかけず、5人について来るように言った。
トイレと風呂、立入禁止区域などを説明してから、食堂に行き、夕飯を食べさせた。
そこでようやく、旅禍組の自己紹介と、ここに至るまでの話を聞いた。
「黒崎君がルキアさんから譲り受けた死神の力は、朽木君が消したって聞いてたけど、どうやって取り戻したの?」
「ん?あ、ああ、修行つけて貰ったんだよ。浦原さんに」
「浦原……ああ、やっぱりそうなの。彼は元気?」
「浦原さんって、こっちで有名人なんですね」
織姫が感心した様に言った。
「ええ、そうね。有名だわ」
罪人としてね………。
千草は疑問を感じていた。浦原が手を貸したとしても、人間が死神になるなど、譲渡以外であり得るのだろうか……?彼はまた、よからぬ研究をしているのか、黒崎自体に何かあるのか……。
「どうしたんだよ、千草さん。怖い顔して」
一護が不安そうに聞いた。
「……いえ、何でも。じゃあ私はもう行くわ。食器は厨房に返しといて。何か必要な物があったら、さっき案内した総務部の誰かに言ってね」
千草が席を立ち、食堂から出て行こうとすると、一護が呼び止めた。
「いろいろ、ありがとうな、千草さん!」
「世話んなります」
「ありがとうございます」
「よろしくお願いします」
「助かりました」
一護に続き、岩鷲、石田、織姫、茶渡が千草にお礼を言った。
千草は少し驚いて、旅禍の子ども達を見た。
「……何言ってるの。お礼言うのは私よ。私はルキアさんを気に入ってた。あの子の為に、命をかけてくれてありがとう。これからも、あの子をよろしくね」
千草は少しだけ微笑んで、食堂から出て行った。
残された一護達は、しばらく出口を見つめていたが、織姫が静寂をやぶった。
「千草さんって……浮竹隊長さんと、どういう関係なんだろう……」
「えっ!やっぱり井上さんも、気になった!?」
「いや…だが、見た目の年齢が離れすぎてないか?」
「死神なんだから、見た目と実年齢が違ってもおかしくねーよ。お前ら人間と違うんだし」
「気になるなら聞けば良かったじゃねーか」
「なんだ、黒崎も気になっていたんじゃないか」
「は!?俺は別に!!」
一方千草は元柳斎の元に来ていた。
「藍染との戦闘報告に参りました」
「うむ……所で千草よ」
元柳斎は、精霊艇が一望できる机から、重々しい口調で千草に話しかけた。
「はい」
「旅禍の者たちの身辺調査及び、浦原喜助との接触をお主に任せてよいか」
「……はい」
「犬?ってか、人形?何だこれ?モッドソウルか?」
一護は千草を指差しながら、困惑していた。織姫も石田も茶渡も岩鷲も、まじまじと千草を見た。
「モッドソウルでは無いけど、私の霊力で動いているのよ。藍染との戦いで本体が霊力切れで動けなくなってしまったから、こんな姿なの。お客様に失礼だとは思ったけど。ごめんなさいね」
「え、て事は、あんたが『ソームカン』って人なのか?死神じゃないのか?」
「話は、歩きながらしましょうか。あなた達の部屋を準備したわ。疲れているでしょ」
千草は一護達に背を向け、てちてち歩いたが、全く進んでいなかった。
「俺が運んでいくよ」
浮竹が千草を拾い上げると、一護達も後ろからついて来た。
皆で一番隊隊舎へ歩きながら、千草は一護の説明に答えた。
「自己紹介がまだだったわね。総務官の横山千草よ。私は死神で、隊長達とは違う仕事内容なの」
「立場としては隊長と同等か、それ以上だがな」
浮竹が補足した。
「仕事は概ね、ソウルソサエティ全土の事象の記録と保管。全死神の個人情報から、ライフラインの管理、予算配分、管轄分配をしているの」
「何故それを、死神がする必要があるんですか?一般人でも出来そうな…」
石田が不思議そうに尋ねた。先頭を歩いていた浮竹が振り向くと、その手の中にいる千草も石田を見た。
「最後の砦だからよ。隊長達が全滅しようと、御艇の歴史と組織の運営を管理している総務があれば、御艇は何度でも蘇る」
「千草は、御艇の柱であり、根っこなんだ」
「だから、私は戦わない死神だけど、強くある必要があるの」
一護達は感心して、ため息を漏らした。
「それであんたが藍染と……?」
「戦闘になったのは偶然だけど、私も日番谷隊長も手も足も出なかったわ」
藍染を目の当たりにしている一護は、千草の悔しさが分かり、一人ツバを飲み込んだ。
そうこうしている間に一番隊隊舎に着き、千草が一護達を客室棟に案内した。
部屋が並んでいる廊下に来ると、千草が全員を止めた。
「ちょっと待っててね。本体が回復して、こちらに向かっているわ」
そう言い終えると、張り子の千草が浮竹の手の中で崩れるように消えた。それと同時に、一行の後ろから声がした。
「お待たせ。ようやく動けたわ。浮竹君もありがとう」
全員が振り向くと、本体の千草が、いつも通りの美貌で、髪を耳にかけながら現れた。
千草の姿が想像と違ったらしく、一護達全員か言葉を失い千草を凝視した。
「どうしたの?大丈夫?」
千草が不思議そうに聞いたが、ソワソワするばかりで誰も答えなかった。
千草は旅禍組の不審行動は無視して、部屋の説明に入った。
「全部同じ作りだから、好きな部屋に入って。中にある物は好きに使っていいわよ。厠と風呂は共同になるから、今から案内するわね」
「じゃあ、俺はここで」
案内に出ようとした千草の横で浮竹が言い、千草が柔らかい顔で浮竹を見た。
「ありがとうね、連れて来てくれて」
「無理はするなよ」
「うん」
同僚としては親しすぎる距離感に、一護達は目を見張った。千草はそんな事気にもかけず、5人について来るように言った。
トイレと風呂、立入禁止区域などを説明してから、食堂に行き、夕飯を食べさせた。
そこでようやく、旅禍組の自己紹介と、ここに至るまでの話を聞いた。
「黒崎君がルキアさんから譲り受けた死神の力は、朽木君が消したって聞いてたけど、どうやって取り戻したの?」
「ん?あ、ああ、修行つけて貰ったんだよ。浦原さんに」
「浦原……ああ、やっぱりそうなの。彼は元気?」
「浦原さんって、こっちで有名人なんですね」
織姫が感心した様に言った。
「ええ、そうね。有名だわ」
罪人としてね………。
千草は疑問を感じていた。浦原が手を貸したとしても、人間が死神になるなど、譲渡以外であり得るのだろうか……?彼はまた、よからぬ研究をしているのか、黒崎自体に何かあるのか……。
「どうしたんだよ、千草さん。怖い顔して」
一護が不安そうに聞いた。
「……いえ、何でも。じゃあ私はもう行くわ。食器は厨房に返しといて。何か必要な物があったら、さっき案内した総務部の誰かに言ってね」
千草が席を立ち、食堂から出て行こうとすると、一護が呼び止めた。
「いろいろ、ありがとうな、千草さん!」
「世話んなります」
「ありがとうございます」
「よろしくお願いします」
「助かりました」
一護に続き、岩鷲、石田、織姫、茶渡が千草にお礼を言った。
千草は少し驚いて、旅禍の子ども達を見た。
「……何言ってるの。お礼言うのは私よ。私はルキアさんを気に入ってた。あの子の為に、命をかけてくれてありがとう。これからも、あの子をよろしくね」
千草は少しだけ微笑んで、食堂から出て行った。
残された一護達は、しばらく出口を見つめていたが、織姫が静寂をやぶった。
「千草さんって……浮竹隊長さんと、どういう関係なんだろう……」
「えっ!やっぱり井上さんも、気になった!?」
「いや…だが、見た目の年齢が離れすぎてないか?」
「死神なんだから、見た目と実年齢が違ってもおかしくねーよ。お前ら人間と違うんだし」
「気になるなら聞けば良かったじゃねーか」
「なんだ、黒崎も気になっていたんじゃないか」
「は!?俺は別に!!」
一方千草は元柳斎の元に来ていた。
「藍染との戦闘報告に参りました」
「うむ……所で千草よ」
元柳斎は、精霊艇が一望できる机から、重々しい口調で千草に話しかけた。
「はい」
「旅禍の者たちの身辺調査及び、浦原喜助との接触をお主に任せてよいか」
「……はい」