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親友の好きな人(京楽 浮竹)

34.母性本能
 ※浮竹さん設定の捏造です。

 海燕、千太郎、清音、ルキアはそれぞれ別々の場所を押さえて、悶絶していた。
 千草はひと目で、ルキアが緋真の妹だと分かった。目以外は全て似ていたからだ。だが、白哉のとの約束で、緋真の事は言えなかった。
 海燕は、溝落ちを押さえながら千草を見上げた。
「な、なんすか…これ……」
「デコピンよ」
「デコを、ピンして、無い………」
海燕が崩れ落ちると、浮竹が得意げに笑いながら千草の横に立った。
「ハハハッ!凄いだろ千草は!ちゃんと指を4回弾いたの見えたか?」
「浮竹君、気づいててやったでしょ………」
「えっ…………」
千草のデコピンが浮竹の顎に直撃した。
 浮竹は顎を押さえながら、ルキアを見た。
「あ、そういえば朽木は千草に会うのは初めてだな」
ルキアは右の頬を押さえている。
「は、はあ……この方は……?」
浮竹は千草の肩を抱いた。
「横山千草。俺や京楽と同期で、総務官をしているんだ」
「総務官…え?ど、同期とは、同い年という……?」
ルキアは混乱して、周りの海燕や千太郎や清音がそれを見て笑った。
 千草がルキアに手を差し出すと、ルキアがおずおずと手を出し、千草はその手を握りしめた。
「よろしくね、ルキアさん。私こんな顔で怖いだろうけど、気軽に話しかけて」
「いえ、そんな、美しいお顔です……」
ルキアは千草の顔を見つめて、照れながら言った。
「あら、ありがとう。初対面でデコピンしたのに、優しいわね」
「いや、だから、デコをピンして無いですから」
海燕が突っ込んだ。
 千草は海燕を無視して、ルキアの手を両手で包んだ。ルキアはまだ照れていた。
「ここは優しい人ばかりだから、安心していいわよ。どの隊よりも雰囲気がいいわ」
「は、はい……」
千草に褒められたのが嬉しかったのか、浮竹も海燕も千太郎も清音も騒ぎ出した。
「聞いたか?!どの隊よりも雰囲気がいいってさ!!」
「当たり前です!!浮竹隊長が率いる十三番ですからあああ!!!」
「そうですよ!!隊長がいるからです!!!」
「お前らうるせえぞ!!!でもまあ、当たり前だな!!!」
騒ぐ4人をルキアは呆然と見ていた。千草はチラリとルキアを見ると、少しずつ彼女の顔が笑顔になっていくのを見て、優しく微笑んだ。

 その日の夜、千草は浮竹の家にいた。
「全然私と違ったわ」
「そうか?千草もあんなじゃなかったか?」
二人はまた布団の中で話をしていた。
 千草は、頬杖をついている浮竹の頬を指でつついた。
「私はもっと尖ってたもの」
「そうだったっけかなあ?」
「……浮竹君には違ったかも」
「え?なんだって?もう一回言ってくれ」
「もうっ」
千草は浮竹の頬を指で強めに押した。
「イタタタタ」
「……仲間が……心から信頼しあえる仲間が、できるといいわね……」
千草は浮竹から指を離し、ポツリと呟いた。
 浮竹は頬をさすりながら、優しく笑った。
「まあ、見守っていこう、俺もお前も」
「……そうね……」

 千草はそれ以来、何かとルキアを気にした。
 ルキアと海燕が一緒に修行しているのを、遠くから眺めたりもしていた。ルキアが始界を習得した時は、十三番隊に菓子を届けたりもした。
 「何で千草、あんなルキアちゃん気に入ってんの?」
ある日、ルキアの修行を眺めてる千草を眺めながら、京楽が浮竹に聞いた。
「昔の自分と重ねてるみたいだな」
「そういうもんかねえ?あれはもっと、なんか……」
「なんだ?」
「うーん……母性本能みたいな感じじゃない?千草に母性本能がある事にびっくりだけど」
「……母性、か………」
それを聞いて、浮竹は暗い顔になった。京楽は何か感じ取り、その話題を変えて意識をそらした。
「そういえば、分家の志波君の隊首試験てどうなったの?」
「まだ準備中じゃないか?」
「志波の人達って、なあんか緩くていいよねえ」
「お前がいうか」


 その日の夜、何故かいつにも増して浮竹は激しく千草を求めた。千草は不思議に思いつつも、浮竹を受け入れた。
 事後には、二人とも息が乱れていた。
「どうしたの?何かあった?」
浮竹の胸に抱かれながら、千草が聞いた。浮竹は息を整えてから、千草の頭を撫でた。
「子をほしいと思うか?千草………」
唐突な質問に、千草は言葉を失った。
 浮竹からそんな話が出るのは初めてだった。
 何となく、浮竹がそちら系の話を避けていると感じていた千草は、話題にしないようにしていたのだ。自分の想いを隠して。
「……正直に言うと、ほしいわ。ルキアさんを見ていたら、尚更………」
「そうか。俺もだ…………だが」
これでようやく本心が聞ける、と千草は安堵して浮竹を抱きしめた。浮竹も、千草を抱きしめる腕に力を込めた。
「おそらく……俺は子どもを作れない」
何となく予想がついていた。
 千草は浮竹の胸から顔を離し、浮竹を見つめた。
「取るに足らない事よ」
浮竹は顔をしかめ、俯いた。
「………すまない、千草……」
「………ねえ、もしかして、結婚の話に触れなかったのもそれが原因?」
「………籍を入れれば、親族からの跡取りの話題から逃れられない。俺に原因があろうと、千草に迷惑がかかるのは目に見えている………。それに、俺は未だに親族の支援をしているから、金銭面でも、苦労をかける……」
俯く浮竹をよそに、千草は上半身を起こして、浮竹に口付けをした。
「……千草……?」
千草はまっすぐ浮竹を見つめた。
「いいわ。今回は私が振られてあげる。でも忘れないで。私は子どもが作れないからってあなたから離れて行かないし、うるさい親族だって黙らせる自信がある。それに、あなた一人くらい私が養うから、あなたの給料は好きにしていい」
あまりにもカッコイイ千草に、浮竹は言葉を失った。
「……お、漢らしい………」

 次の日、雨乾堂を訪れた京楽に、結婚しない事と千草の返答を伝えると、全く同じ反応が返ってきた。
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