親友の好きな人(京楽 浮竹)
42.大失態
浮竹は雨乾堂に京楽を呼び、宝物庫の説明をした。京楽はすぐに納得してくれ、二人で双極を破壊する事に決めた。
「なら、黒幕さんの意識が死刑に向く明日の朝動くべきだね。今は、誰が目を光らせているか分からない」
「ああ、だが、二人で動けば怪しまれる。俺一人で宝物庫に行く」
「そうだねえ。浮竹が居なくても、体を壊しましたで済むし」
明日の動きが決まった所で、浮竹は絵巻を2本取り出した。京楽はそれを見て、目を見張った。
「それ……千草の?なんで?」
「そうだ。今千草は総務から動けない。監視されている」
「敵さんは千草をどうするつもりかね」
「分からない」
浮竹が絵巻を広げると、千草の分身が二人現れた。どちらも本物と違いが分からない。
「久しぶりに見たけど、上手くなったねえ。違いがわからないよ」
京楽が感心しながら言った。二人の千草は、体の動きを確かめて、浮竹と京楽を見た。
「夜になったらここをでるわ。連れて来てくれてありがとう」
「目星はついてるのか?」
浮竹が千草に聞いた。二人の千草は座って、一人が話しだした。
「大体は。私を動けなくしたのは、私が立ち入る可能性のある場所が目的だからよ、きっと」
「大霊書回廊か」
「ええ」
それから千草は、二人に崩玉について知っている事を全て話した。そして、それがルキアの体内に埋め込まれている事も……。
「四十六室が黒幕かね」
「操られている可能性もあるな」
「どちらにしても潜入して見てくる。大霊書回廊も四十六室も」
話が終わると京楽は帰っていき、辺りがすっかり暗くなるまで待って、千草が出立した。
分身が各場に到着したのを確認すると、総務に潜んでいた千草は一度意識を離し、再び金庫を開けて桐の箱に入った絵巻を取り出した。それは何枚も重なっており、随分太くなっていた。
分身は、夜の間はそれぞれの場所を外から見張ったが、誰の出入りも無いのを見届けて、朝になってから中に入っていった。
大霊書回廊は、四十六室以外では、千草が自分の霊子承認をした上で、暗証番号を入力しないと入れない。暗証番号も毎月変更している。
だが、回廊の扉は開いていた。
千草が驚いてセキュリティを確認すると、自分が入った事になっていた。
「どういう事……誰が入ったの……」
千草は急いで中に入り、誰かが潜んでいないか探して回っていたが、片方の体に違和感を感じて外に飛び出した。
四十六室を見ていた千草が、何者かに刺された。
背後から胸と頭を刺され、顔を確認できないまま、四十六室の周りを囲む池に放り込まれた。
大霊書回廊を出た千草は、すぐに四十六室に着いた。だが、誰かが来る気配を感じ、物陰に隠れて様子を見ていると、十番隊の日番谷と乱菊が来て四十六室の中に入っていった。そしてそのすぐ後に、脱獄囚の吉良イヅルが入っていった。
3人はグルなのか、そうでは無いのか……。
しばらくして、吉良が建物から飛び出し、その後を十番隊の二人が追っていった。どうやら2組はグルでは無さそうだ。
するとすぐにまた新たな人物が現れた。吉良と同じく、脱獄囚の雛森だった。雛森が中に入って行くと、今度は市丸が現れ、中に入って行った。
今度は、市丸の後をついて来るように雛森が出てきた。二人は争う様子もなく、静かに何処かへ消えて行った。
千草は周りを確認して、四十六室に入って行った。
階段を降りると、そこには全滅している裁判官達がいた。
「…何、これ………」
日番谷達は、これを見て吉良を追ったのだろうか?何故吉良は、ワザワザ二人の前に姿を現した?吉良と市丸がグルだとしたら……。
「雛森さん……」
千草はすぐに四十六室を出て、市丸と雛森の霊圧を追った。
二人の霊圧は清浄塔居林に続いていた。
一級禁踏区域だが、ここも千草の霊子と暗証番号があれば入れる。
千草は足音を殺して中に入って行った。
一本の柱の中から雛森の声がして、千草は急いでそちらに向かった。
そこには、刀で腹部を刺されている雛森がいた。
刺しているのは、藍染だった。
藍染が刀を引き抜くと、雛森は力なく床に倒れた。
「おや、横山総務官。生きていらしたんですね」
驚くほどにこやかに、藍染は千草に話しかけた。
「あれ、おかしいなあ。頭も刺して、池に沈めた筈なんやけど」
藍染の横の市丸が、首をかしげながら言った。
「……何をしているの、二人とも……何で藍染君が生きて…………」
頭がついて行かない千草が、絞り出すように問いただした。
「何を?それはこちらの台詞ですよ。総務官は今他出禁止でしょう」
「……っ!!……」
千草の中で全てが繋がり、藍染と市丸から距離をとった。死体も全てが嘘だったのだ。
「いつ私から霊子をとったの。暗証番号は……」
「いつでも、ですよ。総務官。僕はいつでもあなたに会いに行けた」
「……100年、あなたは総務に来なかったわ」
「それはあなたの思い違いですよ」
藍染は斬魄刀を抜くと、千草によく見えるように掲げた。すると、一瞬で藍染は消え、気がつくと千草の後ろにいた。瞬歩の気配は無かった。
「さて、どちらの僕が本物でしょうか…………。教えて差し上げます。僕の斬魄刀の有する能力は…『完全催眠』。僕が見せたい物を見せ、僕が見せたくないものは見せない。視覚だけではない、五感全てを支配できるのです、横山総務官」
藍染はあくまで丁寧に、上官として千草に話しかけた。
千草は頭の中で、100年前に一度だけ藍染の始界を見たのを思い出していた。
「私は、100年間騙されていたのね……」
後ろは見ずに、千草が言った。
「あなたが僕を振ってくださったおかげで、100年間疑われずにすみました。感謝しています」
「大失態だわ」
「不可能を悔やむ事はありません」
その時、藍染の背後から刀が振り下ろされ、千草の後ろにいた藍染は消えて、もといた市丸の隣に現れた。
「驚いたな…………」
藍染の目線の先には、もう一人の千草がいた。
「どちらが本物ですか?」
「さあね」
浮竹は雨乾堂に京楽を呼び、宝物庫の説明をした。京楽はすぐに納得してくれ、二人で双極を破壊する事に決めた。
「なら、黒幕さんの意識が死刑に向く明日の朝動くべきだね。今は、誰が目を光らせているか分からない」
「ああ、だが、二人で動けば怪しまれる。俺一人で宝物庫に行く」
「そうだねえ。浮竹が居なくても、体を壊しましたで済むし」
明日の動きが決まった所で、浮竹は絵巻を2本取り出した。京楽はそれを見て、目を見張った。
「それ……千草の?なんで?」
「そうだ。今千草は総務から動けない。監視されている」
「敵さんは千草をどうするつもりかね」
「分からない」
浮竹が絵巻を広げると、千草の分身が二人現れた。どちらも本物と違いが分からない。
「久しぶりに見たけど、上手くなったねえ。違いがわからないよ」
京楽が感心しながら言った。二人の千草は、体の動きを確かめて、浮竹と京楽を見た。
「夜になったらここをでるわ。連れて来てくれてありがとう」
「目星はついてるのか?」
浮竹が千草に聞いた。二人の千草は座って、一人が話しだした。
「大体は。私を動けなくしたのは、私が立ち入る可能性のある場所が目的だからよ、きっと」
「大霊書回廊か」
「ええ」
それから千草は、二人に崩玉について知っている事を全て話した。そして、それがルキアの体内に埋め込まれている事も……。
「四十六室が黒幕かね」
「操られている可能性もあるな」
「どちらにしても潜入して見てくる。大霊書回廊も四十六室も」
話が終わると京楽は帰っていき、辺りがすっかり暗くなるまで待って、千草が出立した。
分身が各場に到着したのを確認すると、総務に潜んでいた千草は一度意識を離し、再び金庫を開けて桐の箱に入った絵巻を取り出した。それは何枚も重なっており、随分太くなっていた。
分身は、夜の間はそれぞれの場所を外から見張ったが、誰の出入りも無いのを見届けて、朝になってから中に入っていった。
大霊書回廊は、四十六室以外では、千草が自分の霊子承認をした上で、暗証番号を入力しないと入れない。暗証番号も毎月変更している。
だが、回廊の扉は開いていた。
千草が驚いてセキュリティを確認すると、自分が入った事になっていた。
「どういう事……誰が入ったの……」
千草は急いで中に入り、誰かが潜んでいないか探して回っていたが、片方の体に違和感を感じて外に飛び出した。
四十六室を見ていた千草が、何者かに刺された。
背後から胸と頭を刺され、顔を確認できないまま、四十六室の周りを囲む池に放り込まれた。
大霊書回廊を出た千草は、すぐに四十六室に着いた。だが、誰かが来る気配を感じ、物陰に隠れて様子を見ていると、十番隊の日番谷と乱菊が来て四十六室の中に入っていった。そしてそのすぐ後に、脱獄囚の吉良イヅルが入っていった。
3人はグルなのか、そうでは無いのか……。
しばらくして、吉良が建物から飛び出し、その後を十番隊の二人が追っていった。どうやら2組はグルでは無さそうだ。
するとすぐにまた新たな人物が現れた。吉良と同じく、脱獄囚の雛森だった。雛森が中に入って行くと、今度は市丸が現れ、中に入って行った。
今度は、市丸の後をついて来るように雛森が出てきた。二人は争う様子もなく、静かに何処かへ消えて行った。
千草は周りを確認して、四十六室に入って行った。
階段を降りると、そこには全滅している裁判官達がいた。
「…何、これ………」
日番谷達は、これを見て吉良を追ったのだろうか?何故吉良は、ワザワザ二人の前に姿を現した?吉良と市丸がグルだとしたら……。
「雛森さん……」
千草はすぐに四十六室を出て、市丸と雛森の霊圧を追った。
二人の霊圧は清浄塔居林に続いていた。
一級禁踏区域だが、ここも千草の霊子と暗証番号があれば入れる。
千草は足音を殺して中に入って行った。
一本の柱の中から雛森の声がして、千草は急いでそちらに向かった。
そこには、刀で腹部を刺されている雛森がいた。
刺しているのは、藍染だった。
藍染が刀を引き抜くと、雛森は力なく床に倒れた。
「おや、横山総務官。生きていらしたんですね」
驚くほどにこやかに、藍染は千草に話しかけた。
「あれ、おかしいなあ。頭も刺して、池に沈めた筈なんやけど」
藍染の横の市丸が、首をかしげながら言った。
「……何をしているの、二人とも……何で藍染君が生きて…………」
頭がついて行かない千草が、絞り出すように問いただした。
「何を?それはこちらの台詞ですよ。総務官は今他出禁止でしょう」
「……っ!!……」
千草の中で全てが繋がり、藍染と市丸から距離をとった。死体も全てが嘘だったのだ。
「いつ私から霊子をとったの。暗証番号は……」
「いつでも、ですよ。総務官。僕はいつでもあなたに会いに行けた」
「……100年、あなたは総務に来なかったわ」
「それはあなたの思い違いですよ」
藍染は斬魄刀を抜くと、千草によく見えるように掲げた。すると、一瞬で藍染は消え、気がつくと千草の後ろにいた。瞬歩の気配は無かった。
「さて、どちらの僕が本物でしょうか…………。教えて差し上げます。僕の斬魄刀の有する能力は…『完全催眠』。僕が見せたい物を見せ、僕が見せたくないものは見せない。視覚だけではない、五感全てを支配できるのです、横山総務官」
藍染はあくまで丁寧に、上官として千草に話しかけた。
千草は頭の中で、100年前に一度だけ藍染の始界を見たのを思い出していた。
「私は、100年間騙されていたのね……」
後ろは見ずに、千草が言った。
「あなたが僕を振ってくださったおかげで、100年間疑われずにすみました。感謝しています」
「大失態だわ」
「不可能を悔やむ事はありません」
その時、藍染の背後から刀が振り下ろされ、千草の後ろにいた藍染は消えて、もといた市丸の隣に現れた。
「驚いたな…………」
藍染の目線の先には、もう一人の千草がいた。
「どちらが本物ですか?」
「さあね」