親友の好きな人(京楽 浮竹)
36.新副隊長阿散井恋次
ルキアは総務に行き、司令書を貰った。
「朽木君は、もう知ってる?」
司令書を渡した千草がルキアに尋ねた。ルキアの顔が陰り、俯いて首を横に振った。
「いえ…浮竹隊長が伝えてくださると……」
「そう。私からも言っておくわ」
「…ありがとうございます」
ルキアは無理矢理笑って、千草にお礼を言うと、千草に背を向け、総務の出口に向かった。
「ルキアさん。気をつけて。無理せず応援を呼ぶのよ」
心配そうな千草の声に、ルキアは振り返って千草の顔を見た。
「はい。行ってまいります」
「行ってらっしゃい」
そして、ルキアはセイカイ門に向かって行った。総務部員達は、いつになく優しげな千草に目を見張っていた。
昼休み、千草は六番隊に向かった。
隊首室のドアをノックすると、聞き慣れない声が返ってきた。不思議に思いながらもドアを開けると、真っ赤な髪を後ろで結わえた男が、椅子に座って書類を読んでいた。男に会うのは初めてだが、千草は彼を知っていた。今日副隊長になった阿散井恋次だ。
「あ、えと……どちら様で?」
恋次は不思議そうに千草を見た。
「初めまして、阿散井副隊長。私は、総務官の横山千草よ。朽木隊長は?」
総務官と聞いて、恋次の背筋が伸び、ソファから立ち上がった。
「す、すみません!!総務官とは知らずに!!!朽木隊長は、浮竹隊長と昼め……昼ご飯に行きました!!!」
千草は、頭を下げる恋次をジッと見つめた。
この子、長い事十一番隊にいたくせに、ちゃんとしてるわ………。挨拶できるなんて……。
千草は感心して見ていたのだが、恋次は顔を強張らせ、冷や汗をかいていた。千草に睨まれていると思っているのだ。
その時、隊首室のドアが突然開いた。
「おーい恋次、副隊長就任祝いの飯行くぞー」
顔を出したのは十一番隊の斑目一角だった。その後ろには、弓親、射場、檜佐木、吉良、雛森、乱菊、七緒がいた。
皆が恋次の為に集まったのか、と、千草はその団体を見て目を丸くした。
千草の感心とは別に、一角は千草を見て飛びのいた。
「アギャーッ!!!!総務官!!!!???何でここに!!!??」
一角と弓親は、隊長格では無いが千草を知っている。千草は更木とやちるだけに会議を任せられず、一角を招集したのだ。弓親は一回勝手について来て居座ろうとし、千草の逆鱗に触れた過去がある。
一角を筆頭に、皆が千草の姿を見て緊張しているのが伝わってきた。
「阿散井副隊長、引き止めてごめんなさいね。楽しんで」
千草は恋次に向き直ると、一言告げて、団体の横をすり抜けて出て行った。
怖がられるのには、もう慣れた。
その場にいた皆が、千草の背中を見ていた。
「な、なんの話をしていたんだい?」
吉良が不思議そうに恋次に聞いた。
「いや、何か、朽木隊長探してたみたいで」
「わたしあの人苦手だわぁ。お堅いと言うか、高圧的というか……」
乱菊が髪をかき上げながら呟いた。
「あ、でも、さっきはそれ程でも無かったというか……」
雛森が千草を庇った。
「仕事外では優しい方ですよ。感情が表に出にくいだけですから」
七緒が眼鏡を上げながら言った。そんな七緒を、乱菊が不思議そうに見た。
「何、七緒。やけに親しそうな言い方じゃない」
「よく八番隊にいらっしゃいますから。京楽隊長に会いに」
「え!?京楽隊長とそういう仲なの?!」
全員が目を見開いて七緒を見た。七緒は眼鏡に手をやり、目を光らせた。
「いえ、京楽隊長とは、学院の頃からのご友人ですが、浮竹隊長とは良い仲ですよ、横山総務官は」
全員が一回固まり、それから大きな声で叫んだ。
千草は八番隊に来ていた。
白哉にルキアの事を話したかったが、浮竹に先を越された為、京楽とご飯に行こうと思っていたのだ。
隊首室を開けると、机に突っ伏している京楽がいた。
「どうしたの?」
京楽に近寄りながら千草が聞いた。京楽は顔を横に向けて、口を尖らせた。
「七緒ちゃん……最近男の子がいる呑み会とか良く行くんだよ………今も、阿散井君のお祝いに行っちゃってさあ…」
「仕方ないじゃない。七緒さんも良い歳なんだから」
千草は京楽の背中に手をやり、慰めにならない慰めをした。
「やだよー、副隊長達なんてまともな男いないじゃない」
「なら隊長ならいいの?」
「それもイヤ」
「ムチャ言わないの。ほら、ご飯行きましょう」
千草はうなだれる京楽の背中を押して、無理矢理ご飯に連れて行った。
夜は改めて3人で飲み直した。
浮竹の話では、白哉は大分ルキアを心配している様子だったらしい。
「みんな過保護なのよ」
千草は京楽を見ながら言った。
「そんな事言ったってさあ、心配なもんは心配なんだよ」
「その対象が来たようだぞ」
浮竹が障子を少しあけて言った。
京楽と千草も障子を開けて見ると、昼に千草が見たメンバーに加えて、勇音、藍染、日番谷、清音が加わり、多所帯になっていた。
彼らは厨房に近い大テーブルにつき、飲み物を注文し始めた。七緒の横は一角と雛森だった
気づいた時には、京楽が個室を飛び出し、七緒の横にいた。
「皆さんお揃いで〜。僕も阿散井君の御祝いさせてもらっていいかな〜?」
京楽は和やかな口調で、一角と七緒の横に割り込んだ。
「京楽隊長1人なんですか〜?」
乱菊が不思議そうに聞くと、京楽が個室の方を指差した。そこには、障子の隙間からこちらを見る浮竹と千草がいた。
浮竹と千草が付き合っていると聞いていた乱菊は、面白がって二人を呼んだ。
「せっかくですし、浮竹隊長と総務官も一緒にどうですかー?」
「そうだよ〜、浮竹も千草もおいでよー。皆でお祝いしよう」
浮竹も千草も躊躇していると、乱菊がズンズン近づいてきて千草の手をとった。周りは、乱菊の図太い神経に驚愕した。
「総務官と飲めるなんて、こんな機会無いですし!ね?」
年下の女に、こんなふうに誘われた事の無い千草は、対応に困り、あれよあれよとテーブルに引っ張られていき、空いている椅子に座らされた。
「じゃ、浮竹隊長は総務官の横で!」
浮竹は千草の横に座らされた。
その並びを見て、京楽は自分の浅はかさを後悔し、雛森は胃が縮んだ。
千草は、藍染と浮竹に挟まれていた。
ルキアは総務に行き、司令書を貰った。
「朽木君は、もう知ってる?」
司令書を渡した千草がルキアに尋ねた。ルキアの顔が陰り、俯いて首を横に振った。
「いえ…浮竹隊長が伝えてくださると……」
「そう。私からも言っておくわ」
「…ありがとうございます」
ルキアは無理矢理笑って、千草にお礼を言うと、千草に背を向け、総務の出口に向かった。
「ルキアさん。気をつけて。無理せず応援を呼ぶのよ」
心配そうな千草の声に、ルキアは振り返って千草の顔を見た。
「はい。行ってまいります」
「行ってらっしゃい」
そして、ルキアはセイカイ門に向かって行った。総務部員達は、いつになく優しげな千草に目を見張っていた。
昼休み、千草は六番隊に向かった。
隊首室のドアをノックすると、聞き慣れない声が返ってきた。不思議に思いながらもドアを開けると、真っ赤な髪を後ろで結わえた男が、椅子に座って書類を読んでいた。男に会うのは初めてだが、千草は彼を知っていた。今日副隊長になった阿散井恋次だ。
「あ、えと……どちら様で?」
恋次は不思議そうに千草を見た。
「初めまして、阿散井副隊長。私は、総務官の横山千草よ。朽木隊長は?」
総務官と聞いて、恋次の背筋が伸び、ソファから立ち上がった。
「す、すみません!!総務官とは知らずに!!!朽木隊長は、浮竹隊長と昼め……昼ご飯に行きました!!!」
千草は、頭を下げる恋次をジッと見つめた。
この子、長い事十一番隊にいたくせに、ちゃんとしてるわ………。挨拶できるなんて……。
千草は感心して見ていたのだが、恋次は顔を強張らせ、冷や汗をかいていた。千草に睨まれていると思っているのだ。
その時、隊首室のドアが突然開いた。
「おーい恋次、副隊長就任祝いの飯行くぞー」
顔を出したのは十一番隊の斑目一角だった。その後ろには、弓親、射場、檜佐木、吉良、雛森、乱菊、七緒がいた。
皆が恋次の為に集まったのか、と、千草はその団体を見て目を丸くした。
千草の感心とは別に、一角は千草を見て飛びのいた。
「アギャーッ!!!!総務官!!!!???何でここに!!!??」
一角と弓親は、隊長格では無いが千草を知っている。千草は更木とやちるだけに会議を任せられず、一角を招集したのだ。弓親は一回勝手について来て居座ろうとし、千草の逆鱗に触れた過去がある。
一角を筆頭に、皆が千草の姿を見て緊張しているのが伝わってきた。
「阿散井副隊長、引き止めてごめんなさいね。楽しんで」
千草は恋次に向き直ると、一言告げて、団体の横をすり抜けて出て行った。
怖がられるのには、もう慣れた。
その場にいた皆が、千草の背中を見ていた。
「な、なんの話をしていたんだい?」
吉良が不思議そうに恋次に聞いた。
「いや、何か、朽木隊長探してたみたいで」
「わたしあの人苦手だわぁ。お堅いと言うか、高圧的というか……」
乱菊が髪をかき上げながら呟いた。
「あ、でも、さっきはそれ程でも無かったというか……」
雛森が千草を庇った。
「仕事外では優しい方ですよ。感情が表に出にくいだけですから」
七緒が眼鏡を上げながら言った。そんな七緒を、乱菊が不思議そうに見た。
「何、七緒。やけに親しそうな言い方じゃない」
「よく八番隊にいらっしゃいますから。京楽隊長に会いに」
「え!?京楽隊長とそういう仲なの?!」
全員が目を見開いて七緒を見た。七緒は眼鏡に手をやり、目を光らせた。
「いえ、京楽隊長とは、学院の頃からのご友人ですが、浮竹隊長とは良い仲ですよ、横山総務官は」
全員が一回固まり、それから大きな声で叫んだ。
千草は八番隊に来ていた。
白哉にルキアの事を話したかったが、浮竹に先を越された為、京楽とご飯に行こうと思っていたのだ。
隊首室を開けると、机に突っ伏している京楽がいた。
「どうしたの?」
京楽に近寄りながら千草が聞いた。京楽は顔を横に向けて、口を尖らせた。
「七緒ちゃん……最近男の子がいる呑み会とか良く行くんだよ………今も、阿散井君のお祝いに行っちゃってさあ…」
「仕方ないじゃない。七緒さんも良い歳なんだから」
千草は京楽の背中に手をやり、慰めにならない慰めをした。
「やだよー、副隊長達なんてまともな男いないじゃない」
「なら隊長ならいいの?」
「それもイヤ」
「ムチャ言わないの。ほら、ご飯行きましょう」
千草はうなだれる京楽の背中を押して、無理矢理ご飯に連れて行った。
夜は改めて3人で飲み直した。
浮竹の話では、白哉は大分ルキアを心配している様子だったらしい。
「みんな過保護なのよ」
千草は京楽を見ながら言った。
「そんな事言ったってさあ、心配なもんは心配なんだよ」
「その対象が来たようだぞ」
浮竹が障子を少しあけて言った。
京楽と千草も障子を開けて見ると、昼に千草が見たメンバーに加えて、勇音、藍染、日番谷、清音が加わり、多所帯になっていた。
彼らは厨房に近い大テーブルにつき、飲み物を注文し始めた。七緒の横は一角と雛森だった
気づいた時には、京楽が個室を飛び出し、七緒の横にいた。
「皆さんお揃いで〜。僕も阿散井君の御祝いさせてもらっていいかな〜?」
京楽は和やかな口調で、一角と七緒の横に割り込んだ。
「京楽隊長1人なんですか〜?」
乱菊が不思議そうに聞くと、京楽が個室の方を指差した。そこには、障子の隙間からこちらを見る浮竹と千草がいた。
浮竹と千草が付き合っていると聞いていた乱菊は、面白がって二人を呼んだ。
「せっかくですし、浮竹隊長と総務官も一緒にどうですかー?」
「そうだよ〜、浮竹も千草もおいでよー。皆でお祝いしよう」
浮竹も千草も躊躇していると、乱菊がズンズン近づいてきて千草の手をとった。周りは、乱菊の図太い神経に驚愕した。
「総務官と飲めるなんて、こんな機会無いですし!ね?」
年下の女に、こんなふうに誘われた事の無い千草は、対応に困り、あれよあれよとテーブルに引っ張られていき、空いている椅子に座らされた。
「じゃ、浮竹隊長は総務官の横で!」
浮竹は千草の横に座らされた。
その並びを見て、京楽は自分の浅はかさを後悔し、雛森は胃が縮んだ。
千草は、藍染と浮竹に挟まれていた。