親友の好きな人(京楽 浮竹)
41.沙羅双樹
地獄蝶が来るなり、千草は扉に向かって早足で進んだが、取っ手を掴む前に隠密機動に手を掴まれた。
「どこへ行くおつもりですか、総務官殿」
千草は彼を睨みつけ、手を振り払った。
「中央よ」
「他出は禁じられています」
「あなたに私を止める権限は無いわ」
「ならば儂が止めよう」
扉の向こうから声がして、じっと扉を見ると、ゆっくり扉が開き、元柳斎が姿を現した。
「総務官ともあろう者が、私情で動くな。たわけ」
元柳斎は千草を叱責し、部屋の中央に押し戻した。千草を叱れるのは、元柳斎くらいだ。
「旅禍の目的が極囚の奪還ならば、明日の刑に姿を現すのは必須。そこにて捕らえ、戦闘を収束させる」
「ですがっ」
「だまらっしゃい」
元柳斎は千草を睨みつけ、反論を許さなかった。
「藍染殺害の犯人が不明な今、お主の外出は許されぬ。最早一人の命では無いと自覚せんか」
元柳斎にも外出を禁じられ、千草は唇を噛んで項垂れた。
せめて浮竹君にだけでも会えれば………。
「総務官の監視、頼んだぞ」
元柳斎は隠密機動の二人に告げ、総務部を出て行った。
一方、四十六室への進言を取り消された浮竹は、刑の前倒しを耳にしてすぐ、白哉の元へ行った。
だが、妹が明日死ぬとなっても、白哉の意志は中央に従うと言って変わらなかった。
浮竹は、最後の頼みの綱である総務に行くしか無かった。
総務に行くと千草は不機嫌で、部下達は気まずそうにしていた。さらに部屋を見ると、何故か隠密機動が二人いた。
「何故隠密機動が?」
席について腕を組む千草に近寄りながら、浮竹が聞くと、千草は隠密機動を睨みながら説明した。
「藍染殺害の犯人が私を狙う可能性があるから、って、中央が護衛につけたの」
千草がいつになく苦々しく言い放ち、隠密機動が気まずそうに目をそらした。
「3日間監禁状態で、流石に神経がすり減るわ。浮竹君、ちょっと奥に来て」
千草が浮竹を奥の部屋に誘うと、またもや隠密機動が動いた。その様子を見て、千草は浮竹の胸に手を当てながら彼らを睨んだ。
「何?恋人と二人になる事も許されないの?」
千草の剣幕に彼らは少し怯んだが、気を取り直して千草に歯向かった。
「戦時特例です。我々の目の届かない所へは」
「溜まってんのよ、こっちは」
ハッキリとした千草の声に、隠密機動だけで無く、総務部員達も、浮竹も固まり、千草を見据えた。
「奥でセッ○スするから、ついて来ないでって言ってんの。それとも何?それも監視すんの?」
「ちょっ、千草ッ!!」
うろたえる浮竹を無視して、千草は浮竹を奥の部屋に押し込み、オロオロする隠密機動に向かって、いたずらっぽく笑った。
「緊迫した状況ほど燃えるタイプなの」
千草はガチャリと鍵を閉め、念の為結界を張った。部屋には窓は無く、奥に腰の高さ程の金庫があった。
浮竹はすぐに状況を飲み込み、不安そうに千草の肩を掴んだ。
「中央への進言は許されなかった。もう打つ手が無い。何か総務で………」
「浮竹君に会えて良かったわ。会えなかったら、終わってた」
千草は懐から鍵を取り出して、浮竹の手に押し付けた。
「これは…?」
「四楓院家の宝物庫の鍵よ。その中に双極を破壊できる武具があるらしいの」
「千草も会ったのか?夜一に」
「浮竹君も?なら話は早いわ。私は黒幕を探しに行く。浮竹君は双極をお願い」
「黒幕?なんだそれは」
「聞いてないの?ルキアさんの体内に隠されてる物を、犯人は狙っているのよ」
浮竹はようやく、今回の不自然な判決の意味を理解し、言葉を失った。
千草は部屋の奥にある金庫に行き、暗証番号を入力し始めた。浮竹は心配そうに千草の背中を見た。
「だが、隠密機動が千草を見張っている」
千草は金庫を開け、中から絵巻を数本取り出した。
「これを、持っていって。それで、人目のつかない場所で開けてほしいの」
「……使うのか、能力を。見られては不味いだろ」
「よっぽどバレないわ」
「………分かった」
浮竹が絵巻を受け取り、背中の腰紐に挿して羽織で隠すと、突然千草が浮竹の着物の合わせを開いた。
「なっ!!?おいっ!!」
「ヤッてた事にしないと」
千草はそう言って浮竹の腰紐を緩めた。
「じゃあ、浮竹君はこっちにキスマークつけて」
千草がそう言って絵巻を一本広げると、絵巻の中から千草そっくりの女が這い出てきた。
「随分うまく描く様になったな…」
「まあね。この子を影武者にして、私はこの部屋に留まるわ。さ、早くやっちゃって」
千草は分身の合わせを開き、首筋を見せた。浮竹は躊躇して、嫌そうに本物の千草を見た。
「……本当にやる必要あるか?」
「なら私が喘いでおくわ」
「わわわ、待て待て!やるから!」
浮竹はイヤイヤながら、分身にキスマークをつけ、『証拠』をつくった。
「……元柳斎様に怒られると思うけど………」
「きっと分かってくれるさ」
別れ際に二人はキスをして、浮竹は出口に向かい、千草は斬魄刀を解放した。
浮竹が見ている間に、千草は壁を作り出し自分を隠した。一見すると元いた部屋と変わらず、よく見てようやく少し狭くなったのが分かるくらいだ。
浮竹が分身の千草を引き連れて部屋から出ると、全員の目が一斉に浮竹に向いた。浮竹は気まずそうに誰とも目を合わせず、さっさと総務から出て行った。扉を閉めるときに、千草の声が聞こえた。
「さ、スッキリした事だし、仕事するわ」
「まじかよ……」
浮竹は愕然として、思わず声が出た。
地獄蝶が来るなり、千草は扉に向かって早足で進んだが、取っ手を掴む前に隠密機動に手を掴まれた。
「どこへ行くおつもりですか、総務官殿」
千草は彼を睨みつけ、手を振り払った。
「中央よ」
「他出は禁じられています」
「あなたに私を止める権限は無いわ」
「ならば儂が止めよう」
扉の向こうから声がして、じっと扉を見ると、ゆっくり扉が開き、元柳斎が姿を現した。
「総務官ともあろう者が、私情で動くな。たわけ」
元柳斎は千草を叱責し、部屋の中央に押し戻した。千草を叱れるのは、元柳斎くらいだ。
「旅禍の目的が極囚の奪還ならば、明日の刑に姿を現すのは必須。そこにて捕らえ、戦闘を収束させる」
「ですがっ」
「だまらっしゃい」
元柳斎は千草を睨みつけ、反論を許さなかった。
「藍染殺害の犯人が不明な今、お主の外出は許されぬ。最早一人の命では無いと自覚せんか」
元柳斎にも外出を禁じられ、千草は唇を噛んで項垂れた。
せめて浮竹君にだけでも会えれば………。
「総務官の監視、頼んだぞ」
元柳斎は隠密機動の二人に告げ、総務部を出て行った。
一方、四十六室への進言を取り消された浮竹は、刑の前倒しを耳にしてすぐ、白哉の元へ行った。
だが、妹が明日死ぬとなっても、白哉の意志は中央に従うと言って変わらなかった。
浮竹は、最後の頼みの綱である総務に行くしか無かった。
総務に行くと千草は不機嫌で、部下達は気まずそうにしていた。さらに部屋を見ると、何故か隠密機動が二人いた。
「何故隠密機動が?」
席について腕を組む千草に近寄りながら、浮竹が聞くと、千草は隠密機動を睨みながら説明した。
「藍染殺害の犯人が私を狙う可能性があるから、って、中央が護衛につけたの」
千草がいつになく苦々しく言い放ち、隠密機動が気まずそうに目をそらした。
「3日間監禁状態で、流石に神経がすり減るわ。浮竹君、ちょっと奥に来て」
千草が浮竹を奥の部屋に誘うと、またもや隠密機動が動いた。その様子を見て、千草は浮竹の胸に手を当てながら彼らを睨んだ。
「何?恋人と二人になる事も許されないの?」
千草の剣幕に彼らは少し怯んだが、気を取り直して千草に歯向かった。
「戦時特例です。我々の目の届かない所へは」
「溜まってんのよ、こっちは」
ハッキリとした千草の声に、隠密機動だけで無く、総務部員達も、浮竹も固まり、千草を見据えた。
「奥でセッ○スするから、ついて来ないでって言ってんの。それとも何?それも監視すんの?」
「ちょっ、千草ッ!!」
うろたえる浮竹を無視して、千草は浮竹を奥の部屋に押し込み、オロオロする隠密機動に向かって、いたずらっぽく笑った。
「緊迫した状況ほど燃えるタイプなの」
千草はガチャリと鍵を閉め、念の為結界を張った。部屋には窓は無く、奥に腰の高さ程の金庫があった。
浮竹はすぐに状況を飲み込み、不安そうに千草の肩を掴んだ。
「中央への進言は許されなかった。もう打つ手が無い。何か総務で………」
「浮竹君に会えて良かったわ。会えなかったら、終わってた」
千草は懐から鍵を取り出して、浮竹の手に押し付けた。
「これは…?」
「四楓院家の宝物庫の鍵よ。その中に双極を破壊できる武具があるらしいの」
「千草も会ったのか?夜一に」
「浮竹君も?なら話は早いわ。私は黒幕を探しに行く。浮竹君は双極をお願い」
「黒幕?なんだそれは」
「聞いてないの?ルキアさんの体内に隠されてる物を、犯人は狙っているのよ」
浮竹はようやく、今回の不自然な判決の意味を理解し、言葉を失った。
千草は部屋の奥にある金庫に行き、暗証番号を入力し始めた。浮竹は心配そうに千草の背中を見た。
「だが、隠密機動が千草を見張っている」
千草は金庫を開け、中から絵巻を数本取り出した。
「これを、持っていって。それで、人目のつかない場所で開けてほしいの」
「……使うのか、能力を。見られては不味いだろ」
「よっぽどバレないわ」
「………分かった」
浮竹が絵巻を受け取り、背中の腰紐に挿して羽織で隠すと、突然千草が浮竹の着物の合わせを開いた。
「なっ!!?おいっ!!」
「ヤッてた事にしないと」
千草はそう言って浮竹の腰紐を緩めた。
「じゃあ、浮竹君はこっちにキスマークつけて」
千草がそう言って絵巻を一本広げると、絵巻の中から千草そっくりの女が這い出てきた。
「随分うまく描く様になったな…」
「まあね。この子を影武者にして、私はこの部屋に留まるわ。さ、早くやっちゃって」
千草は分身の合わせを開き、首筋を見せた。浮竹は躊躇して、嫌そうに本物の千草を見た。
「……本当にやる必要あるか?」
「なら私が喘いでおくわ」
「わわわ、待て待て!やるから!」
浮竹はイヤイヤながら、分身にキスマークをつけ、『証拠』をつくった。
「……元柳斎様に怒られると思うけど………」
「きっと分かってくれるさ」
別れ際に二人はキスをして、浮竹は出口に向かい、千草は斬魄刀を解放した。
浮竹が見ている間に、千草は壁を作り出し自分を隠した。一見すると元いた部屋と変わらず、よく見てようやく少し狭くなったのが分かるくらいだ。
浮竹が分身の千草を引き連れて部屋から出ると、全員の目が一斉に浮竹に向いた。浮竹は気まずそうに誰とも目を合わせず、さっさと総務から出て行った。扉を閉めるときに、千草の声が聞こえた。
「さ、スッキリした事だし、仕事するわ」
「まじかよ……」
浮竹は愕然として、思わず声が出た。